Jim Morrison & The Doors - An American Prayer
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1971年7月3日、アメリカの産んだ偉大なるカリスマ、そしてトカゲの王がフランスで謎の死を遂げる。60年代から走りまくってきた奔放さから離れて自身が追い求めていた詩人としての道を貫くために人生を変えようとしていた矢先だった。ジャニスもジミヘンもジム・モリソンもブライアンも皆ドラッグで逝った。歴史的には美化されているがやはりその才能を考えるともったいないものだと思う。ま、それでこそロックなんだろう。だから一般人ではなかった、ってことだ。そのジム・モリソンは圧倒的に他のロックシンガーとは異なり「詩人」だった。言葉にこだわった人で、生前からステージでもスタジオでも詩の朗読を行っていて、朗読集みたいなものを創りたがっていた人だったと知ったのはドアーズを知ってかなりしてからだと思う。もちろん聞いて衝撃を受ける作品がいっぱいあったからだけど、その中で「An American Prayer」というアルバムがある。これがまた面白いのでここで紹介。
1978年リリースなので死後7年の作品だ。ジム・モリソンの死後ドアーズは三人でAOR的な音を出したアルバムを2枚リリースしていたが泣かず飛ばずに終わり解散状態だった。ジム・モリソンが残したテープを整理しているウチに未発表の詩の朗読がいくつも発見されたことから、ジム・モリソンがやりたがっていた詩の朗読のバックに音楽を付けると言う作業をバンドはやってみることにした。当然ながらバンドはジム・モリソンの呼吸やメロディセンスを知っていたことで、その作業に着手してみるとまるでドアーズの再生のように作品が仕上がっていったと言う。
冒頭の「Awake」は恒例の「Wake up!」の雄叫びから始まるイントロダクションだが、以降ジム・モリソンの低い声ではっきりと呟く詩の朗読に見事にバックのメンバーが爽やかなサウンドで音を付けている。一聴しただけではまさか後から音楽を被せているようには絶対に聞こえないし、一緒にアドリブでやっているのだろうとしか思えないシーンもいくつもある。それこそがバンドという呼吸感の凄さだろう。「Newborn Awakening」という曲では軽やかにジム・モリソンが詩の朗読と共にメロディを口ずさむが、それにも見事にバックが合わせてあって事情を知っていると驚くようなことばかり。それだけ作品として良く出来ているということだ。
「Roadhouse Blues」は当時未発表のライブ音源からと言われていて、今は出てるのかどうか知らないけど、多分60年代のライブじゃないかな。やっぱり生々しいライブはかっこ良いね。ここが多分このアルバムのピークで、モノ哀しいシーンへと突入する。アルバム全体に起伏を付けて流しているのも彼等の音楽的センスなのかなぁ。ロビー・クリーガーのギターの音も切なくてよろしいんです。そして自分的にこのアルバムの中で一番美しいと思うのが「A Feast of Friends」のバックのメロディ。ジム・モリソンの朗読の暗さを引き立たせるかのようなメロディ。クラシックのパクリだけど、この部分が凄く好きだな。最後のジム・モリソンのアカペラの歌メロに繋げて奏でられる「Bird of Prey」も凄く良いね。
そんなことで最初はどうやって詩の朗読に合わせてここまで作れたんだろうと不思議に聴いていたけれど、そのうちこの作品の良さにハマり始める。そういう意味でかなり変わり種の作品であることには違いないけど、ひとつの挑戦とジム・モリソンへの敬意じゃないかな、と。この後「地獄の黙示録」でカリスマ度合いに拍車がかかり伝説のバンドへと昇華されていく事を思うとこの作品のリリースは良かったハズ。
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