Linda Hoyle - Pieces of Me

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 ブルースを歌う女性、結構色々いるようで、今でもアメリカではシェリル・クロウあたりが挙げられるようで、その前ではボニー・レイットとか…、まぁ、あまり聴かないのもあるけれど、割とたくさんいるんだな、と。英国ではどうかと言うとなかなかこれが少ないようで、そりゃまぁ、ブルースではなくてトラッドの方が気質に合っているからってのもあるんじゃないかと思うけどね。有名なのはもちろんマギー・ベルのあのシャウトだね。いつ聴いても彼女の歌声は凄いパワーとソウルフルだと思うし。ところが意外なところで結構渋い作品を作っていた有名なバンドの女性ボーカルがいます。

Pieces of Me Affinity

 リンダ・ホイルが1971年にリリースした「Pieces of Me」。元アフィニティの歌姫という肩書きがある方がわかりやすいだろうけど、多分Affinity知ってる人はこのソロアルバムも同時に知ることになるような気がする(笑)。そして作風はAffinityとは全く異なるので要注意。リンダ・ホイルの趣味が思い切り出ているというのがもちろんソロアルバムで、バンドの意向を重視したのがAffinityの作品でしょ、多分。だからこのソロアルバム「Pieces of Me」はホントに多様な音楽が詰め込まれていて楽しめる。

 何と言っても最初の「Backlash Blues」からビビるんだ、これが。ギターにクリス・スペディングを迎えて、アコースティックながらも、もの凄いブルースギターから始まって、思い切りヘヴィーなブルースを歌うリンダ・ホイル、ここでまずはぶっ飛びますわ、これ。こんなに歌唱力あったんだ?みたいな感じで泥臭く、もしかしたらマギー・ベルよりも泥臭く歌っているという有様。こんな調子でアルバムは続くのかと思ったら全然異なるクリスマスの聖歌みたいな楽曲「Paper Tulip」が始まり綺麗な歌声を聴かせてくれる。そういえばバックメンバーはほぼニュークリアスという面々なので雰囲気作るのはお手の物。なんてったって今やアディエマスを展開しているカール・ジェンキンスとジョン・マーシャルがやってるんだから。そして三曲目の「Black Crow」はジョー・ストラマーがソロになってから展開しているような民族的なリズムをバックに楽しげに歌っているもので、これもレベル高い。いやぁ、いいな。続いての「For My Darling」も聖歌のような雰囲気で声楽の要領で荘厳に歌い上げている、正に天使の美声と呼ばれるかのような曲で、美しい。そしてタイトル曲「Peaces of Me」はやっぱり本性丸出しなのか、思い切り英国ヘヴィロックと言わんばかりのねっちいサウンドでニュークリアスでは少々物足りないという感じのバックだけど、そこはクリス・スペディングがヘヴィーに絡みついて頑張っているので、一曲目のブルースを発展させてロックにしたらこんなに重くなりましたというような、かっちょいいロック。

 う~ん、ジャケットも素朴な写真なんだけど昔は右上に燦然と輝くヴァーティゴマークが眩しかった作品。ほとんどアナログを見かけたことなかったからねぇ。古くはBackgroundというレーベルからCDが発売されたんだけどこれはアナログ落としの海賊盤みたいなもので、しばらくしたら国内盤でCDがリリースされて、今では普通に手に入るんじゃない?紙ジャケのもあるしさ。女性歌モノとしてもかなりレベルの高い作品なので聴いてみると美味しいと思います。

 さてローラ・ニーロのカバー曲「Lonely Woman」…、もうね、ビリー・ホリディとかそういう世界って感じに歌っていて彼女の歌の巧さを実感します。雰囲気も出してるし、オリジナルも損ねていないし、実に素晴らしい。続いての「Hymn to Valerie Solanas」はカール・ジェンキンスの不思議な音色のピアノから不気味に始まるもののミドルテンポでソウルフルに歌うスタンダードなロック調な曲。基本こういう声なんだろう。B面に入ってからは割と大人しい曲が占めているようで、次の「The Ballad of Marty Mole」も正に英国的な雰囲気で歌ってくれている、感動的なバラードチックな歌。マーティ・モールって誰なのかまでは調べてないっ。んでもって続く「Journey's End」も静かめの一曲だけど今度はアメリカに想いを馳せたようなカントリー風味な一曲でスライドギターも入ってくるというものだけど、やっぱりどう聴いても英国だよ、これは(笑)。そういう湿っぽさが漂ってくるのはカール・ジェンキンスのセンスかな。その影響は「Morning for One」も同じで、荘厳さが漂う中、天使のような歌声のハイトーンで紡ぎ出すように歌うリンダ・ホイルが美しい。そして最後には少々お茶目なお遊び曲「Barrel House Music」が可愛い。ボードヴィルなサウンドを狙ってか場末のピアノをバックにキャバレーで歌っているかのような曲でキライじゃないね、こういうの。多分当時の何かのカバー曲でしょ。

 アメリカに憧れた女の子のソロ作品なんだけど揃えた面子が思い切り英国ロックの人間だったおかげで気持ちはわかるけど英国ロックの名盤という域で素晴らしさを残したという作品。Affinityの冠を外して一人の素晴らしい女性ボーカリストとして聴くと楽しめるんじゃないかな。かなりの名盤だよ。今度初めてCD化されるMartha Veletzみたいなもんかな。

 何とも驚くことに2006年にジョージ・キャッスルというピアニストと二人でやっている姿がYouTubeにあったので見てみてください。全く変わらないでジャズボーカルを歌っている声と姿を堪能できますっ!いやぁ、凄い時代だ…。

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フレ
Posted byフレ

Comments 6

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evergreen  
驚きました!

よくこんなYOUTUBE探せましたね!
ちょっと遠めでわかりにくいけど、この声はまさしくリンダさんですね!いい雰囲気です!ピアノがまたいいですねー!

2008/06/12 (Thu) 15:07 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>エヴァ姉さん

ね。驚いたモン。うわっぁ~ホンモノ、歌ってる、動いてる、ってなモンでっせ、これは(笑)。

2008/06/14 (Sat) 00:13 | EDIT | REPLY |   
knyacki  
これは凄いね

わーい、リンダだ。
もっと大写しでみたい。フルステージで見たい。
音源欲しさにAffinityの完全版も買い、限定おまけ
のイーライのシングルCDも入手しました。
リンダの後釜のビビアンもなかなかいいよ。

2008/06/15 (Sun) 22:42 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>knyackiさん

ども♪
いやぁ~、この歌う姿をDVDにしても売れないだろうからやっぱAffinityの時の勇姿が見たいっすねぇ~。

2008/06/17 (Tue) 08:16 | EDIT | REPLY |   
アーリーバード  
フレさま

先日実家に寄ったとき押入れの奥のダンボールにLPが
数枚あるのを見つけました。その内の1枚が本盤でした。
イギリス盤だったと思い込んでましたがフォノグラムの
国内盤でした。

いずれにせよ震災で失くしたものとばかり思っていたの
で嬉しい発見でした。盤もジャケットも充分綺麗な状態
で27年間眠ってくれてました。

持ち帰ってディスクユニオン紙ジャケCDと並べましたが
視覚的インパクトが違いすぎて圧倒されました。オーラ
すら感じる程で改めてビニール盤の凄みを感じました。
もうプレーヤーを買う気はないのでフライングタイガー
のLP用の額に入れて飾っておこうと思います。
PS:今回も過去ログ投稿お許しください。

2022/02/25 (Fri) 18:03 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>アーリーバードさん

国内盤とは凄い!見るだけでも満足度高いと思います♪

2022/02/26 (Sat) 21:39 | EDIT | REPLY |   

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