King Crimson - The Nightwatch

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 あ~、何でもいいからすべてを破壊してしまいたいっ!っていう風に思うときがあって、正にそんな状態なんだけど、そんな話をとある声優志望の女の子と話していたら彼女は「あぁ、この人混みを焼き払っておしまいっ!」などと発言するものだから面白い。常識から逸脱した思考回路を持つ人間は好きだ。固定概念から解き放たれて自身の思うままの思考を持つことは人格形成には重要だろうし、まぁ、間違うと怖いことになるんで一般的には常識論もありつつ思考をハズしていく方が人間的にはよろしい。どっちかに偏っては面白くないし、向こう側の世界に行かれても困る。そんな破壊的な気分の時に聴ける音ってのもベクトルが異なるもので、パンクノイズ的なものでも良いんだろうけど、やっぱり恐ろしく破壊的という意味ではやはり強烈なインパクトを持つキング・クリムゾン。

ナイトウォッチ(紙ジャケット仕様) 暗黒の世界

 1997年にリリースされたCDで、1973年11月のアムステルダムでのライブをパッケージしたタイトル「ナイトウォッチ」。このライブ盤を出したあたりからロバート・フリップ卿はキング・クリムゾンの残っている音源全てをリリースする気になったようで、怒濤の如くCDがリリースされているのは承知の上か。このライブにしても古くから水面下で流通していたもので、とにかく迫力満点のライブという話題は振りまかれていたのだがこうして全貌を現した音なのだった。

 メンバーはもちろん史上最強のカルテット、ジェイミー・ミューアが脱退してしまった後なのが残念なのだが、それでも恐ろしいまでの破壊美と迫力で、ロックというカテゴリーに属するプログレッシヴバンドならばやはりこの強烈さは持っていてほしいもん。初っ端の「Easy Money」からしてジョン・ウェットンのベースと歌がガンガンに迫ってくるし、もちろんフリップ卿の繊細なギターが右チャンネルからチロチロと流れてくるし、あぁ、そうか何だこの強烈なパーカションは、というくらいにドラムをパーカッションに変えてしまっているブラッフォード。その面々からするとインパクトには欠けるがしっかりとバンドの一端を担っているデヴィッド・クロスという四人のメンバーによる演奏、即ち同時には四つの楽器の音しかしないはずなのだが、一体この迫力は何なんだ?もちろん静寂による緊張感も同時に存在しているのだが…。

 ライブ。インプロビゼーション主体のサウンドを信条とするテクニカル且つ完成が磨かれたミュージシャンによる即興音楽は演奏する側も聴いている側も楽しめるものだろう。それが単なるコード進行によるアドリブプレイではなく、テーマが決まった中で瞬間瞬間の呼吸によって展開が変わっていくという、完全フリーフォームではないという手法はもちろんジャズにはあるものだが、キング・クリムゾンのそれは、より複雑な要素を持ち得ているかもしれない。何と言ってもその代表格が10分強に渡る「Fracture」に集約されているとは言い過ぎか。ん~、でも多分アルバム「暗黒の世界」に収録された同曲はこの演奏を基としているので、ある種の達成感を捉えた瞬間だったと思うんだよね。ジョン・ウェットンの一瞬のベースソロがスゲェかっこよくって、ハッとする。まぁ、その前のバイオリンが繊細になっているトコロへフリップ卿のハードなエッジの立ったギターがリズムを刻むシーンも素晴らしいのだが…。

ザ・グレート・ディシーヴァー パート1(紙ジャケット仕様) ザ・グレート・ディシーヴァー パート2(紙ジャケット仕様)
1973年から1974年のライブを2枚組2セットに分割して再度リリース!

 美しいメロディラインを持つ歌中心の曲もしっかりと持っているところが彼等の強いトコロで、それがまた良いんだ。緊張感溢れる演奏世界だけではなく聴く者に優しさを与えてくれる部分、そういうメランコリックな部分がなかなか真似できないところではある。ま、でも圧倒的に今は破壊力を欲しているので次なる展開を今か今かと待ちかまえて聴いているんだが(笑)。そうそう、このライブ、というかこの頃のキング・クリムゾンのライブってのはもう既に「太陽と戦慄」以降の作品しか演奏されていなくて、唯一残っているのが「21バカ」という…。この面子での「21バカ」もこれまた凄いのでいつのライブを聴いても楽しみなんだけど、ここで聴けるライブではわかるように、最初から重さが違う。あの中間のキメフレーズにしても、いとも簡単にやってのけてしまっていて、全然難しくない曲のように聞こえるから、如何にそれまでのインプロ中心の楽曲が緊張感溢れていたかわかる。だって曲が読めるんだもん、これ(笑)。だからこそ最後の曲ではあるんだろうけどさ。

 ん~、「ナイトウォッチ」聴きながら書いているとちょっとあちこちに行き過ぎてしまって、もうね「The Talking Drum」とかやっぱりとんでもなく破壊力を持った「太陽と戦慄 Part.2」とか凄まじくてさ、こんなライブ目の前で見てたら絶対失神してるぜっていうくらいの迫力だからやっぱりぶっ飛ぶ。いわゆるスタジオ盤は時間もあったから相当聴いたけど、それらに比べればこのライブ盤「ナイトウォッチ」は全然回数聴いていないに等しいくらいのもんだからさ、久々に聴いてやっぱり凄さを体感。思い切り破壊的気分を味わいました、はい。



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フレ
Posted byフレ

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