Mike Oldfield - Tubular Bells

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 カンタベリー人脈の中でも少々意外な、というかケビン・エアーズやバージンレコード絡みで語られる有名なアーティストにマイク・オールドフィールドがいる。少年時代から早熟な音楽少年で、姉のサリー・オールドフィールドとのサリアンジーってバンドを組んでいたり、先のケビン・エアーズのバックでベースを弾いていたりしたというのもあり、割と知られる存在だったようだが、そのひねくれ者(?)の少年は人と演奏するよりも自分一人で作業を進める方が良いモノができると信じていたようで、実際に一人で全ての楽器をこなし録音を行ったアルバムが「Tubular Bells」なのだった。1973年リリースということらしいが、そのいきさつも結構面白くって、一人で録音したデモテープを各レコード会社に送りつけたらしいんだけど、誰も相手にしてくれなくて(そりゃ一曲20分なんてのはなぁ…いくらプログレ全盛時代と言えども無理だろうよ)、当時新興レーベルを立ち上げるかどうかってタイミングだったバージンレコードがベンチャー精神に乗っ取って契約し、バージンにとっても最初のレコード発表アーティストとなったワケだ。

 アルバム「Tubular Bells」は2000回とも3000回とも言えるオーバーダビングが繰り返されて、マイク一人で創り上げたようだが、そのバックボーンには1975年に素晴らしいソロアルバムを発表する元Jade Warrior(元ジュライ)のトム・ニューマンの助力もあったらしい。

 で、アルバムの内容なんだけど、正直、寝る。いや、ホント。聴くぞと云う意志を明確に持たない、あるいは音楽的な部分には興味がなくっていわゆるロックだぜ~って感じのリスナーには退屈きわまりない音楽だと思う。自分もそうだったし。ところが、だ、ちょっとその気になって聴くとイントロの繰り返されるリフレインから徐々に変化していくサウンドと紡ぎ上げられる楽器の音色の美しさにひたすら惚れ込んでしまう。タイトルの「Tubular Bells」の響き渡る音色に聞き惚れてしまってからもまだまだ余韻をたっぷりと楽しみながらいつの間にかこのミニマルミュージックは終わりを迎える…、そう、聴いていると実に時の流れが速い、というよりもあっという間に時間が経ってしまう、そんな美しさと繊細さを秘めた心洗われる優しい作品。そして一人でこれほどの楽器を19歳にして演奏してしまう技術も素晴らしい。ところどころで聴かれるフレージングや音使い、浮遊感とアバンギャルド、ポップと変拍子など実にカンタベリーサウンドから多くを学んでいるとも言えるか。

 映画「エクソシスト」のテーマとしてこの作品の冒頭のイントロが使われた事で、このアルバムをかける=恐怖という印象を持つ人も多くってね、もったいない。ちゃんと聴いてみればそれがどんなに牧歌的に展開して、聴いてるだけで幸せな気分になれるかって分かるんだけどね。ま、そのおかげでバージンカンパニーは今じゃ立派な大企業、このアルバムのヒットがなければあり得なかったかもしれないんだから、この独断行為は否定できないだろう(マイクは映画音楽になることを知らなかったらしい)。

 ともあれ、歌は一切入っていないインストの環境音楽的に聴ける作品なのでプログレとかどうのとか言う次元ではなく美しさを聴いてみると幸せに浸れます。絶対にブリティッシュでなければ出てこない音楽。

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フレ
Posted byフレ

Comments 6

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evergreen  
チューブラーベルズのコメントはいつもこれです。

その1・・・ジャケットがまじでこわい!よく見てください。私、怖くて、凝視できません。チューブラーシリーズ全部怖い、というか、この人のジャケが全部、気味が悪い!
その2・・・この人のギターは、猫の嬌声みたいで、調子悪い時聞くと最悪!
でもな~、ハンサムですごい色気でギター弾くし、独特、やっぱりいいな~。けなしたつもりが、やれやれ。

2006/01/15 (Sun) 23:51 | EDIT | REPLY |   
いたち野郎  

最近evergreenさんの言う「ジャケの怖さ」が分かってきた気がします…。
さてさて、カンタベリーというと、どうもジャズ系のインプロとかのイメージですが、この完璧に作り上げられたアルバムも立派にカンタベリーの流れを組んでますよね。「ブリティッシュでなければ出てこない音楽」に同意です!UK的な浮遊感がたまりませんよ。

2006/01/16 (Mon) 04:23 | EDIT | REPLY |   
Cottonwoodhill  

私の友人にマイク・オールドフィールドが大好きな人間がおりまして、「Tubular Bells」を見ると何枚でも買ってしまう人間がおります。このデビュー作、今までどの位再発されたんでしょうか。

2006/01/16 (Mon) 22:09 | EDIT | REPLY |   
フレ@ロック好きの行き着く先は?…  
お返事遅れましたっ!

>えばねえさん
ん?んん??んんん???そうか…。確かに怖くなってきたかも。冷静に見ると気持ち良い海と空になんでこんな金属のパイプがリアルに浮かんでいるのだ?アンバランスさが不気味ではあるなぁ。でもなぁ、そういう意味で言ってるんじゃないんだろうなぁ(笑)。このアルバムのギターは猫の嬌声っての良い表現ですね。お琴みたいな音してるもんね。で、ハンサム、、、か?

>いたち野郎さん
ブリティッシュ然とした作品って好きなんです、はい。だからevergreenさんや夜響さんみたいな多国籍対応がなかなかできないんですけどねぇ…。キリない世界だしなぁ。

>Cottonwoodhillさん
へぇ、、、でもわかります。ザ・フーの「四重人格」のジャケが好きでレコード屋行って見かける度に買いたくなりましたから。おかげで各国盤+CD何種類かあったりするので困りものです。そういうのみんなあるんじゃないかなぁ…。Cottonwoodhillさんトコも紙ジャケに騙されて何枚も同じCDありそうですが…。

2006/01/18 (Wed) 23:29 | EDIT | REPLY |   
akakad  

聖剣伝説3のリメイクのサントラを聴いてて思ったのが作曲担当の菊田裕樹さんがすごくマイク・オールドフィールドに影響を受けていたんだなと思うことです
これにキース・エマーソンのキャッチーさ足して1~4分くらいに収めたものに時々リック・ウェイクマンやフォルクローレ等民族音楽を加えたような内容になってます
そのうえほぼ全部生演奏のプログレインスト集といっても過言ではなく大満足でした

2020/06/29 (Mon) 20:27 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>akakadさん

ゲーム音楽系作れる人は現代音楽系に影響受けて作る人多そうですね。
基本的に音楽家でしょうからやはりそういう鍵盤者の影響は大きいでしょうし。

2020/07/04 (Sat) 11:43 | EDIT | REPLY |   

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