Howlin' Wolf - London Sessions

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 ブルースって暑い時も寒い時も気分が凹んでいる時も明るい時もいつでもどこでも楽しめる音楽だと思う。長く聴いていると飽きるんだけど、飾り気のないジャンルだからそういう部分では素のままで楽しめるんだろう。昔若い時にブルースってのは黒人オヤジの音楽だからさぞかしハードルが高いもんだと思って一生懸命聴いていて、ブルースってのは大人の音楽なんだ、って思って聴いてた。だから多分高校生くらいの頃からブルースは聴いていて、もちろんギター弾くにもそういうの知らないとダメだろうし、ってのがあったのも大きいけど、何よりも自分が好きになったギタリストの皆が皆ブルースって言うんだからそりゃ聴くだろ。んなことは多分英国でも同じ感覚があって、クラプトンにしてもペイジにしてもベックにしてもコソフにしてもみな10代の頃にブルースにハマってるワケだ。だからブルースってのは若者の音楽なんだよね、結局。若いウチに聴いておくべき音楽なのかもしれないし、その筋の人間達にとってみればアイドルよりも何よりもブルースを聴いているという反抗心もあるけど、実際身になるのもブルース。だからやってるのは黒人オヤジなんだけど聴いているのは若者ギタリスト。だから若者のサウンドなんです。ただ凄いのはブルースっていつでも戻ってくる故郷のようなもので、そういう深さがあるから面白い。大人になった今でもやっぱり楽しくハマって、そして楽しく、時には哀しく聴いていられるものなんです。

ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ+15<デラックス・エディション> Howlin' Wolf/Moanin' in the Moonlight

 前置きが長くなったのはやっぱり気分が凹んでいるせいかな(笑)。んなことで、ブルースメン側からしたらあまり大したアルバムじゃないんだけどロック側の人間からしたらとんでもなく刺激的なアルバムをリリースしたハウリン・ウルフの1970年の作品「ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ」。ハウリン・ウルフ自身も初めての海外レコーディングを行った作品で、当時英国ではアメリカの黒人ブルースメン好きな若者がどんどんとロックのフィールドに出てきていた頃なので大元の黒人ブルースメン達も再度脚光を浴び始めた頃。こんなチャンスを逃してなるものかとばかりに色々なブルースメンが奮起するんだけど、その一角でもあるな。

 故にカバー曲が多く、英国のブルース好きの若者がセッションに挑み、その真摯な姿勢で目の前のオトコから吸収するという貴重な体験なのだが、音を聴いているとやっぱりまだまだ英国の若者ミュージシャン達では甘いのかなぁと。いや、普通に聴けばそりゃ凄いし、それなりに雰囲気も出しているし、もちろんハウリン・ウルフ御大自らが自身のアルバムとしてリリースしているワケだからお墨付きと言えばその通りなんだけど、単なる一リスナーとして聴くとね、やっぱりまだまだ深くないんだよね、バックの音が。この辺が白人ブルースと黒人ブルースの違いなんだけど、それが見事に出てしまっているかも。クラプトンのギターはさすがにもうモロで凄いなぁ~と。シャープに弾いているし、枯れたトーンで的確に弾いているので言うことないんだけど、何かが足りない…。ウィンウッドの鍵盤なんかもアメリカのアル・クーパーあたりとはやっぱり違うワケで、ブルースらしさっていうのが出しにくい楽器というのもあるけど、なんかね、ちょっと。コーラスとかはいいのかもしれないけど、やっぱホンモノ前にすると大分違うもんだ。そしてストーンズのリズム隊である二人は、あまりにもストーンズ的に軽く流しているというか引っ掛からないんだよ、音が。やっぱ本場のリズム隊のアグレッシブなセッションとはちょっと違うのかなぁ。

 昔はもう名前だけで喜んでやっぱりすげぇ~とか思っていたけど、冷静に聴ける今となってはそんな感じに聴けてしまって…。決して出来映えは悪くないししっかりと熱いプレイをしているしハウリン・ウルフの歌もギターもさすが~ってモンなので全然素晴らしいアルバムなんだけどなんでだろうね。その辺行くとマディ・ウォーターズとバターフィールドやブルームフィールドがセッションしたアルバム「Fathers and Sons」はホンモノの雰囲気漂ってるからなぁ…。英国とアメリカの違いなんだろう、きっと。

 それでも今ではその時のセッションの模様からいくつもの曲をボーナストラックとして収録したデラックスエディション「ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ+15<デラックス・エディション>」がリリースされているので全貌を紐解くのは面白いかもね。まだ手に入れてないけどね。


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フレ
Posted byフレ

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