Caravan - For Girls Who Grow Plump In The Night

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 ようやくブルースから抜け出てきて、凄くブリティッシュなギターの入ったロックが聴きたくなったので、がらりと変わってキャラバンを引っ張り出す。プログレの中でも更に一ジャンルを築き上げているカンタベリー派の代表バンドで、これはイギリスでしかあり得ないっていう旋律や雰囲気が好きで結構よく聴く。一般的な作品としての評価では「グレイとピンクの地」が最高傑作として挙げられることが多くって、もちろんアルバムとしてのトータル性や音楽面でもすごく統一感があるっつうか、一気に聴けてしまうくらい完成された音楽なんだけど、個人的によく聴くのはギタリスト的聴覚も手伝うためか、その後の「夜ごとに太る女のために」っつう何とも人を食ったタイトルの付けられたアルバム。これがねぇ、凄いギターアルバムなんだって。いや、凄いソロがあるとか弾きまくってるってワケじゃないんだけど、でも全編に渡って軽いながらも歪んだギターのリフが曲を引っ張っているし、それに乗っかるメロディーやサウンドそのものは実に軽快で、一見どう聴いても単なるポップスにしか聞こえないくらい美しいんだな。

 まぁ、紐解くとそれまでのキャラバンってリチャード・シンクレアが主導権を握っていて、だからこそプログレッシブな音楽だったんだけど、彼が脱退して、他にもメンバーが変わっての新生キャラバンの一作目っていうアルバム。で、その音楽的主導権を握ったのがギターのパイ・ヘイスティングだったのでこんなギターアルバムが作られたワケ。個人的には大正解のメンバーチェンジなんだけど、コアなファンにはどう映ったんでしょう?プログレの人って似たようなバンドをアチコチと移動するってのがよくあることみたいに感じているので、ある意味ジャズと同じでリーダーが誰かによって作風が変わる、みたいな部分あるって思ってる。特にカンタベリー系の場合はそれが顕著な気がしていて、90年代にはキャラバンとキャメルが合体したミラージュってバンドがあったり、ソフトマシーンだって二枚と同じメンバーでアルバム出したことないし、その辺行くとハットフィールドからナショナル・ヘルスギルガメッシュとかソフトヒープ…、果てはディス・ヒートまで行くワケで、ワイルド・フラワーズから始まったカンタベリーの長い長い道は実に楽しく深い森です。ここを制するとブリティッシュロックが凄く面白くなるのは間違いない。

 んで、話を戻すと、このキャラバン5枚目のアルバムではA面トップを飾る「Memory Lain, Hugh / Headloss」の軽快なギターリフから始まるサウンドが実に心地良い。ライブでも定番曲になっていたはずだし…。続く「Hoedown」もカッティングを交えた軽快なリフが中心のポップな楽曲だし、「Suprise Suprise」はもう永遠の名曲だよね。この軽快さは一体何がそうしているんだろう?素晴らしい。そういえば一昨年くらいからこの辺の伝説のプログレ連中がこぞって来日公演を果たしていて、マニアを泣かせていたようだ。キャラバンは見たいなと思ってたけど、残念ながら行けなかった。う~ん、しかも最近のライブのDVDまで出してる。まぁ、テクニックが落ちてるワケじゃないので、いつのライブを見てもいいんだろうけど、やっぱり70年代に夢を描くものだ。そしてこのアルバムのB面(アナログ時代の言い方か…)の組曲、「L'auberge Du Sanglier」が圧巻の出来映えで一気に聞き込める素晴らしさ。途中ソフトマシーンからの流用と思われるフレーズも使われていて、この辺もカンタベリー音楽の面白いところ。

 このメンツで奏でられたライブ音源がアナログ時代にはなぜか「The Best Of Caravan」としてリリースされていて、実はキャラバンのメンバーも知らなかったようなので見事な海賊盤?なのかな。んで、それを知ったメンバーがその出来の良さに感動してかどうか知らないけどめでたくCDで「Live at the Fairfield Halls, 1974」としてリリースされた。これがまた良い!

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フレ
Posted byフレ

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evergreen  
どれ聞いても・・・

どれ聞いても、おんなじに聞こえちゃったりしますが、どうゆうわけかものすごく我が家にはキャラヴァンのCDが多く、実はホークウインドも多くて、きっと色々研究しようと思ってはいるんですが・・・?ただ、CD屋でかかると一発でわかりますね。キャラヴァンとホークウインドは音は全然違うけど、方向性は似てるかも?

2006/01/12 (Thu) 00:40 | EDIT | REPLY |   
フレ@ロック好きの行き着く先は?  
>evergreenさん

確かに同じに聞こえちゃったりしますが、どれも軽快で心地良いんでしょうねぇ、だからCDが多いとか!?ホークウィンドはウチ、少ないっす(笑)。

2006/01/13 (Fri) 22:13 | EDIT | REPLY |   
千里  

TBありがとうございました。
「夜ごとに太る女のために」、聞こうと思っていたのですが、リチャード・シンクレアが脱退してしまっているのですね。うーん、微妙ですが、
>軽いながらも歪んだギターのリフが曲を引っ張っている
やっぱり聞いてみたいなぁ。

ところでお願いがあるのですが、私のBlogからこちらにBook Markをはらせていただいてもよろしいでしょうか?ご了承いただけると嬉しいです。

2006/01/23 (Mon) 08:39 | EDIT | REPLY |   
sy_rock1009  

こんばんは!
トラックバックありがとうございます。
二人のシンクレアが大好きで、一時は初期キャラヴァンを良く聴いてましたが、それらの時期以外も好きですねー。

2006/05/05 (Fri) 00:33 | EDIT | REPLY |   
sand  

まいどです。教えていただいたので、喜んで読みました。コメント残しておきますね。

私はセカンドアルバム「キャラヴァン登場」と「ウォータールー・リリー」ですね。好きなのは。って事はリチャード・シンクレア時代です。後者はデイブも脱退してるけどリチャードが踏ん張って良いです。ベースがうなってんます。
「太る女」ももちろん傑作ですが、ちょっと甘口かな(^O^)ギターアルバムではありますね。

ディス・ヒートもギルガメッシュも好きですよ。この辺りやる時はお付き合いいたしましょう。イタリアはArti & Mestieriの「Tilt」でしたら大好き。もう出たかな。

2006/05/22 (Mon) 18:10 | EDIT | REPLY |   
andy  
フィル・ミラー

Hatfield やMatching Mole などに在籍したフィル・ミラーのバンド In Cahoots が来日するようです。

2006/09/14 (Thu) 19:54 | EDIT | REPLY |   

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  • 2006.03.14 (Tue) 01:29 | プログ特区 - Into The Source
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  • 2006.05.05 (Fri) 00:34 | ROCK ANTHOLOGY BLOG