Van Der Graaf - Vital


「バイタル」。1978年リリースの強烈なライブアルバム。同年1月16日ロンドンのマーキークラブでの収録と言うから、如何に狭いハコでこの偉大なるバンドがライブをやって録音したか、そしてとんでもなくヘヴィーで迫力のあるライブをしたか、そして時代はパンク真っ盛りの中、場所もマーキーとあればパンクとのせめぎ合いも当然あっただろうが、全くヒケを取らない、いや、それ以上に破壊的なパフォーマンスを魅せたヴァン・ダー・グラフのライブ。静かなる詩人ピーター・ハミルの属するバンド、だ。
マジメにこれ、聴くと最初からぶっ飛ぶ。ヴァン・ダー・グラフを知っているかどうかではなく、普通に聴いてぶっ飛ぶと思う。初っ端から何と破壊的な曲なのかと驚くし、その破壊性はもちろんピーター・ハミルのボーカルに負うところが大きいんだけど、ギターのヘヴィーさも、そしてなんと言ってもベースの破壊力、バキバキ、ブイブイの音で全てをぶち壊すように攻め立ててくる素晴らしく破壊的な構築美。そして1975年の名曲として知られている「スティル・ライフ」の全く異なるアレンジによるプレイ。ここではオルガンなどには全く頼らず、ひたすら破壊的に、そして叙情的に、そして繊細に楽曲を再構築してリスナーを撃沈させる、そんなプレイを楽しめる、というか、衝撃を与える、か。ほんとに同じ曲かよと思うくらいのプレイはもうぐうの音も出ない程。以降もヴァイオリンの繊細さを聴かせながら素晴らしい緊張感を打ち出していながら、相変わらず攻撃的なベースによるリードからピーター・ハミルのパンクそこのけの歌声が世界を覆う、これがあの美しいプログレッシヴロックの組曲を編み出してきたバンドのライブの音なのか?ザ・フーのピート・タウンジェンドのスタジオとライブの変貌など可愛いもので、このバンドの化け方は音を聴いてみないとわからないだろう。
ちなみに「バイタル」に収録されている楽曲の大部分は当時未発表曲で、何曲かはピーター・ハミルのソロ作で後にリリースされているが、この時点では当然ヴァン・ダー・グラフの作品として検討されていたものだと言われる。このままパンク時代にリリースしていたら若いファンが付いたのかもしれないが…。そもそもアルバムリリースの資金集めのライブだったとも言われていて、それなのに昔の楽曲のライブ盤という選択ではなくこれほど斬新なライブを届けてくれるのは逆説的にパンク時代に合わせたものかもしれない。
「バイタル」を聴かないでヴァン・ダー・グラフは語れないだろう、と思う。これぞバンドの真髄で、繊細さ叙情性から破壊性と攻撃性、それらは全てキング・クリムゾンに劣るモノではない。うわぁ~~これ凄いわぁ~!
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