レッド・ツェッペリンに対抗できるもう一つのバンドとしてはザ・フーを於いて他にはないでしょ。スタジオワークに於ける完璧さの追求はジミー・ペイジもピート・タウンジェンドも似たような側面を持っているし、一変してライブに於ける破天荒さというかアドリブプレイによるバンドらしさ、バンドサウンドの熱さやオフステージでのワイルドバカ騒ぎ加減でも両バンドともとんでもない伝説を幾つも提供しているという共通項が多いが、ザ・フーの日本に於ける唯一の失策は全盛期に来日公演を行わなかったということだろう。これにより日本での伝道師の数が圧倒的に少なくなり、なかなか本来の意味での人気が獲得できていないし評価もツェッペインほどではない。テン・イヤーズ・アフターやロリー・ギャラガー、ユーライア・ヒープやフリー、ジェスロ・タルなどどれも全盛期に日本公演を行ったが故に今でもしっかりとそれなりにステータスを保ち、人気が高いというものだ。ま、終わったことだし日本での評価なんてピートは気にしてもいなかったからしょうがないんだけどね。それでも必ずアルバム評論になると顔を出すのがこの「Live At Leeds」。
アナログ時代では海賊盤に対抗して、というか海賊盤を真似て見開きジャケットにスタンプ押し、更には12種類のおまけ付きでリリースされたのが最初で、実は青スタンプ盤はオレンジスタンプ盤、黒スタンプ盤などプレス回数やリリース国によって微妙に異なっていたりするコレクター泣かせの一枚でもあるんだけど、CD初期までを含めて当然ながら全6曲の収録という驚異のライブ盤だった。1970年当時のザ・フーのイメージなんてたかだか3分間ポップスから毛の生えたものをやっているバンドで、まだまだ「Tommy」に於ける業績なんてのもそんなに滅茶苦茶評価されてたワケでもないだろうし、もっとも評価されていたとしてもこれほどまでのライブバンドとは誰も想像しなかったはず。ところがこのアルバムでは3分間ポップスの片鱗を残していたのは「Substitute」だけで、初っ端の「Young Man Blues」からいきなり超ワイルドなハードロックアドリブバンドサウンドが爆音で鳴り響くワケさ。「Summertime Blues」なんてエディ・コクランを知っていたとしてもそんなの全くわかんないくらいかっこいいロックフレーズに変わっているし、「Shakin' All Over」だってZep真っ青のアドリブバンドプレイで、クリームを超えているのは間違いない。でもって、知っているはずの「My Generation」「Magic Bus」って曲は完全にライブでは変貌している曲なので目から鱗が落ちる状態で、何コレ?って感じ。凄いんだ、これが。これこそザ・フーのライブだよ。
…って25年間リリースされ続けたこのアルバムも一連のデジタルリミックスリマスターによる再発時に一発目としてリリースされたワケなんだが、そしたら何と当日のライブから「Tommy」以外の曲をほぼ全て収録した「25周年記念盤」ってのが出てきて、更に目を丸くして聴くことになった。お~、マジかよっ!ってくらい衝撃的なこのライブ盤の拡張版はアナログ時代に聴いていた驚きを更に倍増させるだけのパワーを備えていて、ザ・フーというバンドの真髄を表現してた。初っ端からベーシストの歌う「Heaven And Hell」ってどういうことよ?普通そんなの考えないよなぁ~ってトコがザ・フーなのだ。もうね、驚いて聴きまくったね。
1970年当時のシーンの状況を見るとやっぱり飛び抜けた存在だったことは想像に難くないし、もっともっと語られるべきバンドだし、「Live At Leeds」については一家に一枚…どころか3枚(笑)はあってもいいんだろうなぁなんて思います。同じ時期のライブを収録した「ワイト島ライブ」ってのも映像もあってオススメなんだけど、内容的にはやっぱり「Live At Leeds」かなぁ。