King Crimson - Lark's Tongues In Aspic

10 Comments
 1973年、英国ロックの重鎮になりつつあった、かどうかは定かでないがキング・クリムゾンにしても大きく変化を遂げる年になった。その前までのクリムゾンはもちろん強烈な楽曲を発表することでシーンにインパクトを放っていたが、この年にリリースされた「太陽と戦慄」というアルバムの持つ破壊力はそのイメージを一掃し、攻撃的な姿勢を持つバンドとして市場に認識させたものだ。

太陽と戦慄(紙ジャケット仕様) 暗黒の世界(紙ジャケット仕様)

 最初にこれ聴いた時は驚いた~。静寂の中に聞こえる音から爆発するみたいにガツーンって音が鳴ってきたりして、正にプログレだな~って思って聴いたけど、それよりも雰囲気が凄くかっこよかった。ジェイミー・ミューアの奏でるパーカッションの静かなイントロからアルバムはスタートするんだけど、その序章が終わりを迎えた時、唸るような、というかこれから絶対に何かが起きるぞっていうようなバイオリンの静かなる序章、そしてこれ以上ないってくらいに歪んだギターがフェイドインで入ってくると言う…、いやぁ、一言で言えば「怖い」音楽。強烈だよな、この破壊力は。リフに入ってからはもう攻撃性が凄くて、それでも静と動がしっかりと使い分けられていて間をバイオリンが取り持つ、みたいな感じかな。フリップ卿のギターワークは当然ながら、やっぱりブラッフォードのドラムとウェットンのベースプレイが何とも凄い状況を創り出していて、正に傑作、名盤。ミューアのパーカッションも所々で狂気とばかりに聴けることでこのアルバムの「怖さ」に大きく貢献している。13分にも渡る強烈な殺人的楽曲の後はもちろん心優しいメロディを聴かせてくれるのがクリムゾンの常套手段。そしてこの「Book of Saturday」ってのがこれまた綺麗な曲でねぇ…。メランコリックというか、これもクリムゾンらしいっつうか、ウェットンもこういう曲で本領発揮しているっつうのが多彩な人だよね。そしてもう一丁静かなバイオリンのイントロから奏でられるメランコリックな楽曲「Exiles」。ブラッフォードのドラムがらしくないんだが、その分曲にマッチしていて心洗われる気分になる心地良さ。コレも凄いなぁ…。

 ここでA面終了なんだが、とにかく一曲目のインパクトが強烈すぎて、その余韻を他の二曲が補ってなだめてくれるみたいな構図かね(笑)。ジャケットはシンプルに太陽と月が重なったもので、宗教的な香りがするけど、まぁ、クリムゾンっつうのは錬金術師という印象もあるし、大体がフリップ卿の思想だからこういうのもありかな~って。良いジャケットだと思う。

 B面はブラッフォード叩きまくりの「Easy Money」からだね。ここのスタジオ盤はまだまだ大人しいもので、これはもうライブで本領発揮してしまう曲だな。終盤を聴いていればわかるけどどうにでも変化していく曲だからクリムゾンの真髄をじっくりと楽しめるナンバー。歌詞の皮肉さも面白くて良い(笑)。そして実験的な「The Talking Drum」。正にインプロビゼーションをイメージしたこの曲はクリムゾンのこれからを予見したものかもしれない。淡々とというかスリリングに奏でるウェットンの強烈なグルーブによるベースラインに対してメロディアスに絡んでくるクロスのバイオリン、そして疾走感溢れるドラミングで曲を引っ張るブラッフォードのリズム、そこへフリップ卿が思い切り噛ませてくれるという構図はもうクリムゾンの縮図そのもの。普通に聴いていたら全然面白いとは思えない曲なんだが、そこがクリムゾンの凄いところ。どうも聞き耳を立ててしまうんだよね。もちろん歌ないんだけどさ(笑)。さて、最後はアルバムの冒頭と同じく、そのパート2なのでやっぱり攻撃的なリフが変拍子で奏でられ、ひたすらと攻めまくられる。ある種ミニマル効果もあってだんだんと洗脳されてくる。このノイズの心地良さというか、どんどんと自分がこの音圧に押しつぶされていくような感覚。

 いやぁ、これもまた久々に聴いたんだけどやっぱ凄いなぁ…。どの曲も引き込まれていく魅力たっぷりだし、聴き直したりしてしまう曲もいくつもあって、また新たな聴き方もできたな。うん、この迫力と期待感はなかなか他では楽しめないしやっぱ強烈っ!

関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 10

There are no comments yet.
evergreen  
いや~この音盤・・・

これはクリムゾンの決意のある音盤で・・・しかもこれ1枚が番外みたいに光っている・・・
それはジェイミー・ミューアさんのせいかもしれないけど・・・
実はクリムゾンの中では一番光っているけど
私的には一番聴かない音盤かな?何か違和感があってね・・・
いや~確か、papiniさんは一番好きだっけな・・・REDだっけな~

2007/08/13 (Mon) 22:24 | EDIT | REPLY |   
ぷくちゃん  
これは近頃わかるように

この音盤、聴くのが苦痛でした。「レッド」は素直に聞けたのですが・・・なんだったのでしょうか?

でも近頃「ぱー」と聞けるようになっていいなあ、と感じるようになった次第。

タイトル曲のパート2のギターリフは格好いいの一言。

2007/08/13 (Mon) 22:59 | EDIT | REPLY |   
おいみず~  
ジェイミー・ミューア光ってますね

ジェイミー・ミューア光ってますね。
というか、彼の狂気が、クリムゾン全体を奮い立たせているみたい。
このアルバム、そしてその後のクリムゾンの存続に無くてはならないパワーだった、ように思いますね。

本当は、横に小さくたたずんでいる「暗黒の世界」が好きです。

2007/08/14 (Tue) 09:56 | EDIT | REPLY |   
べえし  
はじめまして。

今日は僕のチンケな記事にわざわざトラックバックしていただき、恐縮しております。半年ほどブログをやっていて、まともなトラックバックはおそらくこれで二度目・・・
カンドーです。
感動ついでにワタクシも一言コメントをば・・・

僕はクリムゾンの中ではこれを一番聴いたと思います。
HRともHMとも違う、なんと言うか乾燥した音の手触りが独特で、好きでした。それはやっぱりジェイミー・ミューアのパーカッションが大部分の理由ですかね。
彼がもう少しクリムゾンに残っていたらどうなってたんだろう、と考えると少々残念です。

2007/08/14 (Tue) 18:58 | EDIT | REPLY |   
オダ  

宮殿から受けた衝撃も大きかったですが、このアルバムも超弩級の衝撃を受けましたね。
強烈な破壊力にやられたというか。
このアルバム、音の持つ破壊力に耳がいきやすいですが、静と動の使い方も上手いと思います。
強烈な1曲目も静かなイントロから始まって、曲の途中にも静の部分もあるし。
アルバムの構成としても、動の印象が強い1曲目の後に静というかメラコリックな曲をもってくるし。
そのせいか、このアルバム聴いてもあんまり疲れる事がないですね。
自分にとっては、風邪ひいて体がだるい時も聴いて大丈夫って音楽です。

2007/08/15 (Wed) 09:05 | EDIT | REPLY |   
kazz12000  

このアルバムからR.Frippの考えるKing Crimsonが始まり今現在のKing Crimsonに
繋がっているのではないかと思います。もちろんこれ以前のものからの連続性もある
のですが、やはりここで一旦大胆にリセットされたからこそ、1stでなされた
言葉を伴って語られる音楽性から音のみにて語りえる音楽性への転換・進化が
なされたのではないかと思っております。
大好きなアルバムであります!

2007/08/15 (Wed) 22:24 | EDIT | REPLY |   
フレ  
多数コメント・トラバ感謝!

>エヴァ姉さん
番外なんだろうけど一番クリムゾンらしいのかもなぁ、と。ミューアさんのインパクトって目立たないけど凄かったんだろうね。beatclubの映像見ると完全に狂人にしか見えないけど(笑)。これ、凄く聴くもん。

>ぷくちゃん
「Red」よくってこれはダメなんだ…へぇ、大差ないような気がするが…といい加減なこと言ってはいけないが(笑)。多分硬すぎるんだと思う、これ。人間臭さがないもんね。

>おいずみ~さん
やっぱミューアさんのパワーがクリムゾンの中に狂気を挟んだってとこで同感です。「暗黒の世界」もそのうち書きます…、初っ端から良いんですよねぇ、これも…。

>べえしさん
いえいえ、クリムゾンで探したら出てきたので…、はい。HMよりももっとヘヴィーな音、ですかねぇ、これ。この後もミューアさんいたらどう転んだでしょう…、多分崩壊、かなぁ…。

>オダさん
そう、破壊力っす。正に。静と動があるんだけどでもやっぱ破壊的。風邪ひいてるときには聴きたいとは思わない音ではあります、自分的には(笑)。いやぁ、そういう表現って面白いなぁと思って。うん。

>kazz12000さん
クリムゾンって音楽的に一貫性なかったですもんね、結局は。それでもクリムゾンっつうのはフリップ卿の強い意思でしょうけど。ここからの三枚はどれも強烈で好きですね~。

2007/08/17 (Fri) 20:03 | EDIT | REPLY |   
ちい  
はじめまして

TBから来ました。ありがとうございました。
私も60~70年代のロックが好きです!
とは言っておきながら、まだまだ気の向くままに勉強中です。
King Crimsonは音の奥深さというかその世界全体が芸術的に思えて最近よく聴いています。
これからもたっぷり聴いてもっと解るようになりたいです。
今後とも機会がありましたら宜しくお願いします。

2007/08/20 (Mon) 09:54 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>ちいさん

どもども。その辺のロックは大好きですので、あれこれ書いてます。どしどし見に来て下さいな。クリムゾンはハマると面白いっすよ~。

2007/08/22 (Wed) 20:22 | EDIT | REPLY |   
茶  

LARK'S TONGUES PART 2 は、すけべです(笑)。
エアロの RATS IN THE CELLAR などはじつに本能的なすけべですが、フリップさんは、生物学、解剖学的にすけべメカニズムを研究して、ハアハアっぷりを音楽に化けさせました(笑笑)。

2011/07/05 (Tue) 14:58 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply

Trackbacks 11

Click to send a trackback(FC2 User)
この記事へのトラックバック
  •  A Young Person's Guide to King Crimson (Vol.3)
  • Larks' Tongues in Aspic(1973)しばしの活動休止の後に発表されたのがこの「太陽と戦慄」。オリジナルタイトルは「蛇に飲み込まれようとしているヒバリの舌」(あるいは、「ヒバリの舌のゼリーよせ」?)。なんとも不思議なタイトルではありますが、その同じタイトルでパート4(
  • 2007.08.14 (Tue) 10:00 | 老水亭
この記事へのトラックバック
  •  「太陽と戦慄」キング・クリムゾン
  • 熱は下がってますが、引き続き風邪の時に聴きたい音楽です。1972年のキング・クリムゾンのアルバム。1. 太陽と戦慄パート12. 土曜日の本3. 放浪者4. イージー・マネー5. トーキング・ドラム6. 太
  • 2007.08.14 (Tue) 12:20 | 徒然ネット
この記事へのトラックバック
  •  「プログレ名盤を斬る!?#4 - 太陽と戦慄 / King Crimson」
  • Progressive Cafeが送る読者参加型企画 「プログレ名盤を斬る!?」世間一般で名盤といわれている作品、ちまたの批評にはどれも美辞麗句が並べ立てられています。でも音楽は嗜好品、人それぞれ嗜好は異なりますから当然感じ方も違うはずです。「プログレ名盤を斬る!?」は
  • 2007.08.14 (Tue) 14:52 | Progressive Cafe
この記事へのトラックバック
  •  おんなキング・クリムゾン
  • ところで キング・クリムゾンの画像をあれこれ見ていて発見した こちら↓の動画。
  • 2007.08.14 (Tue) 18:59 | ゆみ子はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?!?
この記事へのトラックバック
  •  キング・クリムゾンの「太陽と戦慄」を聴いてみた
  •  このアルバム、高校生の頃、1回だけ聴いた記憶があるけど、中身の記憶は全くなかった。 当時、プログレは大好きだったけど、初期のキング・クリムゾンのイメージ(←具体的に言うと、「クリムゾン・キングの宮殿」のイ
  • 2007.08.14 (Tue) 22:54 | 土佐のオヤジの音楽昔話 ~ あの頃の曲を聴いてみた ~
この記事へのトラックバック
  •  フリップ卿の美学
  • 今日はお休み。だけど、朝一番に会社へ。健康診断だってよ。不健康街道まっしぐらのアタシは、いっつも、適当にすませて帰ってくる(コラコラんで。飯食って、さて、今日は何にしようかな(ネタ)と思ってCDの棚を見渡して(そんなにでかくない)、クリムゾンの順番(アタシ
  • 2007.08.15 (Wed) 08:54 | Trapo de la eternidad
この記事へのトラックバック
この記事へのトラックバック
  •  人気急上昇!? King Crimson「Larks' Tongues in Aspic」
  • 太陽と戦慄(紙ジャケット仕様)キング・クリムゾンHMVのページにて、「ロック」ジャンルの売り上げの上位を見ていたら、な~んと驚き!19位と41位にキング・クリムゾン「太陽と戦慄」がランク・イン!http://info.hmv.co.jp/p/c/s/c1g200.html再発は少し前に終わって
  • 2007.09.16 (Sun) 22:46 | 4番、サード、いたち野郎。
この記事へのトラックバック
  •  Lark's Tongues in Aspic/KING CRIMSON (キング・クリムゾン)
  • Lark's Tongues in Aspic: 30th Anniversary (Rmst)KING CRIMSONLarks Tongues in Aspic [FROM UK][IMPORT][ジャケットの写真をクリックするとリンク先のAmazonで試聴できます。] Bill Bruford(Dr.ビル・ブラ
  • 2007.09.17 (Mon) 09:29 | OOH LA LA - my favorite songs [an annexe]
この記事へのトラックバック
  •  キングクリムゾン『Larks' Tongues in Aspic』
  • 「予想通り」という言葉があります。ロックの世界にも、もちろん「予想通り」な作品っていうのがあって、それは雑誌の解説やネットでの評判などを事前に読んでいて初めて成立する「予想通り」ではあるんですが、予想が的中してしまった場合、どんなに素晴らしい作品であって
  • 2007.10.24 (Wed) 15:22 | ROCK野郎のロックなブログ
この記事へのトラックバック
  •  今更ながらAir Videoというアプリが凄い
  • 今更、ホントに今更なんですが。 iPhoneのアプリで、Air Videoというアプリがあるんですね。 これがね、クオリティ高いんですよ。 ま、簡単に言...
  • 2010.06.09 (Wed) 06:44 | 日常此音楽也