Jimi Hendrix - Electric Lady Land


天才ジミ・ヘンドリックス、1968年リリースの世紀の傑作「エレクトリック・レディランド」。当時レコードでは二枚組でリリースされたもので、イギリス盤や日本盤では19人の女の裸を描いた強烈なインパクトを放ったアルバムジャケットで、既に敷居が高かった作品なのだが、音を聴いてもかなり敷居が高かった記憶があるアルバム。ファーストやセカンドを聴いていて、また幾つかのライブ映像を見ていた後に入手して聴いたものだから、余計にそのジミヘンの音楽性という崇高な思想とライブのワイルド感とのギャップが埋まらずにいつまでもこの「エレクトリック・レディランド」というアルバムを攻略できないでいたのだ。
いくつもの作品を聴いて、またジミヘンの思想も理解しながら何度となく「エレクトリック・レディランド」に挑戦していたし、そりゃ常人よりはよく聴いているだろうし、曲もフレーズも知っている…が、どうにもこぞってCDを手にとって何度も聴くというアルバムにはならなかったのだな。これは今でもだけど、やっぱり初期かライブ盤に走っちゃう。アーティスティックな作品として位置付けて捉えればそりゃもう素晴らしい傑作だよ、と思うが、どうにもそういう聴き方にならないのが問題だ。で、再度そういう視点で聴き直す…。やっぱ凄い。。で、16分にも及ぶスペイシーなブルース「Voodoo Chile」で好みは分かれるだろう。ちょっとスタジオ盤にしては冗長感がある。その後の「Little Miss Strange」は、ノエル・レディングでしょ、これ?まぁ、いいんじゃない。一聴すると随分かっこよく聞こえるリフから始まる「Long Hot Summer Night」はワイルド感に欠けた歌モノみたいになってしまってイマイチで、どこかポップス的になってる。
「Come On」は昔ながらのジミ節で良いけどバンドが元気無い感じする。多分ミックスの問題もあるのだろう。「Gypsy Eyes」、こいつは新たなるジミヘンの世界を打ち出した傑作だと思う。この後のジプシーズにも持ち込まれるファンク性を打ち出しているし、勢いもある。ただ曲はちょっと単純、と言うか発展途上的か。そして「真夜中のランプ」、これはもう素晴らしい作品で、やっぱり天才ジミヘン~って感じるし、こういう叙情性と斬新さがジミに求めることなのかな、と。エフェクトも含めてこのアルバム最高作の一、二を争う出来映えでは?
「Rainy Day, Dream Away」も新たな境地を開いた作品で、ジャジーなサウンドの中に繊細なストラトサウンドでソロをぶち込み、心地良いシャッフルビートに仕上げた実験的でかなり成功している曲。ジミのギターとオルガン、サックスとの対比が面白い。ジミがマイルスあたりとセッションするなんていうのも実現していたら面白かっただろうなぁと思える。以降「1983」からはプログレッシブな展開を見せるがスタジオ職人ジミヘンという一面を見せられるものでスペイシーさというキーワードは相変わらずだが、叙情性が伴ってきているのが新境地か。この流れは「Moon...」「Still Raining...」まで続けられて「House Burning Down」のイントロまで引っ張られている。「House Burning Down」自体は「Gypsy Eyes」と共にファンキーさを打ち出してきた作品で、特別に面白いものでもないけど、ジミヘンらしい作風だなぁという感じで、好きだね。そしてジミが奏でるディランの作品「All Along Watch Tower」。まぁ、曲が良くできているのでジミ風解釈がどうなのかってとこだろうけど、やっぱ良いよなぁ…。多分ギターの音色の切なさというかフレーズの切なさが曲をよく表しているからだと思う。んでもって、オーラスにはもう有名な「Voodoo Chile (Slight Return)」で、言うことなし。ワウワウペダルをここまで強調された曲はこれ以外に知らない。もちろんギタープレイについては言うことなしの教科書的作品で、ジミヘンらしいライブ感覚の生き生きとした感性が詰め込まれていて言うことなし。
ん~、ってことはやっぱ1/3くらいは好みで1/3は実験音楽的要素が強いので好き嫌いではなく試みをどう聴くか、ってとこで、残りは覇気に欠けるとか単調とか言う理由であまり好みではないらしい。そうか、だからあまり聴こうという意欲がなかったんだ。二枚組クラスになるとどうしてもそういう偏りが出てきてしまって難しいところ。
が、まぁ、ジミヘンの「エレクトリック・レディランド」という歴史的傑作について自分の感想や意見を述べたってタカが知れてるのも事実なので勝手に書いてるけど、そういう評論があってもいいでしょ、事実そう感じたし。ジミヘンは好きだしね、やっぱ凄い。が、どうしても攻略しきれなかった「Electric Lady Land」は今のところそんな感じ。
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