Orianthi - Rock Candy (2022)
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10代の頃からシーンで騒がれて数々の名ギタリストとセッション活動をしながらアルバム制作やライブも重ねていき、女性ギターヒロインの圧倒的な代表格にものし上がったオリアンティは、その極めつけとしてマイケル・ジャクソンのツアーギタリストの座をも射止めて映画「This Is It」でその堂々としたギタープレイを見せてくれた。ここでその地位と人気とテクニックは不動のものとしてシーンに根付いたハズだったが、その前後でボン・ジョヴィのリッチー・サンボラと恋仲になってしまった関係からなのか、一気にシーンから消え去ってしまい、あの人は何処へ?状態となり、その才能を世間に見せることなく、最も輝いたであろう20代を過ごしてしまったようだ。リスナー側からしても実に残念で、もっともっと様々なギタリストやミュージシャンとセッションしている姿を見たかったと思うし、何でも吸収できる20代であれば尚更の事、リッチー・サンボラと一緒だった事で出てきた成果はブルースへの回帰だけなので、それも今更もったいないとも感じるし、どうにも残念な十年くらいだったが、ここ数年でようやくながらギターとロックとシーンへ復帰を決めてきてくれて、いくつかの作品をリリースしてくれているからありがたい。不満はあれどもこうして見れると、やはりすごい才能だとまざまざと実感するばかり。
2022年にリリースされたオリジナルアルバム「Rock Candy」となるが、同時に「Live From Hollywood」もリリースされているので、これまでの遅れを取り返さんと言わんばかりに出しているのだろうか。理由はどうあれ存分に楽しめるアイテムがいくつか増えるのは楽しみが増えるからよろしい。そして「Rock Candy」は今の時代に即したかのように11曲30分強しかないコンパクトな作品だが、それでも聴いてみるとホントにみっちりと詰め込まれた良質な楽曲がこれでもかとばかりに収められているから、これ以上長くてもしょうがないとも思えるくらい。今回はこれまでの少々暗さを持ったオリアンティのロックさ加減から突き抜けた勢い溢れるロック魂がそのまま出ているから、端的にカッコ良くて痺れる楽曲ばかり。やや例えは悪いが、クリッシー・ハインドのとんがり具合が結構近い感覚のロックセンスとも言えるだろうか。オリアンティのオリジナルアルバムの面白いところは、決してギタリストの作品として作っているアルバムにはならず、普通に楽曲とリフ、そして歌がメインにあって、ギターソロが必要であればそれなりの長さで入ってくる、当たり前と言えば当たり前のアルバム作りに徹しているあたり。聴く側も恐らくオリアンティというアーティストとして聴く人もいれば、ギタリストオリアンティを楽しみにしている人もいるだろうが、ギタリスト部分は別のところで楽しんでくれ的なニュアンスの方が強そうだ。つまり本作も目一杯ロックしたアルバム作りになってて、ギターソロを存分に聞かせるアルバムではない、と言う事だ。
それはつまりアーティストとして様々なロックテイストの作品が散りばめラていて、新たなチャレンジにも取り組んでいる姿と言えて、大きくは古き良きロックを取り込みながら割と壮大なる目線で作り上げてて一級品のセンスを見せているが、リズムにしてもアレンジにしても効果音や聞かせ方にしても、近代的なアプローチが存分になされている。このへんはプロデューサーの力量が大きそうだが、そういう音色に仕上げてもオリアンティの楽曲やプレイが埋もれないで、更に飛び抜けてくるような作りになるのは元来持っているセンスとアーティスティックなセンスとも言える。案外知られていないが、彼女のアルバムはどれもこれも時代を斬った名盤に仕上がっている。だからもっともっと聴きたいし見たかったのだが、これくらいのペースだからこそなのかもしれない。本作にしても数回は存分に聴いて、そのバリエーションの豊かさに改めて気づいたし、ギタープレイにしても前作で聞かれたブルースセンスを完全にモノにしてからのアプローチが聴けるから、さすがの天才と唸らされる。なんだかんだと言っても、やっぱりずば抜けてカッコ良いロックスターのセンスがあるオリアンティは良い。
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