King Crimson - Lizard (1970):
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キング・クリムゾンの「Lizard」は1970年暮れに発表された3枚目のアルバムにして既にセッションバンドになっていた作品で、早50年以上の歳月が経過しているが一向に風化する気配すらないこの辺りのプログレバンドの作品。中でもキング・クリムゾンが一番商売熱心=ユーザー泣かせなバンドでオリジナル盤からリマスター×数回、そして30周年、40周年記念盤のリリース、その間にもリマスター盤があったり、もう何バージョン出ているのかよく知らないし、どれが何が良いのか、アーティスト意向も含めてまるで分からない状態で、きっと最新版が良いけど、もう買うのは止めた。既に違いを楽しむ別の世界に行っているリスナーには大変楽しい世界だろうけど、今更そこに行く気もないので普通に昔買ったCDかレコードで聴いてます。
それにしても「Lizard」はキング・クリムゾンのアルバムの中でホントに目立たないと言うか、強烈な楽曲がないが故に大人しい作品として語られており、キング・クリムゾンがあるとするならばロバート・フリップとピート・シンフィールドだけが残っている状態でのアルバム作成で他のメンバーは皆寄せ集めとなる。そこまで殺人的な評価を下さなくても良いじゃないかと思いたくなるゴードン・ハスケルのベースと歌、メル・コリンズにアンディ・マッカロックの布陣にキース・ティペット・グループの面々で、昔から思ってたけど、ロバート・フリップはギタリストという面が強いが、メロトロンも結構弾いてて、なるほどやはりキング・クリムゾンの音の中心で、バンドである必要性はなかったかも。しかしながらまだまだジャズほどそういうリーダーセッションが普及していないから、どうしてもバンド単位で物事を捉えているリスナーにはこのメンバー遍歴はうんざりしていたが、出てくる音は毎回刺激的でそれこそがキング・クリムゾンで、ならばそういう形態が一番良いのだろうと何となく納得もするが、だから毎回刺激的。
「Lizard」はその中でも大人しい感じが多いようで、今聴いてもそう思うが、ただ優しい雰囲気に仕上がっている。B面で話題になるジョン・アンダーソンのボーカル曲もプログレ的ポップスで実に見事な軽さだし、続く組曲も緊張感はなく牧歌的で平野に光が差してくるような代物だ。長い曲でも全然苦痛でなくてふわっとした雰囲気でA面も同じく尖がってるシーンが少ないから聴きやすい。ただ、流して聴くと何も残らない気もするが、じっくり聴くと様々な楽器の音が細かく入ってきていることに気付くし、それぞれが薄氷のようにキラキラとしていて美しい。ゴードン・ハスケルの歌声も割と好きなので美しいと思うし、そこにかなり好きなアンディ・マッカロックの軽やかなドラムが入るから結構好きで、フリップの強迫観念的なところが出ていないから良いのか、だから異質感ありなのとメロトロンにハマってた時期で一人オーケストラ出来るからハマるのは分かる。
「Lizard」はホントこの瞬間にしか出て来なかったアルバムとメンバーの奇跡で、どのアルバムからしても異質な雰囲気を醸し出してて面白いと捉える方が賢明ながらも、もう50年も経っているから今更評価も何もなく、皆に聴かれているからどっちでも良いけど、これだけ歪んだギターの入ってない作品も珍しいし、何はともあれキング・クリムゾンだからやはり聴き倒しておきたい一枚。

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