Steve Marriott - Marriott (1976):
0 Comments

英国は不思議だ。時代時代でなんとなく常に黒人並みの歌声を持つボーカリストが出てくる、しかもそれは紛れもなく本物だったりして黒い声を持つ白人として、またはソウルフルな歌声をもつ歌手として評されるが、大抵はあまり売れることなく渋いマニア向けの世界で留まるケースが多い。ジョス・ストーンくらいになるとちょっとメジャー感もあるが、それだって一般人にはあまり知られていないから、やっぱりソウルフルな歌声だけじゃなかなか大成出来ないし、歌声、曲、時代性が見事に融合して初めてスターが成り立つが、ロックの世界はそんなのは大して関係なく、聴いた人がどれだけ痺れるかが指標で、売れてりゃその分知られる確率が高いだけで、そうじゃなくても知る人は知るだろう。
ハンブル・パイを解散させた後の1976年に速攻で自身のソロプロジェクトを進めたスティーブ・マリオットが、ワガママ言えるほどレコード会社からは売れ筋な人と見られてはおらず、自身で作り上げた音源では物足りないと宣告されてアメリカへ渡ってセッションを繰り広げてらしくない音を作り上げる。それもまた本人は新しい刺激だったかもしれないが、ちょっと不要だったかと思える人選と楽曲アレンジでレコード会社は英国サイドと米国サイドと分けて一枚のアルバム「Marriott」としてリリースとなった。当時から何十年もスティーブ・マリオットの力の入ったソロアルバムとして評価されていたが、時代が流れ発掘音源もリリースされていくと当時スティーブ・マリオットが作り上げていたアルバムのフル音源も出て来て、「Marriott」で聴かれる英国サイドの拡張盤を聴くと、このままで良かったのでは、と思う。売れたかどうかは疑問だがアルバムの質としてはなかなかな気がする。
能書きから入ってしまったが、そのスティーブ・マリオットのファーストソロアルバム「Marriott」はジャケットがかっこ良くて、アメリカンな香りがするのがちょいキズだが、あのままの迫力が聴けるのか、と期待させるものだった。レコードに針を落として出てくる音と歌声は紛れも無くスティーブ・マリオットの、あのハンブル・パイの音そのもので安心した記憶があるし、更に言えばハンブル・パイよりも幅の広くなった音を出している感じすらあり、楽曲の良さはともかく、歌声とギタープレイの濃さは堪らないものがある。英国サイドから聞くからこの渋みがどんどんと染み渡ってくるが、米国サイドに入るとちょいとやりすぎか、となって元来の持ち味の粘っこい歌の伸びが生かせてない気がするが、聴いてると分かるもので、確かにカラッとした感じが多いし、それでもスティーブ・マリオットだからもちろん聴かせてくれる。
もっとフロントに出て来ても良かった人だけど、残念ながらイマイチなポジションに甘んじてしまったか、本人はそうでもなかったかもしれないけど、もっときちんとした形での音源やセッションを残してほしかった。やはりバンドが恋しかった人かもしれない。

- 関連記事
-
- Peter Frampton - Frampton (1975):
- Steve Marriott - Marriott (1976):
- Small Faces - From the Beginning (1967):