Comus - First Utterance (1970):
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シド・バレットの奏でていた狂気は普通のサウンドと紙一重の部分が大きく、だからこそ故にそれはホンモノの狂気だったとも云えるが、英国にはサウンドで狂気を表現できるバンドがいくつか存在していて、今では恐らくシーンに出てこないと思う。1970年前後ならロック界は何でもありの世界だったが故に、まず売れないバンドも平気で世に出てきたが、更にそれが今は幻のアルバム、コアなマニア向けで有名になり、少なくとも面白く興味深いサウンドを自由奔放に奏でていた。そういう土壌を創ったのもピンク・フロイド=シド・バレットかもしれない。
1970年前後、レコード会社各社はこぞってカネになるロックバンドを買い漁ったが、大手のレコード会社では自身のレーベルで実験的なバンドをリリースするには控えめな面もあり、傘下の独自レーベルから実験的なアルバムをリリースする手法が増えた。そのため英国マニアはどのレーベルがどの会社の傘下かまで把握しないとアーティスト間の交流が理解しにくく、重要なキーワードになるが、そんな話はマニアだけなので先に進むが、キンクスで有名なパイが持ったレーベルがDawnで、そんなに有名なバンドは在籍してないけど、一癖も二癖もあるバンドがいくつか揃っていてその筋には重宝するレーベル。中でも異彩を放っていたコーマス。アコースティックな狂気を前面に打ち出したファーストアルバム「First Utterance」を聴くと一発でジャケットからして気持ち悪いものの超絶名作。
美しいアコギが中心だけど、狂気が宿っているバイオリンやフルートの音色、最初の「Diana」から英国以外にあり得ない妙な女性ボーカルが絡み合う、ある意味ポップでスラップハッピー的な部分もあるが、二曲目「The Herald」では12分以上も続く美しき組曲的サウンドでプログレ的室内楽でそこまでヒステリックではなくキレイで、3曲目「Drip Drip」では始めのギターの音色から結構なテクニックが見えるけどヘン。ちなみにこのバンドは歌詞が相当ヘンなので英語の得意な方は訳すと狂気の世界が分かるし、ある意味ピーター・ハミル的で11分くらいの真骨頂サウンド。
久々に聴いたけど面白いなと感じるし、ヒステリックな面と美しい音色が同居して、しかも楽器は全てナマ系だからそのアンサンブルが絶妙で、もっと狂ったような作品の印象だったけど面白い。調子に乗ってセカンドアルバムを聴くと、ファーストのような何でもアリ的なスパイスは薄まってて、普通な感じなのはヴァイオリンがないのとドラムが前に出てるからか。それでも普通のバンドからしたらかなりユニークな作品。

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