Morris On - Ashley Hutchings etc (1972):
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ちょっと堅い話かもしれないけど、英国伝承音楽の歴史を紐解くと深いところに行き着いて、アシュリー・ハッチングスに行き当たる。英国では伝統的にダンス音楽が継承されていたが、口頭による伝承音楽のため文化の形が残っておらず半ば消えかかっていたが、それをセシル・シャープが1899年に発掘、再発見して以来きちんとした形、例えば譜面で残しておくべきと落ち着いたが、それを更にロックバンドが演奏してメジャーな音楽に仕立て上げた人がアシュレー・ハッチングス。実践したのは1972年、はたまた英国フォーク仲間を多数集めて制作された「Morris On」で、参加メンバーは恒例リチャード・トンプソン、デイヴ・マタックス、ジョン・カークパトリックなどに加え、ハッチングスの奥方シャーリー・コリンズとこれまた多数で英国伝承ダンス音楽を再演した。古楽器が中心になり、コーラスワークも素晴らしく、曲の骨格はトラッドフォークとは異なるのでその延長で聴くとちょっと不思議ではあるけど、フィドルやアコーディオンがノリの良い演出を施して、元来ジグサウンドの好きな自分は問題なし。そんなウワサを聴いて最初にこのアルバムを聴いた時はいきなりのフィドルの長いイントロから驚いたが、その後にはアカペラで歌われる「Gleensleeves」だ。その次くらいからそれらしいサウンドが聴けるので、一枚でそれなりの物語展開らしく作っている。小難しく解釈すると8分の6拍子調のジグに4拍子のリールが強烈に効いている感じが英国ダンス音楽の基本で以降どのバンドもこれに習ってダンス音楽を強調しているが、それにしてもこのアルバムジャケットのフザけた格好と云ったらニューヨーク・ドールズも真っ青でジョークの好きな英国人ならではの文化。
この続編作品に1976年にはマーティン・カーシーやサイモン・ニコルやシャーリーなどで「Sons of Morris On」をリリースで、同じようなサウンドを楽しめるのもマニア的に嬉しいが、別アーティストでこの手の作品を探すのも大変だし、更に2002年に唐突に30周年記念で「Grandson of Morris On」をリリースしているからここまで来ると素晴らしい。ハッチングスはピート・タウンジェンド以上にこだわりを見せる歴史の追随者だろうが、ここまではまだ聴いていないので楽しみも広がる。
この辺まで漁ると英国ロックバンドがある程度変わった事やってても大体分かるし、正当派のポップス路線はビートルズから入れば大丈夫だけど、ビートルズからは漁れない音楽も当然多い。Zepは実にこういうトコロまで行けるから面白く、それを受け止めるだけのキャパが英国ロックにある事が凄い傑作。

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