Mandy Morton & Spriguns - Magic Lady (1978):
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英国トラッドは暗い歌詞で悲惨な家族の結末や殺人、恨みを歌っているけど、オリジナリティを出したロック系のトラッドはそうでもなく歌詞の暗さはともかく、どことなく田園風景を思い起こさせるから良い季節に聴きたくなる。サンディ・デニーを敬愛していたシンガーは今に至るまで数多くいるが、中でも一際目立っていたSprigunsのマンディ・モートンで、Sprigunsもカルトバンドになっているのであまり知られていないけど、変な音でもなく楽しめます。しかし、確かに受けないし売れないのも分かる音なので一生に何百回も聴かないだろう。
そんなSprigunsが1978年にリリースした最後の作品で、名義はMandy Morton & Sprigunsになっている名盤「Magic Lady」はSandy Dennyが転落死したのを知って悲しんだマンディ・モートンが、製作中だったこのアルバムを急遽サンディ・デニーに捧げる作品としてリリースしており、その想いが現在に至るまでしっかりと伝わっているところが見事。人の想いはこうして伝わっていくのかと思える、そんな作品「Magic Lady」だけど、こうして紹介しているジャケット写真やSprigunsだけ見るとちょっと不気味感あって、ジャケットが黒魔術の六芒星だからちょっと引くが、少なくともメッセージとして打ち出してはいないと思うし、それよりもSandy Dennyに捧ぐ意味かもしれない。
最初、Spriguns of Tolgusで出てきた時は純粋に英国トラッドベースのバンドだったけど、Sprigunsになってからはプログレッシブな傾向が出てきて、「Magic Lady」はSprigunsの二作を経た後のアルバムなので気になるが、過去の中で一番ポップ。曲もコンパクトに纏められて民族色も強くなく暗くもなく、しっとりと湿ったギターの音がありフィドルもあり、あとダルシマーで雰囲気も世界観を出している。ハッとするコーラスワークや驚きもあるけど、基本的に歌いやすいポップ指向を持った作品だからジャケットとこれまでの活動歴とが一気に成熟した名盤で違和感はない作品だし、躍動感すら溢れている見事なアルバム。アナログ時代は見つからなかったし、英国でもレアなアイテムで、ものすごい値段が付いていた作品で、CD時代もなかなかリリースされなくて、聴けなかったアルバムだが今は幸せな時代です。

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