Renaissance - Scheherazade & Other Stories

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 同じピアノを中心とした楽曲でもこうまで異なったサウンドが出てくるかと思うのがいわゆるプログレのピアノ中心バンド。もっとも当然のことながらジャズとは正反対のクラシック音楽という正統派の流れから構成されているモノが多いので当然毛色は違うワケだが、それ故にひとつの楽器でもここまで異なる音楽を紡ぎ出すっつうのはなかなか楽しめる。もっともプログレバンドの中でもジャズよりのバンドのサウンドであればそんなに変わらないのかも知れないけど、ジャズよりのバンドでそこまでピアノをフューチャーしたバンドってのは多くないし、どっちかっつうと管楽器を混ぜる方が多い感じだね。もちろんソフト・マシーンが念頭にあるんだけど。

シェラザード夜話(紙ジャケット仕様) Turn of the Cards Novella

 そんなことでクラシカルサウンドをロックに持ち込んだピアノ主体のバンド…と言うワケでもないのかな、でも聴いている音色の限りでは絶対ピアノ中心のハズ。そしてドラマティックな曲構成と美しきクリスタルボイスによる壮大なアレンジでプログレのレベルを一気に引き上げているバンドでもあるルネッサンス。アニー・ハスラム率いる、というワケではないのだが、やはりアニー・ハスラムの圧倒的な存在感がバンドを支配してしまっている感が強く、その美しく荘厳な楽曲が常に引き合いに出されるものだが、楽曲の方も圧巻。アルバム的にはレーベルをBTMに変えた頃のリリース作品「Scheherazade & Other Stories」や「Turn of the Cards」あたりが最も内容的には濃くて英国風なのがよろしい。その前後はどちらかと言うと明るめの要素も持っていたけどこの二枚は何故かちょっと重い部分がある。それと、この二枚ってのは今でこそ容易に手に入るけどアナログの頃には全然見つけられないタイトルだった。他のは結構アチコチで見かけたのに、この二枚はレーベルが違って再発も少なかったのか、なかなか見つからなくて結構探した。んで、探して見つけて聴いた時の感動もまた一際高くてやはり思い入れの強いバンドになってしまった。

 邦題「シェラザード組曲」全4曲。うん、4曲しか入ってない。A面3曲、B面1曲。それこそ美しいクラシカルなピアノのイントロから始まり、10分オーバーの曲にしてはシンプルな楽器構成で作られた「Trip To The Fair」は実によく練られたアレンジが施してあり、そしてまたアニーの歌が全体の楽曲を引っ張り込むようにベースも鍵盤もドラムも歌ありきの盛り上がりを見せる。しかし一方ではアニーの出番はそれほど多くもなく、きちんと楽器の構成で曲を組み立てているし、そこで何かの楽器が冗長なソロを奏でていることもなく美しい、という形容詞しか当てはまらないのかな~、なんて。もちろんコーラスワークによる盛り上がりなんてのもしっかりしていて、大きい音で聴いていると正に感動。メインテーマに戻ってくるあたりはいつものことながらホッとして落ち着くが、それだけに留まらないのが異質の楽しみを味わえる。そして小曲「Vultures Fly High」は一気にロック的な作品になっている。リズムの面白さと鍵盤に支えられた変わりものの曲だけどしっかりとルネッサンスらしいポップさに彩られたメロディが印象的。そして後にリッチー・ブラックモアのブラックモアズ・ナイトでもカバーされた「Ocean Gypsy」だが、これぞ名曲。メロディの美しさは当然ながらアニーの持つ優しい歌声が心を包み込んでくれる壮大な海に抱かれる気分を味わえる傑作。確かアニーの好きな曲のトップだったような気がする。それくらい素晴らしい作品。B面に至っては正に「シェラザード組曲」がしっかりと紡ぎ出されており、歌詞の内容にも注目されることが多い。自分的には歌詞の内容にあまり興味を持って接したことがないのでよくわからないが、多分曲通りの構想だろうなぁ、と推測。オープニングのテーマから、というかテーマらしいテーマから始まるのでそれだけで正に一大絵巻が始まるなという印象を持つオープニング。そして美しきピアノがロールして…、うん、まぁ、聴いてみてよ、24分の曲の長さなんて全く感じないドライブ感やドラマ感があるからさ。もっとクローズアップされて然るべき作品。

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フレ
Posted byフレ

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