Slapp Happy - Casablanca Moon (1974):
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ヴァージンレコードは、マイク・オールドフィールドのような前衛的な音楽を最初からリリースする実験色の強いレーベルのイメージがあったが、それでも拒絶したサウンドがあった。それがアマチュアレベルや音楽的価値がなければ何とも思わないが、そうではない作品なのでちょっと不思議。商売センスに長けた人間もいたからか。カンタベリー系譜の中でも難解且つ発展しているバンドはヘンリー・カウ周辺だが、その前身、ダグマー・クラウゼが最初にメジャーになった記念すべきバンド、Slapp Happyのセカンド、「Casablanca Moon」のポップさを堪能した。
全くメジャーではないアングラなアバンギャルドバンドと語られる故にこのアルバム「Casablanca Moon」のポップさが浸透してない。何も知らずに普通にラジオや店頭で流れていたらもっと自然に手を伸ばす人も多いだろう。ケイト・ブッシュがあれだけメジャーならばこの「Casablanca Moon」もそれなりにメジャーでも良い。そんな感じの音楽。切ないバイオリンとピアノが奏でられ、七色変化のダグマーの美しい歌声が鳴り響く知的で極上のポップスだが、どこか暗さとロックさとカンタベリーさがある。ここがアングラな理由だろう。しかし一聴した限り、大変極上サウンドで聴きやすいのは間違いないのでもっと違った括り方で語られた方が面白いはず。
ちなみにこのアルバム「Casablanca Moon」が何故にヴァージンに拒否されたか。元々は今やCDでも聴ける「Acnalbasac Noom」として1973年にドイツの有名なバンド、ファウストをバックに配して録音された作品だったが、あまりにもドロッとしたバンドの音は受け入れられなかったようだ。そのドロさを取っ払ってイギリス人のミュージシャンを使ってさっぱりとしたポップス調に仕上げられたのがバージン盤「Casablanca Moon」。そのいきさつが丸ごとCDで聴けるのも面白い。聞き比べて、どっちが良いかお試しあれ。もちろんどちらも良さはあるから一概に言えないけど。ちなみに現行CDでは彼等のセカンドアルバム「Desperate Straights」とカップリングで二粒おいしいのでお得。こちらはヘンリー・カウがバックに付いた、かなり前衛的なサウンドにダグマーの歌が相変わらずのポップさで乗った摩訶不思議な音楽。以降Slapp HappyはHenry Cowに吸収合併された。

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