Camel - Mirage (1974)
2 Comments

音楽の叙情詩は重要だ。残念ながらアメリカからは出てこないサウンドだろうと決めつけてはいけないが、事実ではないかと。偏見とも言うが。でもヨーロッパの伝統的な側面はある。殊に英国の叙情性は他のヨーロッパ諸国のモロに露骨な、例えばイタリアとは異なり大げさにはならない。それでも深くしっとりと染み渡ってくる叙情性。そんな叙情詩を音にしているバンドの代表がフロイドだったり、キャメルもその一角だ。
1974年リリースの二枚目「Mirage」。ファーストアルバム「Camel」と音楽的にそれほど変化はなく、センスが磨かれた感じ。音的な面だけで言えばピーター・バーデンスの鍵盤が全面に出ているのでピコピコ系なイメージもあるが、そこはさすがにキャメルの雄であるアンディ・ラティマーのギターが鋭いところでロックファンの心を刺激してくれる。普通に意識しないで聴くと鍵盤とギターの音色の違いを意識しなくなる。違うけど、多分ラティマーのギターの音がスペイシーでマイルドでギターの感じがしないから。コードを掻き鳴らすシーンも多くはないのでかなり特殊。
凄いのはアルバム全体を通しても、一曲ごとに情景が目に浮かぶ音を聴かせてくれる点。解説も知識もなくても音を聴くと情景が浮かぶ。目を閉じて聴くと自分だけのイメージが沸き上がってくるから面白い。このアルバムのコンセプトは多分「指輪物語」だと思うけど、それを露骨に明言しないでもリスナーはイメージして聴ける。するとまるで映画音楽のように楽しめる。しかしラティマーのギターは面白い。こういうのを歌うギタリスト=ギターを歌わせる事の出来るギタリストと呼ぶ。しかもバンドアンサンブルが抜群。
この「Mirage」は冒頭から優れた旋律とアンサンブルによって歌が少ないのにもかかわらず、アルバムの印象が強いが、一般の例に漏れず、キャメルの最高傑作と呼んでも過言ではない「Lady Fantasy」を配しているアルバム。壮大な一大叙情詩が描かれている作品で美しい。プログレが好きとかキライではなく、流れていると心地良くなるサウンドなので聴かない方が損だと思う。こういう雰囲気を望まない時は興味ないけど、ひとつひとつの音が染み渡る良さ。ドラマティックな展開も素晴らしく12分を感じさせない物語。この延長が後の素晴らしいコンセプトアルバム「The Snow Goose」に繋がる。

- 関連記事
-
- Camel - Mirage (1974)
- Camel - The Single Factor
- Camel - Dust & Dreams