Julie Driscoll, Brian Auger & The Trinity - Streetnoise (1969):
0 Comments

1969年混沌とした時代が終演を迎えようとしていた時、既に本格的なサウンドをプレイしていたにもかかわらずあまり表舞台に出ることもなくマニア向けになってしまった感のある実力派バンドがいた。ハモンドオルガンと女性ボーカルを主とした独特なサウンド世界はこの頃に英国に溢れてきたゴッタ煮バンドとは一線を画した洗練された音で、それはブライアン・オーガーという実力のあるオルガニストとジュリー・ドリスコールというソウルフルな歌を歌える女性の成せる業だ。
アルバム「Streetnoise」は1969年にリリースされ、当時は二枚組のレコードとしてリリースされたため、なかなか売上げには結び付かなかったとか。自分がレコードを探している頃も割と高値だった作品で、オリジナルが云々よりも枚数的なものなのか、そこそこ見かけたけど高かったが、レーベルがポリドールだった関係か嬉しい事にCD化されるのが早くて、忘れないウチに入手できたのが幸いで一時期結構聴いた。初っ端からハモンドのリフで攻めまくる怒濤のサウンドはまずもって唯一無二のバンドの証明で、生ギターと歌とハモンドという妙なバランス感覚がこのバンドのアシッド感を上手い具合に引き上げていて、その幻覚加減が心地良い。アルバム中の効果音にそれらの影響は色濃く出ているものもあって一人でじっくり聴いているとかなりヤバくなれるかも。
アルバム中誰でも知っている曲がひとつ入っている。当時はまだ売れてたと思われる、ザ・ドアーズの「ハートに火をつけて」だ。最初から全然異なった解釈の音作りであの華麗なキーボードのイントロもなく、淡々とアシッドなオルガンが曲全体を圧迫してジュリーの迫力のある歌声が制する、そんな風格のあるカバーになっている、と言うかこれはオリジナルをヘタしたら超えているアレンジかもしれない。そう言うにはかなり勇気がいるが、これは相当なもので、彼等のオリジナルと言っても通じてしまうくらいに独自色が出ているのも素晴らしい。
アルバム全体的にどこか牧歌的な雰囲気があるものの根底にはドロっとしたものが流れてて、オルガンという楽器でそれを見事に表現している。ジュリーの歌も決して派手で明るい声ではないので丁度相まって最も優れた空間が出来上がった集大成だろう。ちなみにプロデュースはあのジョルジョ・ゴメルスキーだから二曲目にロシア語の曲があるのか…。

- 関連記事
-
- Brian Auger & The Trinity - Definitely What! (1967):
- Julie Driscoll, Brian Auger & The Trinity - Streetnoise (1969):
- High Tide - Sea Shanties (1969):