Nicky Hopkins - The Tin Man Was A Dreamer (1973):
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ニッキー・ホプキンスは60年代英国ロックを語る上で実に貴重な働きをしている人で、セッション参加バンドは数知れず、そんな中でも有名な仕事としてはストーンズ、フー、キンクス、ジェフ・ベック・グループなど今では名だたるバンドのアルバムで鍵盤弾きと云ったらこの人しかいないと思うくらいにアチコチで名前を見かける。あまり細かいバイオグラフィーは全然知らないけど、そんな印象で結構一目置いて見てしまう人で、その昔ジミー・ペイジがどんなバンドのセッションでもギターを弾いていたスタジオギタリストだったと言われるようにこの人も多分どんなセッションにでも駆り出される鍵盤弾きだった。
そんな彼の転機はストーンズとの出会いだったが、英国ロックが一番熱い時期でもある1973年にようやく、と言うか背中を押されて出したソロアルバムがアナログ時代ではかなりレアだった「夢見る人」で、ミック・テイラーのギターが心地良い具合に登場する優しく繊細な人たちによる作品。きっとそれがニッキー・ホプキンスの性格だろうなとヒシヒシと感じられ、サックスではボビー・キーズがもう一人のセッションマンとして有名なクリス・スペディングと参加している実に心和むアルバム。ベースにはあのクラウス・ヴォアマン参加なのも彼ならではだ。更にこの後徐々に有名になっていくパーカッショニストと言えばレイ・クーパーと、内容的にはニッキー・ホプキンスのソロ作品なので鍵盤、とくにピアノが前面に出てくるアルバムで冒頭から落ち着いた優しい雰囲気で始まる。どの曲を取っても美しく繊細で心優しいメロディーが紡ぎ出せるところはさすがに音楽家の一面を見せてくれるし、中でも「Lawyer's Lament」という哀愁を帯びた美しき曲はアルバム中最高の一曲。全然違うけどある意味ピート・シンフィールドのソロ作品にも通じる英国的なメロディーが好きで結構聴いた。もうちょっと他の楽器が聞こえても良いと思うくらいピアノが前面に出ているのがもったいないけど、ソロ作品だからこれくらい出ても良いだろうか、テイラーのギターもツボを押さえたところでしっかり鳴ってくるし、ストーンズ関連の人の単なるソロ作品として捉えられているだけでは惜しいくらいにアルバムジャケットも含めて彼らしい作品。
アナログレコードで収集していた時代はこのアルバムに全然お目にかかれなくて、見つけても結構な高額で全然聴けなかったし、そこまでして手に入れる程とも思わなかったのでブライアン・ジョーンズの「Joujouka」と共にストーンズ関連では聴けなかったアルバムだったがCD時代にリリースされてようやく聴けた作品がこれほど心に染み入るとは思わなかった名作。

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