Grateful Dead - Live / Dead (1969):
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1960年代末、サンフランシスコではフラワームーヴメントが沸き起こり、ヒッピー文化が最先端となったいわゆる幸せの幻想時代となるが、先のジェファーソン・エアプレーンと共に時代の寵児となり、その精神思想が歴史を築き上げて超ユートピアファン層を獲得し、更にそれが世代を超えてひとつのアイコンとなった英雄的なバンドがグレイトフル・デッド、美しいバンド名だ。そして街で見かける数々のシンボルマークとなったデッドのイラスト、どれもこれもが一見おどろおどろしい面を持ったもので、そういった周辺状況を見るととても手を出す気にはなれない、ある意味宗教団体のバンドかもしれない。
そんな深い意味を知る由もなく、単純にロック名盤と語られた雑誌を見て17歳の時に初めてデッドのアルバム「The Grateful Dead」を聴いたが、あまりにもヘヴィー過ぎて、サイケデリック的アーティスティックな面が養われていない時期にこのようなドラッグ思想に支えられたアルバムはまともに聴けず、以降二十年近くグレイトフル・デッドは封印されたまま。デッドヘッズはコミューンを形成してネットでも盛んに交流をして、新参者も古くからのファンも親しみやすい環境で非常にオープンで明るく、何を自慢するでもなく、デッドを押し付けるでもなく、ごく普通のロックファンはもちろんアメリカの良き時代の理解者と接してくれる人が多かった。そこから受ける印象は決してデッドのおどろどろしたイメージではなく、またドラッグまみれな幻想のイメージでもなく、爽やかな印象さえ受けた。
聴いたアルバムは「Live / Dead」だが、驚くほど素晴らしいアルバム。インプロビゼーションで構成されたライブ即興バンドの醍醐味を味わい、且つ全くストレスを感じない爽やかな浮遊感に包まれたサウンドで、英国のインプロバンドなら疲れる瞬間が皆無。ベックの「Blow By Blow」のような湿っぽさはなく、プログレバンドのようなハマり度もなく、ただひたすら心地良い音色が空気と共にカラダをすり抜けていく美しいサウンドでユートピアの世界、ヒッピー思想、ドラッグサウンドながらも美しく心底驚いた。スタジオアルバムの名作と呼ばれる「Aoxomoxoa」も良いけど、ライブでその本領を発揮する事は有名で、時代の象徴となったフィルモアウェストのライブを収録した「Fillmore West 1969」が絶品モノで、更にコレクター間の音源も自由に解放されているのでキリがないが、ハマる人の気持ちが分かる素晴らしいバンド。これを聴かずして一生終わる事なくて良かったと思う。

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