Steeleye Span - Please To See The King (1971):
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イングランドの香りを求める求道者アシュリー・ハッチングスがフェアポートを離脱して自己の音楽性を追求したバンドがスティーライ・スパン。初期三部作はいつの時代にも語り継がれる名作として君臨している。時は1970年前後、ロックの世界では一番熱い時期に突入するが純然たる音楽。英国伝承音楽の世界では楽器が発展して今までは口伝えとフォークギターやフィドルなどで伝えられてきた音楽がフォーマットが整い、更にエレクトリック楽器の発展に伴ってより大衆に訴えかけられる環境が出来上がってきた。生まれたばかりのロックのフィールドとは大きく異なるアプローチだったが、エレクトリック楽器を使ってトラッドを演奏する試みに重きを置いたバンドがスティーライ・スパン。
ファーストアルバムではメンバー間トラブルがあり、アルバムリリース時には既にバンドメンバーがいない事態にまで陥っていた。いくら人気が出てチャートに入る売れ行きを示してもどうにもならない状態だが、そのサウンドは後のモノとは些か異なり、ある意味一番聴きやすいサウンドで英国とアイルランドの混合編成で音楽性の面白いバランスが聴ける作品。どのロックバンドよりも重いサウンドを出しているアルバムが「Please To See The King」や「Ten Man Mop」と思う。それもドラムレスだから一枚聴いて非常に疲れを感じる音楽で重く、美しき歌姫マディ・プライヤーと共にメンバー全員によるコーラスワークが音の隙間全てに詰め込まれたイメージで逃げ道のない壁が迫ってくるサウンドに驚かされる。それもフォークをエレキで演奏しただけで歪んだ音ではなく生の音色だ。元となる音楽の持つ重さに加えて、トラッドフォークは大体が悲惨な物語や恨み辛みなので、当然ながら軽くはならないから、入手する人は何枚か国内訳詞付きを入手するとその残酷な歌詞の内容に気付く。スティーライ・スパンだけでなく、どんなトラッドでも一緒だ。
しかしこのセカンドアルバム「Please To See The King」は三枚目「Ten Man Mop」に比べれば、まだ軽めに作られている。サードアルバムは心から重いと感じる無駄なモノを一切取り払ったアルバムだから。どちらも英国的でロックの歴史に大きく被さる面を持っている深さ。この三枚以降のアルバムからは軽快なポップサウンドで、その模様は初期のサウンドとは全く異なる英国を代表するバンドとなるが祖国に深く根付いたバンドのスタイルはそれでも支持されている。

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