McDonald & Giles - McDonald & Giles (1971):

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 1970年、英国アンダーグラウンドロックが盛んになっている頃、キング・クリムゾンで一旗揚げた連中がこぞってバンドを辞めて、更なる成功を掴みに行こうとしていたのか、単に渡り鳥的なミュージシャン気質がそうさせたのかはたまたフリップ卿への嫌悪感だけでそうなったのか、理由は多々ありそうだが、そのおかげで良い作品が幾つも聴けた事には感謝せざるを得ない。クリムゾンのメンバーがクリムゾンにこだわったら派生したバンドが聴けなかった可能性があって、例えばグレッグ・レイクがそのままクリムゾンにいたらEL&Pはなかったとか。バンドメンバーが固定されなかった事がシーンにとっては良い結果を与えたなら、クリムゾンよりもクリムゾンらしくなるはずだったバンドがMcdonald & Giles。

 クリムゾンを脱退したばかりのイアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズによるユニットがクローズアップされているものの実際には弟のピーター・ジャイルズやピート・シンフィールドの歌詞が登場して、これだけでもオリジナルクリムゾンを凌駕する面子。そこに何とマルチプレイヤーとして既に世間に知られていたプロ中のプロ、スティーヴ・ウィンウッドがその隙間を埋めるように華を添えている。

 アルバムを流すと最初から心地良いギターサウンドで英国感溢れる。B級もメジャーも関係なしで音色で反応してしまうけど、ドラムが入るとこれこそマイケル・ジャイルズのドラミングプレイと音。このスネアが心地良い。最初から11分の曲で歌詞もあるけどコーラスワークの方が印象的で、そもそも歌が少なく長い起承転結を持ったインストに近い音。そして更に心地良いフルートの音。クリムゾンで聴けた優しい世界だけを抜き出したアルバムで本家がハード路線を走った反面、クリムゾンのもう一つの側面を全面に出した作品。ピーター・ジャイルズのベースもクリムゾンらしく、このバンドにハマっている。プログレッシブにラインを刻んでいる素晴らしいベース。多分スティーヴ・ウィンウッドが弾いている鍵盤もアヴァンギャルドで、クリムゾンのキース・ティペットと相通じるような演奏で、この時点まではクリムゾンと音楽的な方向性は似たようなモノがあったようにも思える。

 クリムゾン関連のアルバムを漁らない人でもこの作品は是非聴いてもらいたい一枚で、クリムゾンの毒が抜けた英国プログレッシヴロック、英国ロックの音。そしてこれぞメジャーの音とも云える作品。いわゆるB級バンドと呼ばれる類の音楽性と同じようなサウンドの結果となっているものの当然ながら圧倒的にメジャーな音に仕上がっている素晴らしきアルバム。



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