The Doors - Live At The Hollywood Bowl 1968:
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60年代を代表するバンドでありながら60年代を代表するフェスティバルであるモンタレー、ウッドストック共に出演しなかったザ・ドアーズ。質の高いライブを繰り広げていた事は最近の彼等のライブ盤のリリース状況を見れば一目瞭然で、ジミヘン並みに当時のライブをオフィシャルサイト経由で流通させている。21世紀の新たな販売戦略のひとつであるネット販売が主であるが、もちろんファンはこれに享受して何でも揃えているに違いない。自分が一生懸命集めていた時のザ・ドアーズのライブ盤と言えば「Live At The Hollywood Bowl」と「Absolutely Live」と「Alive She Cried」くらいで、特に「Live At The Hollywood Bowl」のビデオには度肝を抜かれた。これがドアーズか、ジム・モリソンか、と。
時は1968年7月5日、モンタレーから一年後、ウッドストックの一年前に巨大なハリウッドボウルで延々と内に籠もるライブを繰り広げていた。時代は開放的な風潮にある中、しかも西海岸では相当異色な存在だったジム・モリソンのカリスマ性は今見ても惹かれてしまい知性を放っている。そんな存在や伝説に感化されていた時に昔懐かし「ベストヒットUSA」で「Live At The Hollywood Bowl」から一曲流された。それがもの凄い衝撃でその後ビデオを探し回った。何度も見たがキツかった。決してポップでキャッチーなベスト盤で聴ける曲はほとんどプレイされず、バンド本来の持つブルースに根ざした演奏とアドリブが延々と続けられる楽曲ばかりが収録され、普通にドアーズ好き程度のリスナーを一気に遠のかせてしまうライブ。今では考えられないくらいシニカルで媚びないロックを実践していた。
冒頭から「When The Music Is Over」で10分以上のアドリブをかます。しかもジムの第一声はいきなりあの叫び声から始まる。これは惹き付けられるか離れるかしかない。しかも当時の16トラックの音と4カメだけでほとんどがジムの左側面からのショット。続けて何曲かブルース定番曲が延々と歌われ、そのカリスマ性を見せつけてくれるしバンドのアドリブもさすがだが、淡々と繰り広げられるその様相はハマらないとキツイ。しかし、ジムの真骨頂の物語でもある、オリジナルアルバムには未収録だがライブの定番曲で大変人気の高い「Celebration Of The Lizard」の展開には目を覚ませられる。原曲は3枚目のアルバム「Waiting For The Sun」に「Not Touch To The Earth」と収録されているけど、ライブの「Celebration Of The Lizard」は別格だ。
何かに乗り移られた仕草でパフォーマンスを演じる。パフォーマンスではないかもしれない。彼は本当にその気になって、蜥蜴になっている。そう思わせる様相で曲を昇華させている。凄い。目を閉じて一人語り続ける伝道師、他の何者も寄せ付けないカリスマ性をたっぷりと楽しめる一幕。そしてハッとする「Spanish Caravan」の美しき旋律に彩られて現実の世界に戻るが、「Wake Up!」から語られるジムの朗読。そして唐突に始められる「Light My Fire」の光が差し込む展開はあまりにも美しい。演奏も激しく熱を持ってプレイされ、ライブ時に出来上がりつつある詩が繰り広げられ、恐ろくも美しき邪悪な詩が披露され、強烈なクライマックスを迎える。そして長い「The Unknown Soldier」が続き、銃殺隊を模倣したシーンはアメリカのバンドらしい展開。この一幕も衝撃的なシーンで、それに併せた曲展開も見事。他の誰にも決して真似の出来ないライブは一発で印象に残る。最後は「The End」。美しい終わりの詩、強烈なアドリブによる詩が狂気を垣間見る内容で間奏では歌詞に合わせて虫を拾う仕草をしたり、本当にアーティスティックな表現者として存在しているジム・モリソン。全編を通してほとんど動かない彼の存在感は圧倒的。そうしてこの映像は終わりを迎えるが、見る度に精神を消耗し、中途半端に取り組むと即座に見放される印象を持たせる重いライブ映像。
昔はレコードでもリリースされ、初期はCDもリリースされたけど、最近は出てない。「Absolutely Live」もジャケットが変わってるし、「In Concert」も出ているし、ボックスセットでは各種公演が入っている。DVDもいくつもリリースされているし、やはり世代を超えた人気があるようだ。一回ハマると抜けられないダークな世界がここにある。

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