Bruce Springsteen - The Wild, the Innocent & the E Street Shuffle

Bruce Springsteen - The Wild, the Innocent & the E Street Shuffle (1973)


　ブルース・スプリングスティーンは全米の英雄ロックンローラーだ。1973年にフォークシンガーの流れで出てきたから、その系統のミュージシャンと思えば実はロックミュージシャンで、才能あふれる若者と知られており地元ニュージャージーでは既に有名なロックバンドミュージシャンだった。アメリカは広いからそれだけでは世界に出てこれない。ニューヨークでオーディションに臨む際にはデモテープとその場即興の演奏を聴かせるためにフォークギター一本で歌い上げたらしいが、そこからディランの二番煎じの若者のレッテルを貼られそうになったが、一旦は世に出てきてからバンド活動で地道に成果を表して周囲を巻き込み、デビューアルバムから8ヶ月後にはセカンドアルバム「The Wild, the Innocent & the E Street Shuffle」をリリースした。

　今度はロックバンドの姿から離れる事なく、冒頭からワクワクする気分のR&Rが展開される。アルバムを聴き進めていけば後に聴かれるブルース・スプリングスティーンの作風は変わらずに聴けるが、頼もしい初期の意欲はアレンジに尽きる。ロック一辺倒のアレンジではなく、ジャジーに、また複雑に展開を孕んだB面収録曲は7分から9分にも渡る長尺曲が3曲で完結しているが、プログレとは異なるブルードウェイミュージカルなイメージを彷彿するような曲の組み立てと展開を説得力あるボーカルが物語を展開し、言葉は直接分からないながらも、ここまで納得感のある、共感できるボーカルが聴ける熱意と熱量はさすがにブルース・スプリングスティーンの十八番。そこまでブルース・スプリングスティーンを良いと感じた事も多くないが、初期の名盤の類よりも十二分に心に響いたアルバムとなった。

　この試行錯誤があったからブルース・スプリングスティーンの名盤「The Wild, the Innocent & the E Street Shuffle」は生まれたと思えるし、このアルバムの実験やチャレンジがなければ後の大成も遅くなったと思う。それほどにユニークでチャレンジなスタイルを収録したアルバムの位置付けで、当時の若者達が大いに感化されて影響された、また全米のヒーローに上り詰める理由も分かる筋の通ったロックが記録された傑作アルバム。アメリカで出てくるミュージシャンは才能がなければ残れないし、今でもシーンのトップにいられる才能は若かりし頃から確かなポリシーで存在している。

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