S.M.V. - Thunder

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S.M.V. - Thunder (2008)
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 ジャズ・フュージョン界のベーシストで知られている名前は数多いが、スタンリー・クラークやマーカス・ミラーもその一端を成す知名度を誇る。そこに新鋭ベーシストのヴィクター・ウッテンを巻き込んで、2008年にトリオベースセッションのアルバム「Thunder」をリリースしている。翌年に行われているライブ映像をYouTubeで見る方が誰がどの部分を弾いているか分かりやすいが、一見ソロプレイに長けたベースプレイヤーが3名居てセッションしても数曲で飽きるとは思っていた。ライブ映像を見て音を確認すると、マーカス・ミラーはベースだけでなくサックスも吹いてひとつプラスアルファな音を加えているし、こちらはドラムも鍵盤も入ったバンド形式のスタイルで奏でているのでフュージョンから見ればギターの代わりにベースが入る構図でしかない。普通にバッキングのベースプレイと、ソロイストのベースを三者三様で弾いており、ツインギター的にユニゾンやハモリ、ぶつけ合い見せつけ合いも含めて二本のベースがせめぎ合う不思議なセッション。

 楽曲はそれぞれ三名が持ち寄っているが、そこに個性を見出すまでは至らず、三者のベーススタイルが確立されているからプレイ側で判別していくのみ。そこまでマニアでなくても聴いているウチに誰がどのベース化は大体分かってくるから面白く、音色もあればプレイの特性もある。チョッパー=スラップベースが盛んに普通の流れで入ってくる音はおおよそマーカス・ミラーでもっとも乾いた音色にも聞こえる。逆に粘っこいサウンドでギター的に弾いているベースはヴィクター・ウッテンのスタイルで、フレーズも古さがなく新鮮な印象も偏見だが不思議。その両者でもなくマルチに器用にベースらしいスタイルを貫き上手いと思う空間の使い方を聴かせている音がスタンリー・クラーク。ベースの音もスタンダードで、さすがに今のベースの標準を作ったプレイヤー。

 楽器が好きでなければ聴いていられないが、ジャズ・フュージョンのサウンドは概ねそのリスナーが多いので、楽しめる要素の方が多いように思う。そこまで深く興味を持っていない自分でもベースは好きだから面白いアプローチと感じるし、上述のように聴いていると見えてくるプレイもあり、見かけほど違和感なくインストアルバムに仕上がっているので、話題十分ながら中身は充実の作品と聴くが賢明なアルバム。ここに超絶ドラマーが入ってセッションしてたらもっとユニークにはなったが、さすがにうるさすぎるか。





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フレ
Posted byフレ

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