The Moody Blues - Present

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The Moody Blues - Present (1983)
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 プロ集団であればあるほど一聴して元プログレッシブ・ロックバンドとは分からないレベルまでポップを消化して曲を出してしまえる傾向が強い。当然ミュージシャンだからキャッチーなメロディラインの作り方や曲構成、コード進行は抑えているからこその妙技になるが、そこでバンドの個性や差別化的面の打ち出し方も意識はしていたと思う。皆普通のポップス領域と競い合うようにして聴かせやすく練られた楽曲を出してくるから、ある意味では才能の競い合いが激しい世界に突入しているし、成功すればセールス面で跳ね返ってくるからチャレンジの意義は大きかった。ただ、ロックを奏でる、ロックが大衆に好まれた意味を捨て去っているのでリスナーも大人になれとの意図もあるか。70年代から80年代への変換は大きな代償を伴っている。

 Moody Bluesの1983年リリースアルバム「Present」はプログレッシブ大作を卒業してからのポップ路線に拍車を掛けたようなアルバムで、既に慣れた面もあるから潔く軽やかで耳慣れた快活なポップスが飛び出してくる傑作。誰もムーディー・ブルースがプログレッシブ・ロックバンドとは思わないレベルで作られているから素晴らしい。ジェネシスやイエスのようなヒットに恵まれればまだマシな話で、まさかムーディーズがここまで軽やかでキャッチーで爽やかなポップスを奏でていたとは知ってはいたが聴かなかった。いざ聴いてみればホントに聴きたくない程に素晴らしい作品でさらりと通り過ぎていくレベルのポップス。しかもデジタル機材も使いこなして時代に迎合した素晴らしきアルバムだ。先端を担う鍵盤奏者がシンセサイザーや音処理を知っていればいる程チープな感触に仕上がるこの時代、その役割を本作ではパトリック・モラーツが担っているから納得。マイク・ピンダーの仰々しいメロトロンの影も形も見当たらないサウンドメイキングはロックリスナーすべてを悲しませるレベル。

 一方新生ムーディーズのアルバムとの主張で聴けば躍動感溢れたカラフルで軽快な楽曲が並び、元々ファンタジックな作風を得意とするジャスティン・ヘイワードの作曲センスが大化けしてアレンジされているので、レベルは異常に高い。ジョン・ロッジやロイ・トーマスの曲も本質は変わらずながら目立つのはモラーツの装飾音だから転換期を超えての野心作にもなっていたか。それでもここまで続いたムーディー・ブルースの活動は本作で一旦終了する作品となり、バンド側も完全に迷走しての撤退を理解していたと見られる。ここまで軽やかに彩られた作品を聴ける点は貴重でもあるが、捉え方が難しいアルバム。ただ、80年代ポップスを制覇するならかなり上位に位置するクォリティにある作品。





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フレ
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