Prince - Welcome 2 America

Prince - Welcome 2 America (2021)


　2010年に制作されていたプリンスの未発表アルバムの触れ込みで現代にリリースされた「Welcome 2 America」。超多作なプリンスの残された作品から纏まった形態で発掘リリースされているから、オリジナルアルバムの発表に近い評価だが、同時に付けられているライブ映像の評判が更に良い様子で、後年のプリンスのライブステージ及び空白期間の姿が見られる貴重度も手伝っている。普通にアルバムサウンドを耳にして、久々に聴いてみたくなったのでアルバムを冒頭から丸ごと堪能しているが、確かに今まだ普通に生きていてリリースしてきたアルバムの質感レベルで聴いていられるから不思議。既に10年以上前の作品なので古さや時代遅れ感もあって当然だが、プリンスに至ってはそれを一切感じない。それどころか今でも最先端に近い、または往年のファンクソウル作品の踏襲とも聴けるアルバムの音作りに舌を巻く。

　常にプリンスを追っているリスナーではないので、ふとした時に聴く程度だが、それでも本作だけを聴けばプリンス風の作り方は分かる。じっくりと聴けばギターのワウの使い方やカチャカチャしたトーンや音色、俗に言うファンクな面と、ドロドロの甘いファンク、スウィートソウル的楽曲とムードは70年代のスライ＆ザ・ファミリーストーンを彷彿させる曲調ばかりで心地良い。プリンスが誰かのような曲調やアレンジと言われる事も多くないが、普通に聴けばその印象を強める。もっともそこにプリンスらしい浮遊した音色やコーラス、アクセント類が入ってくるので圧倒的な個性に進化しているが、ベースメントにあるスライ風味から逃れられない。冒頭からアルバムをそのトーンで覆っているとは言い過ぎか、故に自分レベルが聴きやすい雰囲気が封じ込められている作品で、とても馴染みやすい音色。

　最初聴いた時の印象はまずそこからだが、何度か聴くと当然ながら素晴らしいプリンスの曲のセンスと音の魔術師的アレンジに翻弄され、スライ＆ザ・ファミリーストーンの記憶が上書きされて最新のプリンス作品に置き換えられる。既にこの世を去って5年も経っているので最新のハズもないが、普通に刺激的なアルバムで今にしてもまた天才を感じる作品。どこが良い、どこが特徴と聴き応えがあるアルバムでもないが、全てが良く出来てると感心する程だから素晴らしいアルバムだと思う。未発表曲集でも新作アルバムでも良いが、このクォリティの作品がどれだけ残されているのだろうか、素晴らし過ぎる。

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