Christone 'Kingfish' Ingram - 662

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Christone 'Kingfish' Ingram - 662 (2021)
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  Christone 'Kingfish' Ingramの新作「662」がリリースされていた。前作から約2年ぶり、当時二十歳が今22歳となってのアルバムだが、驚異的に進化した作品で驚いたと同時に今後の期待も相当高くなった。十代の頃からシーンを賑わせてくれた天才少年でもあったから、注目していたが、その頃のライブではジミヘンはおろか、プリンスまでも血肉にしてのブルーススタイルで、いわゆる3コードばかりのプレイが多く、他とのセッションではそつなくプレイ出来ていたし、カバー曲も当然凄まじいブルースギタープレイが聴けて、凄さを実感していた。ところが、年を経て自分のアルバムを制作する段になると、これまで通りの3コードブルースを起点とした作品ではまるで面白味もなく、若いウチはその若さと天才的センスで話題を取れるが、いつまでもそうは行かない。実際前作ファーストアルバム「キングフィッシュ」を聴いても期待したほどの作品には仕上がっておらず、やや肩透かし感があった事は否めない。だからと言ってキングフィッシュがどこまで音楽的才能とブルースにこだわる必要性があるかと問えば、未知数でしかなかった。最初は天才少年として、それはギタープレイヤーのセンスのみ。メジャーデビューになれば音楽家のセンスが問われる。それも最初はこれまでのおさらいで何とか凌いだがここからが勝負と分かっていたようだ。

 「662」はGary Clark Jr.のような音楽センスに溢れた作品に仕上げている。つまりは単なる3コードブルースに留まらないコンテンポラリー性を拡張させて、さらにモダンなムードと音色を含ませた中で往年の得意のブルースギターを今度はストラトのトーンでぶち込んでいる見事なプレイ。どうしたってギターソロの音色とプレイスタイルが気になるし、また期待を裏切らないプレイと白熱の哀愁プレイは何ら問題なく泣かせてくれる。だからギターを存分に聴ける意味では最高に素晴らしい作品。そこまで行き着くかとの意味でアルバムを音楽的に見ると、これも多彩な楽曲が並び誰がこのアレンジや楽曲を仕向けたか、素晴らしい広がりを聴かせてくれる。この分だと上手い具合にボナマッサのように天才少年からブルースコンテンポラリー音楽家へと進めば、ホントに頼もしいプレイヤー且つエンターティナーになっていくだろう。ツアーの苦労もあってか、あの巨体も流石に少し肉が落ちたようなアルバムジャケットが、カッコ良くもなっているし、紫のストラトも新たなシンボルか、アルバム中身の音と見事にマッチしたトーンで素晴らしい。

 どうしてもギターに耳が向くが、これまでのプレイに加えて随分とジャジーなフレーズもこなしており、まだまだ進化していく過程を毎回聴けるようだ。こんなフレーズどこで身につけたのかと思うプレイが随所で聴かれるし、個人的にはマイケル・バークスのカバーも嬉しい限り。ほとんど知られていないだろうマイケル・バークスをキングフィッシュが取り上げてくれるとは物珍しい若者。更にユニークにニヤついた「Not Gonna Lie」のLed Zeppelinぶりが嬉しかった。それと、キングフィッシュの歌声がこれまでよりも洗練されたか、案外ジミヘンの声に似ているような気がしたのでまっすぐ抜ける歌声も活かして広がりを極めてほしい。気軽に手を出したら一気にアルバムを聴き倒してしまって、レイヴォーン的なプレイやプリンスなど誰かを彷彿させるプレイもありつつ、キングフィッシュのセンスを味わえた快作。








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フレ
Posted byフレ

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