



反抗的なラップバンドとして有名な、そして若年層に人気のある
パブリックエネミー
のチャックDが大好きなアルバムがマディ・ウォーターズの問題作と云われる
「Electric Mud」
という作品で、チャックDはこのアルバムのことでチェスレコードの創始者の息子であるマーシャル・チェスと連絡を取り、物語は始まる。物語っつってもドキュメンタリーだからそのままなんだろうけどさ。で、面白いことに35年も前のこの作品を録音したバンドの連中をもう一度集めて何か面白いことをやろうということで話が盛り上がり、ブルースの街、シカゴで二日間のレコーディングを行うこととなり、そこには新たなる刺激としてのチャックDとココモというラップシンガーが参加した全く新鮮な「I'm A Hoochie Coochie Man」が出来上がるのだった。
所々で挟み込まれる回想シーン代わりのフィルムやビデオ映像は目が飛び出るようなものばかりで、それだけでも十分に感動的なのだが、例えば
ココ・テイラー
なんてのは当時を振り返りながら語ってくれるというのもやっぱり感動的だよね。そういうのって生々しくってさ、別に英雄伝だったり夢物語だったりするだけじゃなくて、すごく貧乏なことだったり決して有名だからと云って素晴らしい人ってワケでもないってのもあって人間模様を感じる。しかし、そんなフィルムでも結構昔から色々見てたり漁ったりしてたから見たことないのはそんなにないだろうなんて思ってたけど、甘かった。マディのスタジオセッションのシーンなんての見たことなかったし、
ハウリン・ウルフ
のだってそうだ。でもって、結構探して見つからないままにしておいた、
マイク・ブルームフィールド
が動く映像ってのを見たのも驚いたなぁ。PBBBのサム・レイがシカゴブルースフェスティバルに出演してドラムを叩き、そして歌うなんてのも驚きだったけど、その時に流れたPBBBの当時の映像なんて残ってたんだね。凄く驚いたわ、ホント。是非20分モノでもいいからリリースしてほしいくらい。そういえばこのフェスティバルではあのアイク・ターナーが何とかっつうピアノプレイヤーに影響を受けて音楽を始めたらしいんだけど、その張本人とのセッションが実現していて、感謝感激涙溢れていたってのも印象的だった。そんなに時が流れてから一緒にできる時が来るなんて本人も思ってなかっただろうから…できればアイクのインタビューでもやってほしかったね。
こうして映画でドキュメンタリーで書かれるとチェスレコードってのはこだわりがあって凄かったんだなぁというのがわかる。あの時代に白人二人が黒人ばかりをプロデュースしているんだからとんでもないことだよ。それで本人達は凄く純粋で気にもしてないし、ブルースに取り憑かれてるしね。息子のマーシャルったってもういいお爺ちゃんなんだけど、良き時代に育った良きプロデューサーだよね。でもしっかりとその後ストーンズのマネージャーやったりと色々経験してる。で、最後、やっぱり卓の前にいると自分が甦ってくるっていう職人気質を語る時の目はやんちゃな子供そのもの。好きなものに本気で集中して取り掛かれるってのは幸せなことだよな。羨ましいね。
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