Praying Mantis - Gravity

Praying Mantis - Gravity (2018)


　1980年代当時は幻のNWOBHMバンドと異名を取り、アイアン・メイデンと親密な関係性にあったと知られていただけでアルバム一枚リリースして解散。その後のヘヴィメタル全盛期のシーンには不在のまま時が経ち、90年代に復活してからはメンバーを替えながらトロイ兄弟中心に良質なアルバムをコンスタントに今に至るまでリリースし続けているPraying Mantisは、他のHR/HMバンドと比べても結果的に良い活動とキャリアを誇っている。80年代に一瞬だけ輝いたようなバンドと比較するのもフェアではないが、当時のメンバーの気分から見れば我慢して、それでもバンドを諦めずに続けてメジャーレーベルの契約のまま今でも活動出来ている姿は良かったように思う。歴史は何が起きるか分からない。

　Praying Mantisの2018年リリース作品「GRAVITY」。最初期の美しきツインギターとメロハーの元祖とも言える素晴らしいメロディを誇るバンドの印象からは随分と骨太で漢な作風にも感じる進化を遂げている。そもそもメンバーが流動的なのでバンドの固定化された歌声は存在しないが、音楽性からある程度はソフトで伸びやかで艷やかな歌声がもっともPraying Mantisに似合う歌声と勝手に感じている。しかし過去を紐解けば決してそういうボーカリストばかりではなく、ゲイリー・バーデンすら参加していたくらいだからイメージはまるでアテにならない。ただ、ギターの旋律の美しさと楽曲のドラマティックな展開はいつまで経ってもPraying Mantisお得意の変わらないスタイル。以前ほどのドラマ性は味わえないが、レベルは相変わらずの楽曲に彩られたアルバム。コーラスワークも秀逸でクライマックスを上手く用いたプロの作風。

　アルバムを通してみればややゴツさも持ち、キャッチーさもアメリカ寄りに感じるレベルの引っ掛かりを残し、単純に大英帝国ツインギターメロディアスハードロックには留まらない音楽性の広さ。ボーカリストのパワフルな歌い方に引っ張られているか、線の細さも特色だったが、普通にヘヴィなサウンドに進んでいるのは時の流れ。往年のリスナーからはやや違和感を持たれた作品になるだろう。しかし聴けば聴くほどにPraying Mantis節が味わえるので、じっくりと何度か取り組んで楽しみたい一枚。

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