Yngwie Malmsteen - Trial By Fire: Live In Leningrad

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Yngwie Malmsteen - Trial By Fire: Live In Leningrad (1989)
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 ソ連崩壊直前の1989年、どういう理由からか数多くのロックバンドがソ連にライブツアーに行っている。何でも当時のソ連のお達しでは当地で得た利益は全てソ連外に持ち出し禁止と決められており、記念以外の何者でもないツアーにしかならなかったようだが、それでも多数のイベントがソ連で行われている。他のバンドやグループとの差別化、またソ連でアメリカのバンドがプレイする、諸外国のバンドがライブする珍しさと西側の侵略の珍しさもあって皆が皆そこに駒を進めたようだが、その数年後にベルリンの壁崩壊、そしてソ連崩壊と歴史が揺れていた時期、ロックバンドもその波に揉まれていた偶然。幾つかのバンドはその模様をアルバムや映像でリリースして少しでも商売にしているようだが、物珍しさも大きいだろう。

 レニングラードのライブを敢行したイングヴェイ・マルムスティーンの1989年リリースライブアルバム「Trial By Fire: Live In Leningrad」もその一環だが、ファンの間では名盤ライブと知られている。アルバムジャケットがまずジミヘンそのままのストラトを燃やす姿だが、それもこの時代だとジミヘンをさほど知らない世代に衝撃的に映り、正に王者と呼ばれるに相応しい貫禄と孤高のスターダム街道を歩み始めている。更に中のライブ音源の凄まじさは、全くこの時代のギターヒーローの羨望の眼差しを一手に引き受けているような弾きまくりプレイを存分に楽しめる。メンバーはボーカルにジョー・リン・ターナーと鍵盤とドラムにヨハンセン兄弟とイングヴェイなのでベストメンバー時代のソ連の気合の入ったライブが収められている。映像バージョンもリリースされているので、そちらの方がライブ感を味わえるが音はCDの方が良いので聴きやすいが幾つかの曲がオミットされている点は残念。それでもこういうアルバムと聴けば迫力のあるサウンドで彩られている。一説にはドラム以外の音は全てアフレコで録り直していると言われているので、実際ライブアルバムとは異なるらしいが、それでもライブの臨場感があるから素晴らしい。

 久々にイングヴェイのアルバムを聴いたが案外キャッチーなメロディや曲調も多く、ジョー・リン・ターナーだからこその曲もあればイングヴェイのギターも弾きまくりで大満足な一枚。名曲「Far Beyond The Sun」のイントロには聞き慣れたアルビオーニのアダージョが美しきあのギターで繰り広げられている素晴らしさ。続くこの曲のアグレッシブなプレイは圧巻。「Dreaming (Tell Me)」のスパニッシュギターも斬新なオープニングを飾り、さすがのクラシカルギタリストぶりを惜しげもなく発揮、しかもライブでプレイしているから素晴らしい。ソ連ではポップミュージックよりもクラシックの方が馴染みが深い人種が多かったようで、クラシックをベースにしたイングヴェイのサウンドは大いにウケたと言われているが、納得できるスタイルとライブの狂熱ぶり。最後にはジミヘンのトリビュートで「Spanish Castle Magic」が割と原曲に忠実にプレイされ、ギターソロ部分までジミヘンをオマージュしようなプレイスタイルを意識しており、途中からはイングヴェイ節になるが、随分と意外性に富んだプレイが楽しめる珍しい傑作。





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フレ
Posted byフレ

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