Scorpions - Crazy World

Scorpions - Crazy World (1990)


　Scorpionsがドイツのバンドとは名前を知った時から形容詞に付いていたので単純な名詞では認識していたが、英米のチャートで賑わうHR/HM路線のバンド郡の中でドイツのバンドは異質だ。同じ事がNenaにも言えたが、同じようにその偉業の本当の意味は意識していなかった。ドイツのバンド、スコーピオンズの世界制覇は他に類を見ない偉業で、知らずともその成功の時代を生々しく見ていたのも後から思えば良かったか。当時はまるで違和感なく、他のバンドと並んだ凄さもあり、MSGも独英混合バンドで、シェンカー兄弟の才能と執念の素晴らしさが世界まで進出した成功例。

　1990年にリリースされた「Crazy World」は当時はそこまで話題になった記憶はないが、自分が離れていたからだろう。改めて取り組めば、さすがに素晴らしいアルバムの一言に尽きる。サウンドプロダクションもしっかり作り込まれ、楽曲のレベルの高さは当然ながら一般のリスナーでもHR/HMファンも満足出来るクォリティ。ツインギターを活かしたステレオの左右できっちりと振り分けられたルドルフ・シェンカーとマティアス・ヤプスの明らかな個性の違いが聴けるのも楽曲の幅を広げていて、頼もしく聴こえる。クラウス・マイネの上手すぎる歌、しかも抜け切らないマイルドな歌声がスコーピオンズの個性と影を落とし、ある程度明るい曲調をプレイしても必ず哀愁を帯びる独自性は他のバンドにはない圧倒的なスタイル。本作もアメリカナイズされた要素は強いが、その影がスコーピオンズらしさを演出し、楽曲の妙な側面で他とは一線を画している。何年もロックを聴けば、その影がドイツらしいメロディラインの賜物と分かってくるが、当時はその憂いさ加減の根源が不思議だった。

　アルバムは1990年リリースと冷戦終結時と重なり、どこかに東西ドイツの統合をイメージさせる歴史の証拠となるような雰囲気があり、PVでも見られる。更にPVを見るとルドルフ・シェンカーの姿が実にマイケル・シェンカーに似ててハッとするが、さすがにフライングV兄弟。本作はスコーピオンズのキャリアの中で記念碑的な一枚となり、黎明期からアメリカ進出期、その後90年代を見据えた節目の作品で、ひとつの完成形に相応しいアルバム。普通に聴いてて傑作と思える作品が素晴らしい。

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