Queen - The Miracle

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Queen - The Miracle (1989)
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 80年代でほぼ活動を満了したQueenが現代でも今そこにいるかのようにメディアに取り上げられ、普通にサウンドが流れる状況は想像すらしなかった。ところが今聴けるQueenの曲の大半は80年代ではなく70年代のクィーンの楽曲が多く、80年代に大ヒットを飛ばした作品群はベスト盤には入ってくるが、名曲と語られて愛される中にはさほど入らない。どうしても時代を反映したサウンドが織り込まれているから楽曲自体の素晴らしさよりもアレンジや音色の時代感の方が邪魔してしまうように思う。一方70年代のクイーンの楽曲はストレートにロックバンドの音だから今でも馴染みやすく時代のアレンジに左右されない強みがある。どちらもクィーンの残した素晴らしい遺産だが、何よりもこの時代に普通に残されているクラシック的扱いになっている点が素晴らしい。

 1989年リリースの「Miracle」。派手な時代から陰りが見えてきた80年代末期、ロックで言えばメタリカやニルヴァーナの登場がチラついた頃、到底バブリーなサウンドと派手な印象のロック貴族は追いやられ始めたが、当時は誰もその波に気づかないまま過ぎ去っていた。Queenの「Miracle」はその中でもフレディ・マーキュリーのメンバー内へのエイズ告白があったためか、アルバム全曲に影を落としているとは歌詞を熟読すれば良く分かるようだ。自分も後からその事実を知って歌詞を読み直したが、なるほど随分と達観した歌詞が多数織り込まれており、本作でフレディ・マーキュリーは最後の作品を意識していたようにも聞こえる。一方その事実を伏せながら幾つかのヒット曲を本アルバムからも放ち、「The Miracle」のユニークなPVを筆頭に「I Want It All」や「Breakthru」や「the Invisible Man」は随分とMTVを賑わせていた。とてもこの時点でフレディ・マーキュリーが消え去る人には思えなかったし、派手派手なPVの姿もまた新たな男臭さを出した出で立ちのように見えていた。

 一方のサウンド面はこれまでのクィーンの作風は発揮されているだろうが、聴いた限りではあまりにもダンサンブルなポップさにギターが鳴っているレベルで、斬新すぎるから聴かなかったか、どうしてもこのダンサンブルなデジタルチックなビートが好まなかったから聴かなかったか。今でもカッコ良いとは思えないデジタルビートのクィーンのサウンドは面白味に欠ける。ただ、フレディ・マーキュリーもいつも通りに目一杯歌い上げているし、ブライアン・メイのギターもソロはいつも通りトリッキーに飛び出してくる。シンセサイザーこそ使うようになったが、変わらない面もある。ただ、ドラムは完全にデジタル系でロジャーのドラムと言えども個性的とは思えず時代の潮流に呑まれている音。これもクィーンだと言ってしまえばそうだが、何回も聞き直すアルバムにはならなかった。ここで一旦クィーンは距離が空いた気がする作品。





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フレ
Posted byフレ

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