Mortal Love - All the Beauty

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Mortal Love - All the Beauty (2002)
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 以前フィメールゴシックメタル、通称嬢メタルを散々聴き漁っていた頃も思ったが、結局この路線のサウンドを出すバンドが山のように出て来てもひとつかふたつのバンドが残ればそれで間に合ってしまい、それぞれのバンドの個性や、特に嬢メタルと言われるだけあってボーカルの女性の個性や愛らしさや歌唱力が際立っていなければ何枚ものアルバムは不要になる。生み出す側はサウンドを進化させて新たな方向へ舵を切ってアルバムを出してリスナーを惹き込もうとするが、決して簡単ではない。シーンは数年程度は盛り上がったものの、いつしか沈静化してバンドも消え去り、アルバムをリリースしていてもさほど聴かれずに、もしくはワールドワイドにはリリースされないだけで、自国では中堅バンドにはなっているかもしれない。

 Mortal Loveは2002年にアルバム「All the Beauty」でシーンに登場し、Cat嬢のキュートな歌声が印象的なゴシックメタル調のサウンドで知られたノルウェーのバンド。知られたアルバムは3枚しかリリースされておらず、そこでバンドは新たなる音楽性を模索していたが、結局レーベル側との合意も得られないまま契約満了して沈黙。2010年には休眠宣言も出されているのでそこで解体。ところが2018年にボーカルのCat嬢=Catherine Nyland とドラムのPål Wasa Johansenは他のメンバーを誘って新たなバンド、Heart of Pandoraを結成して数曲のPVがYouTubeでも見られる。ここで驚くのは楽曲の創作は全てCatherine Nylandで、恐らくMortal Loveも大部分は彼女が書いていた曲だったと思われる。Heart of Pandoraで聴ける楽曲はほぼMortal Loveのサウンドと変わらない色彩と音色、当然彼女のボーカルも変わらないまま、年齢は気にしないで可愛らしい歌声が健在で実質Mortal Loveの4枚目に位置付けられる作品になるはず。

 本作「All the Beauty」はデビューアルバムながらゴシックメタルと言われる方向性はともかく、しっとりと聴かせる陰鬱系のサウンドに可愛らしくも小悪魔的なCat嬢の歌声が乗り、確実に天使とバックの悪魔的サウンドの対比が奏でられているが、暴虐なサウンドよりも可憐な歌声が勝っている珍しいパターン。難しいのはジャンルの中で個性が放てているサウンドまでには至らず、ストリングスを入れたりもしながら美の追求が紡がれているが、あと2歩足りないイメージ。それでも久々に聴けばじっくり聴けるから、クォリティは高く作品の深みもあるアルバム。結果的にはHeart of Pandoraへ引き継がれているので、一周りした今の時代はHeart of Pandoraを楽しみにするのも良いが、未だアルバムはリリースされていないようでシーンへの復帰は難しいか。







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フレ
Posted byフレ

Comments 2

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photofloyd(風呂井戸)  
ええ、そうなんですか

そうですか、全く知りませんでしたが「Heart of Pandora」ですか、いいお話拝見しました。・・・彼女はまだ四十歳代でしょうね(私からみれば若い若い!!)、ジャズだったら円熟期、まだまだ期待したいですね。
ノルウェーは音楽性も高いですから、なおさら期待します。ただ心配なのは、今やユーロもCD時代が終わっていることでしょうね・・・、私はCDアルバムとして聴きたいですので。

2021/07/16 (Fri) 21:48 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>photofloyd(風呂井戸) さん

ジャズではなくあのままなので変わらないですねぇ。
音楽メディアはホント、どうなる事やら…。

2021/07/25 (Sun) 20:01 | EDIT | REPLY |   

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