The Paul Butterfield Blues Band - East West (2013 Remastered)

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The Paul Butterfield Blues Band - East West (2013 Remastered) (1966)
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 60年代の黒人ブルースのシーンも目まぐるしく進化変化していたが、英国からはブルースに影響を受けた若者達が見よう見まねでブルース・ロックを奏で始め、アメリカでは本場シカゴの白人の若者がブルースを取り入れてシーンに登場してきた。何度この歴史を紐解いてもポール・バターフィールドとマイク・ブルームフィールドの両名は特異な志向に目覚めた若者だったと思う。少々気になってもこの時代に黒人のど真ん中のシーンに紛れ込み入り込むなど出来ないが、この両名はそんな偏見なしにクラブに出入りして目の前で大御所ブルースメンの技を盗み、セッションして自らを磨き上げ鍛えていた。もっともチェス・レコードの創始者兄弟も妙な白人だったので黒人の中に入り込んで信用を獲得してレコードを作っていたくらいだからおかしくはない。

 黒人のブルースメン達もエレクトリック・ギターを手にして新たなブルースを模索しつつ進化していた中、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドと名乗る連中の2枚目のアルバム「East West」は1966年にリリースされている。先の両名に加えてエルヴィン・ビショップもいるので妙な白人小僧と黒人の合体バンドでシカゴのシーンを席巻していた。恐るべしはこのセカンドアルバムの時点で既に彼ら自身もオーソドックスなブルースから発展逸脱した新たなブルーススタイルに取り組んでいる姿。基礎はブルースにありつつも、サイケデリック風味を感じさせる音階とアレンジに音色もありつつ、無国籍トーンのモード展開による「Work Song」や「East West」の大曲が彼らの発展性を物語っている。元々はポール・バターフィールドのハープとマイク・ブルームフィールドのギターがクローズアップされるバンドだったが、既にハープは要所に抑えられ、マイク・ブルームフィールドのギターも適時登場する程度に抑えられているが、恐らくは楽曲の作りによってのソロパートを分け合った結果の長さから、短めなプレイに聴こえるだけだろう。吹いたり弾いたりするパートでは目一杯そのアグレッシブなプレイを聴かせてくれるのは変わらないが、リスナーとしてはやや物足りなさを覚える。

 代わりに大作2曲では完成度の高い白熱のバトルをかっちりとキメてくれるので素晴らしい。この辺りの完成度の高さは英国ロック連中とは異なり、圧倒的なテクニックとアンサンブルが前に出ており、さらにプロデューサー達のこだわりのセンスやレコードに掛ける商品レベルの高さが格段の違いを発揮している。この部分のアメリカの作り込みは凄い。ミュージシャン側も当然そのレベルを要求されるので実力なしには出来ないが、当然ながら圧巻のプレイをそのレベルを超えて聴かせてくれるので文句なし。ブルースバンドのアドリブを聴いているよりもジャズプレイを聴いている感覚に陥るレベルで、黒人ブルースのセッションではここまでの完成度の高さはあまり聴かれなかった。そこがこの両名の若者のエネルギーも手伝って素晴らしい演奏が聴ける。鍵盤のマーク・ナフタリンもさすがのセッションに文句なしに入り込みジャズばりのスタイルをロックで知られる楽器群で演奏している、本当のジャズブルースロックセッションバンドのアルバム。

 一応リマスタリングされているCDもリリースされているので、今は音がかなりクリアになって聴けるが、当時からかなり良好な録音だったのでそこまで差がないように聴こえるのは気のせいか。ボーナストラックもなくデラックス盤も出て来ないので、多数タイトルが纏められたボックスセットでも入手するとThe Paul Butterfield Blues Bandの歴史的音楽遷移が聴けるので良いだろう。





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フレ
Posted byフレ

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