Willie Dixon - Willie's Blues

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Willie Dixon - Willie's Blues (1960)
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 シカゴはジャズの歴史が深いが、同時にブルースの歴史も深く、50年代のジャズやブルースを聴くとどちらとも言い難い心地良くスウィングしたサウンドが耳に入ってくる。ウィリー・ディクソンは50年代から活躍を始めたブルースのソングライターだが、最初期はベースを弾いて歌っていた。ピアノのメンフィス・スリムを相棒にして連名でアルバム「Willie's Blues」をリリースしている。それ以前からシングルを何枚もリリースしているので、最初のアルバムとなるがシングルヒット集ではなくオリジナル書き下ろしアルバムのようだ。発売は1960年なのでかなり古い。それでもエルヴィスは出ていた時代なので既にブルースも知られつつあった頃だが、英国ブルース・ロック連中やビートルズはまだ出て来ていない、彼らがひたすら学生時代でこれらのアルバムを聴き漁っていた時代の作品だ。

 「Willie's Blues」を聴いて最初に思うのはブルースもジャズも変わらないとの印象で、メンフィス・スリムのピアノが明らかにジャズピアノでしかないし、ウィリー・ディクソンのベースもウッドベースのジャズランニングプレイだから、正しくジャズセッションが繰り広げられている様相。3コードスタイルではあるがジャズ的3コードスタイルなので単純なコードを用いた進行だけでない辺りもジャズスタイルそのままを踏襲している。ところがそこにウィリー・ディクソン自らのボーカルにウォリー・リチャードソンの強烈なギタープレイが炸裂するとブルースに変貌する。ブルースの歴史で書けばロバジョンが30年代に録音を残しているので、以降戦前ブルースの大御所達が幾つもブルースをプレイしていたから決して新しくも珍しくもない時代でマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフのシンプルなスタイルよりはもっとこなれた音楽的面が大きいが、そこを上手く流用してジャズともブルースとも言えないアレンジスタイルで作り出した珍しい作風。ブルース・ロックにアレンジすれば容易に出来上がる気がするが、オリジナルのこの雰囲気とサウンドには敵わないかもしれない程に渋い音が収録されている。

 幾つかの曲は後のブルース定番曲へと変貌しているようで、聞き覚えのあるメロディやアレンジも聴ける。たかがブルースの3コードスタイルでそこまで多様なサウンドも出来ない面もあるが、本作は明らかに以降ではあまり聴かれないジャズ・ブルーススタイルの筆頭格。この頃の作品を漁れば似た類も出てくるだろうが、ロック好きな大人が聴くには丁度良いジャズ感とブルース感。シカゴブルースのソングライターとして以降チェスに入り浸った大御所だが、その才能は1960年以前に堂々と発揮していた証の一枚。それが今の時代でも普通に聴ける歴史的遺物の素晴らしさ。



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フレ
Posted byフレ

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