The Chieftains - Long Black Veil
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The Chieftains - Long Black Veil (1995)

The Chieftainsの名はいつ何処で知ったのか、ロックにどっぷりと浸かってから英国、アイルランドの音色を意識して漁るようになり、トラッドフォークの世界からケルトの世界を垣間見るようになり、その頃にチーフタンズと出会っている気がする。恐らくロックミュージシャンが参加した時期のアルバムで、どのアルバムかの記憶は定かでないが、90年代には何作かそういったアルバムがリリースされているので、その中のいずれかと思う。その頃は聴いても特にカッコ良いとも思わなかったし、どうしてこういうバンドにロックミュージシャンが参加するのか理解もしていなかったし、分からなかった。アイルランド民謡とロックを融合させた特異なバンドの認識もなく、アイルランド民族音楽を奏でるバンドとしか思ってなかったからだ。若気の至りは数々の勿体ない瞬間を逃しているがこの時もそうかもしれない。
1995年にリリースされたチーフタンズのロックゲスト陣多数を迎えた傑作、良し悪しはともかく市場では商品的に目立った作品「Long Black Veil」。だからと言ってチーフタンズがロックに洗脳されているものでもなく、どちらかと言えばロックシンガー達がアイルランド民謡に染められた作品で、チーフタンズ主体の音楽でしかないのは当然。ところがどういう理由か、参加しているゲスト陣の豪華さが凄い。冒頭からスティングがチーフタンズに混じってそのままの声で歌っているが、ここまでハマるかくらいにはハマっている。それはスティングだけでなく、次のミック・ジャガーも同じくだ。もっともミック・ジャガーの場合はあの歌声なのでハマり切れてはいないが、メロディや歌い回しは完全にアイルランド民謡をなぞった素晴らしき異色風味。そしてシニード・オコナーは何ら違和感なく美しい歌声でケルト民謡を歌い上げ、本人のポリシーもしっかりと主張されているのか、力強く折れない歌声が真っ直ぐに聴かれる味わい深い一曲。本アルバム中で最も尖った曲かもしれない。またアイルランド人の伝説的シンガー、ヴァン・モリソンも合い通じるレベル感での主張を訴え歌っている姿も心に響く。素晴らしいシンガー達はこういう裸の楽曲を生々しく歌うとその真の素晴らしさが響き渡ってくる。そして今度は演奏面へのゲスト人の参加で、マーク・ノップラーの器用なスタイルがスタンダードなケルト風味な世界で、その優しさを流れに任せて表面に出した魅力を聴かせ、更にアメリカからライ・クーダーが乾いた空気をアイルランドの島に持ち込んだ異質感もユニークな音色を聴かせてくれる。元々のルーツが同じところにあるとは言え、こうまでミックスされて望郷の彼方を紡がれるとは思わなかった。素晴らしき融合と味わいぶりの傑作。
クレジット上だけの話で同時に同じ場所にも居なかっただろうが、ミック・ジャガーが参加したアルバムに、今度はマリアンヌ・フェイスフルが参加している素晴らしく歴史的な作品にもなっている。そのマリアンヌ・フェイスフルの歌声はアイルランドの風景には異質なしゃがれ始めた声で、その分重みも深みも感じる静かな作品で、心に染み入る。彼女の人生の重さがそのまま表れ出ている姿が、そしてそれを引き出したチーフタンズの音楽的深さが果てしなく素晴らしい。その深みから更に真っ直ぐ突き進むように美しき力強い歌声のシニード・オコナーが再度登場し、寒さを強調してくれる美しさ。ここまで真っ直ぐで嘘のない歌声を聴けるシーンも多くない。インストを挟んで有名な曲ではガラリと変わったベテラン且つ仰々しい歌声のトム・ジョーンズが全てをぶち壊して聴かせてくれる。ここまで歌が歌えてしまう人が出てくるとどういう叙情性や繊細さがあってもバックの演奏が不要とばかりに前に出てしまう存在感。凄すぎる。そして最後はチーフタンズに加えてのThe Rolling Stonesがジョイントしたスタイルで共演している驚異。ストーンズの面々がフィドルやマンドリン、バンジョーと一緒に演奏している姿を想像出来るだろうか。そんな奇跡の曲が見事に組み合わせられて演奏されている。それぞれの持ち場は持ち場で演奏され、音の違いがあまりにも顕著に出てくるのも味として素晴らしいギタープレイも聴けるストーンズの新境地かもしれない作風。見事。
アイリッシュに興味はあってロックも好きなら一度聴いてみてほしいアルバム。一曲づつでも丁寧に聴いていくとゲスト陣の素晴らしさを実感すると同時にチーフタンズの器用な作風にも感嘆するだろう。単純にケルト、アイリッシュと言ってもここまで多岐に渡る作風があり、またボーカリストに合わせて曲を変化させていく姿も素晴らしい。全く大人になればなるほどに深くなるこの世界。

The Chieftainsの名はいつ何処で知ったのか、ロックにどっぷりと浸かってから英国、アイルランドの音色を意識して漁るようになり、トラッドフォークの世界からケルトの世界を垣間見るようになり、その頃にチーフタンズと出会っている気がする。恐らくロックミュージシャンが参加した時期のアルバムで、どのアルバムかの記憶は定かでないが、90年代には何作かそういったアルバムがリリースされているので、その中のいずれかと思う。その頃は聴いても特にカッコ良いとも思わなかったし、どうしてこういうバンドにロックミュージシャンが参加するのか理解もしていなかったし、分からなかった。アイルランド民謡とロックを融合させた特異なバンドの認識もなく、アイルランド民族音楽を奏でるバンドとしか思ってなかったからだ。若気の至りは数々の勿体ない瞬間を逃しているがこの時もそうかもしれない。
1995年にリリースされたチーフタンズのロックゲスト陣多数を迎えた傑作、良し悪しはともかく市場では商品的に目立った作品「Long Black Veil」。だからと言ってチーフタンズがロックに洗脳されているものでもなく、どちらかと言えばロックシンガー達がアイルランド民謡に染められた作品で、チーフタンズ主体の音楽でしかないのは当然。ところがどういう理由か、参加しているゲスト陣の豪華さが凄い。冒頭からスティングがチーフタンズに混じってそのままの声で歌っているが、ここまでハマるかくらいにはハマっている。それはスティングだけでなく、次のミック・ジャガーも同じくだ。もっともミック・ジャガーの場合はあの歌声なのでハマり切れてはいないが、メロディや歌い回しは完全にアイルランド民謡をなぞった素晴らしき異色風味。そしてシニード・オコナーは何ら違和感なく美しい歌声でケルト民謡を歌い上げ、本人のポリシーもしっかりと主張されているのか、力強く折れない歌声が真っ直ぐに聴かれる味わい深い一曲。本アルバム中で最も尖った曲かもしれない。またアイルランド人の伝説的シンガー、ヴァン・モリソンも合い通じるレベル感での主張を訴え歌っている姿も心に響く。素晴らしいシンガー達はこういう裸の楽曲を生々しく歌うとその真の素晴らしさが響き渡ってくる。そして今度は演奏面へのゲスト人の参加で、マーク・ノップラーの器用なスタイルがスタンダードなケルト風味な世界で、その優しさを流れに任せて表面に出した魅力を聴かせ、更にアメリカからライ・クーダーが乾いた空気をアイルランドの島に持ち込んだ異質感もユニークな音色を聴かせてくれる。元々のルーツが同じところにあるとは言え、こうまでミックスされて望郷の彼方を紡がれるとは思わなかった。素晴らしき融合と味わいぶりの傑作。
クレジット上だけの話で同時に同じ場所にも居なかっただろうが、ミック・ジャガーが参加したアルバムに、今度はマリアンヌ・フェイスフルが参加している素晴らしく歴史的な作品にもなっている。そのマリアンヌ・フェイスフルの歌声はアイルランドの風景には異質なしゃがれ始めた声で、その分重みも深みも感じる静かな作品で、心に染み入る。彼女の人生の重さがそのまま表れ出ている姿が、そしてそれを引き出したチーフタンズの音楽的深さが果てしなく素晴らしい。その深みから更に真っ直ぐ突き進むように美しき力強い歌声のシニード・オコナーが再度登場し、寒さを強調してくれる美しさ。ここまで真っ直ぐで嘘のない歌声を聴けるシーンも多くない。インストを挟んで有名な曲ではガラリと変わったベテラン且つ仰々しい歌声のトム・ジョーンズが全てをぶち壊して聴かせてくれる。ここまで歌が歌えてしまう人が出てくるとどういう叙情性や繊細さがあってもバックの演奏が不要とばかりに前に出てしまう存在感。凄すぎる。そして最後はチーフタンズに加えてのThe Rolling Stonesがジョイントしたスタイルで共演している驚異。ストーンズの面々がフィドルやマンドリン、バンジョーと一緒に演奏している姿を想像出来るだろうか。そんな奇跡の曲が見事に組み合わせられて演奏されている。それぞれの持ち場は持ち場で演奏され、音の違いがあまりにも顕著に出てくるのも味として素晴らしいギタープレイも聴けるストーンズの新境地かもしれない作風。見事。
アイリッシュに興味はあってロックも好きなら一度聴いてみてほしいアルバム。一曲づつでも丁寧に聴いていくとゲスト陣の素晴らしさを実感すると同時にチーフタンズの器用な作風にも感嘆するだろう。単純にケルト、アイリッシュと言ってもここまで多岐に渡る作風があり、またボーカリストに合わせて曲を変化させていく姿も素晴らしい。全く大人になればなるほどに深くなるこの世界。
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