Roger Daltrey - Rocks in Head

Roger Daltrey - Rocks in Head (1992)


　往年のロックバンドのボーカリストたちの80年代から90年代は随分と苦境の時代だったように思える。そもそもが音楽の指向性を持っていればシーンで戸惑う事もなかっただろうが、バンドのサウンドとは異なる路線を目指したくなる傾向から時代に迎合した音作りが中心になるため、個性的なポリシーを貫くまで進めないパターンが多い。ロバート・プラント然り、フレディ・マーキュリー然り、そしてロジャー・ダルトリーも似たような傾向を辿っている。もっとも本作の前にはThe Chieftainsとのセッションアルバム「The Irish Evening」をリリースしているので、時代に呑まれての作品とは異なっていたが。

　同じ1992年のソロアルバム8枚目となる「Rocks in Head」は以前から髪の長さの確認用としてしか存在していないアルバムの認識で、そういえば当時から入手して聴いたハズだが、中の音の記憶がまるで抜け落ちていたアルバム。概ね普通過ぎるくらいに普通の音でしかないとは思うが、今回久々に取り組んでみれば、全く時代にも取り残されていたと思えるような作品だった。今聴けばロジャー・ダルトリーの歌声もまだ伸び伸びと艷やかでもあり、曲の良し悪しはともかく、ボーカリスト的には気持ち良く歌い上げている作品ばかりなので本人は楽しめたと思う。聴いている側に周るとロジャー・ダルトリーの歌声に安心はするものの、どうしても音楽性やロック目線で聴くので時代を反映したデジタル的サウンドと綺羅びやかな音色にはうんざりするし、今では古臭さしか感じられない。ハードロックでもなくポップスでもなく、確かにロックのアルバムでしかないが、何の個性も見られないサウンドでロジャー・ダルトリーの歌声だけが救い。それでこそソロアルバムだから、多くを求めてはいけない。

　売って稼ぐ以外に名のあるシンガーがソロアルバムをリリースする必要があるか、と問いかけられている気がする程に一般的なアルバム。自分が何をソロアルバムに求めているのか、どうしても誰かのソロアルバムとなれば何かを期待してしまうが、それは何か、白熱の歌声とロック。類まれなる才能を生かしての作品。本作で聴ける歌声は相変わらず迫力とロジャー・ダルトリーらしい力強い歌声で裏切られないが、楽曲とは切り離して聴いていくべき作品。やはり髪の長さ確認用でしかない。

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