Brian May - Another World

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Brian May - Another World (1998)
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 今や国民的人気を誇るQueenはリアルタイム時以上に世代を超えて知られ、知名度を浸透させているが、それは確実にブライアン・メイとロジャー・テイラーのQueenに対する執念や広報活動、バンド継続活動の賜物で、フレディ没後30年近くをQueenの名前をフレディの色を消す事なく広めて昇華させてきたからだ。狙ってそこまで出来たとは思えないが、見事にフレディのQueenをリスペクトしつつ現代にQueenの楽曲を届け続けている。それでもフレディ亡き後しばらくはどのように仕事を進めていくかはブライアン・メイもロジャー・テイラーも紆余曲折あったようで、それぞれソロ活動も見られ、特にブライアン・メイは元々ハードロックからメタル系のギタープレイも好んでいたから、その系統のメンバーとセッションを重ね、またアルバムもリリースしている。

 1998年にリリースされたBrian May名義のアルバム「Another World」。別の側面ではコージー・パウエル生前最後のレコーディングアルバムの遺作としても知られているが、この頃ブライアン・メイとコージー・パウエルとニール・マーレイで共にバンド活動らしきプランを練っていたと何かで読んだ事があるが、その一角が本作かもしれない。ブライアン・メイの音楽の指向性はQueen時代から明らかにストレートなハードロック系にあり、ソロになればフレディの美的感覚が入らない、シンプルなハードロックが仕上がるとは想定通りで、本作も想像通りの作風。しかもブライアン・メイがボーカルを担っているので、やりたいようにアルバムを作っているのは当然ながら、案外カッコ良い作品となっているのは驚きでもある。Queenと比べるものでもないが、確かにQueenからフレディの色味を消すとこういう音になる感じで、軽やかでコーラスワークも詰め込まれ、ギタープレイも多重オーケストレーション的な練られ具合。楽曲もソリッドで勢いある様相が多く、古き良きR&Rとはやや趣の異なるこの時代に通じるスタイルだろう。バックにはニール・マーレイもコージー・パウエルと共にセッションしており、「The Guv'nor」ではゲストにジェフ・ベックを迎えてのプレイを入れているので、何年ぶりかでジェフ・ベック・グループの二人が一緒に演奏している音が聴ける。コージー・パウエルはほとんどの曲の録音を終えていたようで、そこまで派手なドラミングではないが、聴けば一発で分かるプレイぶりは流石。もうひとりのユニークなゲストはイアン・ハンター。Mott The Hoopleの名曲「All The Way From Memphis」をブライアン・メイがハードロック調でカバーして、そのボーカルを担っているので、かなりカッコ良さが聴けるバージョン。Queenの最初期はMott The Hoopleの前座でツアーを周った経緯もあり、その頃からの縁だろうが、今では人気が逆転している。それでも本作の収録は恩返しの意味合いも強かったか。

 アルバムを聴いての感想は、ギタリストのソロアルバム的に聴いても満足出来る仕上がりで、一方バンド、ソロ名義アルバムと聴いても楽曲の凝り具合やバリエーションの豊富さからしても相当な出来映えと思う。Queenと質感は異なるが、あの世界と近い音世界は出来上がっており、特に末期Queenの、フレディが曲作りに参加出来なかった頃の作風は、そのままブライアン・メイの作品に近く、本作もその色味が濃く出ているから延長線的に聴ける。ただ、アルバムに収録されている音処理が時代もあるからチープに聴こえてしまう点はマイナスだが、それもQueen的と言えばそうか。



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フレ
Posted byフレ

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