Black Sabbath featuring Tony Iommi - Seventh Star

0 Comments
Black Sabbath featuring Tony Iommi - Seventh Star (1986)
B0002XMF5S

 ギタリストのソロアルバムでボーカルを頼まれて歌うと、聴いている側は誰のアルバムか分からなくなるくらい、また何を聴いているか不思議になる時もあり、そこで聴けるサウンドがどれだけ素晴らしくても、どこかすっきりとしないので名盤と褒め称えられない場合もある。セッションボーカリストの概念がまだ乏しい時代は特にその不思議感が漂い、ゲイリー・ムーアのアルバムでもそんな事を思った気がする。イングヴェイくらいになるとボーカリストが不要だろうとすら思えるギタープレイの目立ちぶりだが、いっその事インストアルバムにしてくれても良かろうと、その後の時代はヴァイを筆頭にそう進んだ気がする。もっともジェフ・ベックが早くからそのスタンスは打ち出していたが。

 Black Sabbath featuring Tony Iommi名義でリリースされた1986年のアルバム「Seventh Star」に於けるグレン・ヒューズのボーカルの素晴らしさは、当然ながらブラック・サバスを聴いている気にはならないし、音からしてもグレン・ヒューズのソロアルバムを聴いている感じもしない程ヘヴィメタリック。知られているがトニー・アイオミのソロアルバムが販売する際に名義変更されただけのアルバムなので、トニー・アイオミの音世界によるアルバムと聴けば良い。ただ、それはブラック・サバスで聴かれる音と同義だと思っていたので、本作で聴けるような疾走感溢れるカッコ良い楽曲群とは思いもしないスタンス。それを意外なボーカリストのグレン・ヒューズが歌っているから完全に別モノ、ブラック・サバスでもなければトニー・アイオミのイメージでもなく、グレン・ヒューズでもないサウンドだから悩ましい。そのヘンが素直に音だけを聴いて認められるリスナーなら良いが、多くは何かに縛られた概念の中で聴いているので不思議感が募るだけ。この概念をぶっ飛ばせば実にカッコ良く新たなる世界に飛び出してきたベテラン二人を中心としたバンドサウンドとして捉えられるが、そうも進まない悩ましさ。疾走感だけでなくミドルテンポの楽曲も数多く収録されているので、ブラック・サバス的リズムとも言えるが、恐ろしくも異なるのはやはりグレン・ヒューズの歌声で、ここまでブラック・サバスの名義に似つかわしくないボーカルもいない。まだロブ・ハルフォードの方が分かる。

 そんな意外性が売りにもなりつつ、慣れてしまえば出てくるサウンドの面白さ、バリエーションに富んだトニー・アイオミのセンスとスタイルが懐の深さを聴かせてくれ、一方のグレン・ヒューズも深みのある歌声を曲ごとに切り替えて聴かせてくれる素晴らしきセッション。アルバムの音色は時代を感じさせてしまうので、今や古臭く聴こえてしまうがかなり良作に聴こえるのはそこまでブラック・サバスに想い入れを溜め込んでいないからか。この歌だったら以降のセッションには引っ張りだこにもなるだろう。この不当な扱いにより、グレン・ヒューズは不快感を示して離脱し、歴史には妙な名の残し方をしつつも決して悪くないセッションの記録。



関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply