Paice Ashton Lord - Malice in Wonderland

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Paice Ashton Lord - Malice in Wonderland (1977)
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 イアン・ペイスとジョン・ロードの名が上がれば自ずとDeep Purpleに繋がるが、1970年代後半頃はそのDeep Purpleも御家騒動が激しくバンドは火の車状態だったようで、リッチーをきっかけに続々とバンドメンバーが離脱し始めていた。イアン・ギランまでもが離脱したから普通はバンド崩壊となるが、そこをデヴィッド・カヴァデールが埋めてしまったからDeep Purpleは器として機能し始めた。優秀なミュージシャンがいれば成り立つバンド、音楽演奏集団への変貌で今に至るまでその路線で続いている珍しい存在。もっとも結果論がそうなっただけで、当時そこまで予見して向かったとは思えない。ましてやイアン・ペイスやジョン・ロードが離脱すればバンドは成り立たなくなるのも至極当然。

 その二人がDeep Purple離脱後も共にプレイしようと目論み、ボーカルに立てたのはDeep Purple周辺の仲間にいたTony Ashton。キャリアは十分でボーカルと鍵盤奏者でファミリーやロジャー・グローバーとも絡み、ジョン・ロードのソロ作でも絡み合っている仲だったので自然にメンバーが纏まってきた。その後バーニー・マーズデンがオーディションで加入してベースには英国B級バンドを散々渡り歩いていたポール・マルティネスが配されて出来上がり。ちなみにポール・マルティネスはこの後ロバート・プラントとの仕事に参加したため、あのライブエイドのZeppelin再結成劇の裏方でベースを弾いている。メンバーの来歴は十分に大英帝国ロックを奏でる素質ありで、楽曲はバーニー・マーズデンも当初から提供し、またイアン・ペイスやポール・マルティネスも提供しているので民主主義的に成り立ったバンドと思われた。ところが出てきた音は冒頭の「Ghost Story」こそバーニー・マーズデンの作風らしく渋みのあるロックだったが、それでもやや不思議な感触を持っていた。その不思議感はその後アルバム全てを占めている当時流行していたファンクネスソウルリズム感の表れで、ロックのビートとはまるで異なるタイトなソウルスタイル。

 1977年リリースの「Malice in Wonderland」ではイアン・ペイスのドラムがこういうリズムと曲で叩かれるとは想像もしなかったが、重くてタイトでさすがの力強さを感じる。それでもやはりロック的ドラムが嬉しい。一方のバーニー・マーズデンもこのリズムでギターを弾くがそこは器用なテクニシャンならではのプレイを感じつつも、幾つかはギターソロがあのまま鳴らされるいぶし銀プレイにニヤリ。トニー・アシュトンのボーカルスタイルはさほど特筆すべき面も見当たらず、馴染んでいるようにも聴こえるし、浮いている気もするが他には類を見ないバンドのサウンドなので判断つかず。曲調は大雑把な言い方をすればエアロスミスの「Walk This Way」の拡大解釈バージョン的なサウンドが繰り広げられている感覚。当時としてはユニークな試みのサウンドで、他のバンドのアプローチとはまた異なるスタンスで独自性は高かったが、如何せんこれ以上でもこれ以下でもなかったためかこの年ライブ活動やBBC出演までも行いながら崩壊した幻のプロジェクト。アルバム一枚残されていただけでも有り難いセッションとなるが、かなりレベルの高い作品なので一度聴いておくと彼らのミュージシャンシップも理解出来そうだ。





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フレ
Posted byフレ

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