Riverside - Voices In My Head

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Riverside - Voices In My Head (2005)
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 King Crimsonの破壊性とPink Floydの空間性を併せ持って一つの世界を創り上げたポーランドの雄、Riverside。多数のプログレッシブ・ロックバンドを聴いているが、70年代以外で自分が何度も聴いて気に入っているプログレッシブ・ロックバンドのひとつに挙がるRiverside。それはひとつにはロジャー・ウォーターズに通じるポリシーと曲げない信念だ。他には作風や音色やバンドの雰囲気や曲も挙げられるが、音を聴いているだけなのにリスナーに通じさせてしまう、本来は見えないポリシーやスタンスが素晴らしい。恐らく聴いてその姿を実感しているだけとは思うし、単に好みの音を出してくれるバンドだからこそその真髄を掴みやすいかもしれないが、数多くのポーランド他の国のバンドを含めても頼もしい立ち位置とサウンドを出すバンドと思う。

 Riversideのアルバムデヴューは2003年、その後アルバムをリリースするまでの間に出来上がった曲も含めてEPでリリースしており、今回は2005年前半にリリースされたEP「Voices In My Head」を聴いているが、Riversideは今でもこれらのEPを纏め上げた編集盤をリリースしていないので、結果的にはEP全てを集める必要が生じるか、今の時代ならサブスクにあれば聴けるか。自分は常に持っておきたいバンドなのでライブラリに鎮座しているが、アルバムジャケットを並べるとどの作品も妥協なくセンス良いアートが並び、そのこだわりもファン的には好ましいスタンス。

 「Voices In My Head」は静かで風景音的な「Us」から始められるが、美しきシンセサイザーをバックに爪弾かれるギターの音色で既にリスナーを圧倒してくれる。ソフトで優しく歌われ、早くもRiversideのムードに誘われる心地良さ。間髪入れずに今度は生のピアノで美しい序章が始まる「Acronym Love」は、先程までのベールが晴れたかのように現実味を帯びたはっきりとした歌声が呼び覚ましてくれる憂いあるメロディの素晴らしい作品。Riverside得意のゆったりとしたリズムに乗る空間を円やかに彩るエフェクトたっぷりのギターサウンドがメロディを追い掛け、何の変哲もないフレーズが楽曲の骨子とばかりに鳴り響きドラマを演出する。ここで聴けるギタープレイはプログレッシブ・ロックよりもボウイの作品で聴かれるような使われ方とも思え、どこまでも自身の深さに取り込むミュージシャン気質にも気づく。楽曲は終盤ハードに盛り上がりを見せて気分を高揚させつつ静かに終焉を迎える。そのエンディングからやや曲調は一転し、エレクトリックの要素すらも交えた「Dna Ts. Redum Or F. Raf」へ繋がる。出来上がった作品を聴いて珍しさを書くのは簡単だが、どうしたらこういった組み合わせとアレンジ、楽曲の融合と進化が図られて創り上げられるかが真のセンスの高さ、そしてミュージシャンの素晴らしさ。エレクトリックのスタンスを全編に這わせながらRiversideらしいギターやバンドの音色とプレイを同調させてボーカルスタイルすらもそこに追従している。素晴らしいのはそれでいながらもRiversideらしさが圧倒的に強く出ている点。真にプログレッシブなスタンスをこういった曲のアレンジにも聴ける。7分強の大作ながらリズムの変更もなく淡々とエレクトリックを底辺に持たせたままウワモノをRiversideの味付けで進化させていく凄さ。「The Time I Was Daydreaming」ではアコギと空気感漂う鍵盤から始まり、先と同様にエレクトリック路線との融合を果たして、よりも既にRiversideの一部にエレクトリック路線は組み込まれていると聴いた方が早そうだ。手っ取り早く書けばピンク・フロイドの雰囲気だけを再現するのにエレクトリックサウンドを上手く使っている話。「Stuck Between」でも同様の路線は描かれており、先日も聴いたDavid Bowieの「Hours...」の雰囲気を感じる点に気づいた。その意味でBowieは本作の6年前には同じサウンドを創り上げていたが、Riversideはその間に更にアレンジや融合を更に個性的に創り上げた期間となる。本曲は歌のメロディのアンサンブルの多様さに挑戦した色合いにも聴こえる佳作。

 「I Believe」はファーストアルバム「Out of Myself」にアコースティック調で収録されている曲ながらここでは通常のRiversideのバンドアレンジが施されたスタイルで演奏されている。普通に聴いていると到底ライブとは思えない安定感の高い演奏で、アレンジもこれまでの作風からするとさほど違和感なく馴染むRiverside節がたっぷりと付けられた美しく素晴らしいプレイ。アルバム収録時は楽曲レベルの高さよりもアルバムを通して聴いた時の似たような感覚を避けるためにアコースティック風味アレンジを施したと思われる。「Loose Heart」もアルバム収録時のくっきりとした印象よりも本作収録曲と同じく流暢に流れる風味に仕上げられている節もあり、Riversideがこの頃向いていた方向はこうして出来上がっていったように感じる。最後の「Out Of Myself」は本作を締めるに相応しい強烈にインパクトを放つロックな曲で力強くリスナーを惹き付ける。更にライブバージョンらしくバンドの一体感やパワフルさが出ているので頼もしい。

 EPながらも充実した楽曲群とライブバージョンながらも記録が残される価値の高い演奏が詰め込まれた作品。この頃はまだそこまでメジャーなバンドでもなかったと思われるが、実験精神に溢れプログレッシブ・ロックを見据え、あくまでもロックのスタンスも自然に打ち出された骨のあるバンドの姿が素晴らしい。





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フレ
Posted byフレ

Comments 2

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photofloyd(風呂井戸)  

いやいや、そうでしたか・・・
Riversideはおろそかに出来ない(笑い)バンドですね。
ミニアルパム「Memories in My Head」は持ち合わせているのですが・・・、こちらは、??、早速振り返って聴いてみます。

2021/06/03 (Thu) 10:11 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>photofloyd(風呂井戸) さん

そうなんですよ、結構EP出てて、チマチマと聴くとまたハマって(笑)。

2021/06/06 (Sun) 00:33 | EDIT | REPLY |   

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