Believe - Yesterday Is a Friend

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Believe - Yesterday Is a Friend (2008)
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 プログレッシブ・ロックに馴染むバイオリンはお淑やかなスタイルか、はたまたエキセントリックな弾きまくりの音色か、思えば幾つかのバンドやアルバムのバイオリンプレイが記憶を駆け巡るが、ポーランド出自のBelieveに属したSatomi嬢のバイオリンプレイは過去の聴いたバンドやアルバムのいずれとも異なる独特の風味を持ち込んだ味わいにも聴こえる。一聴するとアクセント的にバイオリンが機能しつつも裏メロ的にもソロプレイが鳴り響き、当然ながらバイオリンソロプレイではソロイストとしての音色が鳴るが、決してエキセントリックな弾き方ではなく哀愁漂う音色を大事にした旋律を曲に合わせて鳴らし、クラシックともまた異なる融合を果たした演奏に聞こえてくる。プログレッシブ・ロックに似つかわしいバイオリンへの拘りよりも自らの感性をロックに持ち込み、楽曲の風味に合わせていくと自然に流れ出てくるような印象。ただ、相当に練られて考えて創り込まれたセンスを味わえるし、ポーランドのお国柄的憂い面も存分に混ぜ合わされている意外な所でのインパクトがバンドの個性となっている。

 ポーランドからBelieveの2008年リリース2枚目のアルバム「Yesterday Is a Friend」。クリムゾン風味の強いプログレッシブ・ロックながらバイオリンが全面にフューチャーされたやや変わり者のスタイル。バンド単位のプレイではロングトーンを駆使しハードに破壊するギタープレイもあり、変拍子とドラマティックな楽曲展開も紡がれる個性派。フルートやピアノも登場するので先のバイオリンと合わせて攻撃性だけでなくソフトでメロウなムードも融合し、キャッチーに聴かれる歌メロも聴きやすさを増長している陰鬱耽美的作風が強いバンド。ミレック・ギル主導のバンド云々は自分もそこまで詳しく識別して聴いていないので詳しくも書けないが、90年代のSatelliteからCollage、そしてBelieveと流れてくる系譜でセンスを磨いてシーンに堂々と魅せつけて君臨している一人だ。アルバムはどの曲も長尺作品が並び、先述したように全編バイオリンがインパクトを放って楽曲を彩っている。クリムゾンのバイオリンの使い方に酷似するが、更にクリムゾンではメロトロンやギターが担っていたパートまでもバイオリンで奏でているから幅広くクローズアップしている。変拍子もさらりと曲中に入れてアレンジされているので歌メロの良さと流れるから違和感なく馴染んでいく器用さ。

 クリムゾン風味のアルバムながら、硬質さはさほど感じられずアコースティックギターやクラシカル楽器の生音を用いているからクールにソフトに耳馴染む。一方ではテンション高い楽曲への集中力がリスナー側にも求められ、音の柔らかさと相反しての緊張感が不思議な感触。ポーランドらしい鬱感は漂うものの、どこか光明の見える美しき闇への招待と言ったところか。8分程の大作「What They Want (Is My Life)」はバンドの方向性志向性、できる姿を存分に集約した一曲にも聴こえるが、良くも悪くもこの曲に全てが詰め込まれている。冒頭曲「Time」でもキャッチーなスタイルがやや顕著に表れているものの、バイオリンの使い方にアグレッシブなギタープレイが聴けて惹き込まれる。「You & Me」はクラシカルとジャズピアノの融合にバラードボーカルを追加したような不思議な印象を受け、一方ではバンドならではの作品、即ちベースやギターソロが美しく流れる異色作。中盤の大作「Memories」はかなりドラマティックな楽曲展開を進め、全く後期クリムゾン的エッセンスを吐き出している中、異色な音色はバイオリンの使い方。何度も聴けば聴くほどに耳に馴染み、クリムゾンを忘れて、一歩手前のソフト感が心地良くなりバイオリンに耳が向く。その頃にはBelieveの魅力に落ちているだろう。全く素晴らしいアルバム。







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フレ
Posted byフレ

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