Millenium - 44 Minutes

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Millenium - 44 Minutes (2017)
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 70年代を漁っているだけでは知り得なかった音楽に出会いながら、どこか空気感や雰囲気や作風が70年代のロック黄金期を彷彿させるロックが近年出没しており、新たなる試みか古き良きを再演している姿かオールドリスナーを楽しませ悩ませるようになっている。音楽なので素直に出てきた音を楽しみ、自分の好みであればとことんまで聴く姿が正しく何も考える必要もないが、既に長い時間ロックを聴いているリスナー達からすれば、どうしてもその姿を深掘りしたり聞き覚えのある何処かを見つけ出したくなる時もある。ところがどれだけ何々風と判明しても決してそれだけではないのでまたその深みの探求のために聴く。それだけの価値がある音楽に出会えたら幸せと思う。

 ポーランドのプログレッシブ・ロックの雄にもなっているMilleniumの2017年作「44 Minutes」はこれまで全く聴いた事のないロックアルバムでありながら到底21世紀に創られたアルバムとは思えない程に70年代の空気感が漂っている不思議。その作風はMilleniumのアルバム全般に漂っているので、今作だけの話ではないが過去作含めて誰も成し得ていない世界をサラリと創り上げてシーンにリリースしていた姿はもっと知られて然るべき面が大きい。アルバム冒頭から流して驚くなかれとばかりにサックスの軽やかなメロディーがアルバム全体を覆い、大抵の曲の主役に位置した旋律を堂々とど真ん中で奏でている。かと思えばどこまでも伸びやかで美しいメロディアスな音色が空間系エフェクトと共に広がるギターソロプレイも天空を舞い、ギルモア的とは語られるもののそれ以上に独特のメロディが紡がれているのは国柄の違いか。冷静に聴いてもロジャー・ウォーターズ的ポリシーとスタンスにくるまれたバンドカラーの作品の中、ギターソロは違和感なくともジャジーな風味の漂うアクセントではない堂々としたサックスプレイはここまで似合うと読めなかった。あと一歩間違えると軽やかなイージーリスニング的フュージョンに近い程のテクニックもあるから、そのバランスのキープは狙っているにしても器用な一面。一方でリスナーとして単純に聴いている限りでは実に心地良い空間に放り込まれた感覚に陥り、数曲の間に自分一人の世界に確実に浸れる音の美しさに包まれる。

 Milleniumのキャリアでもここまでサックスをフューチャーした作品は初めてだし、プログレッシブ・ロックバンドと語られる世界でも恐らくは初に近い試みと思われる。いつものテクニカルな、複雑な楽曲の凝り具合に完全に雰囲気はピンク・フロイドとも言える世界は変わらずハイレベルで構築されている中、メロディ楽器を追加しての重厚感は素晴らしい。ついでに書けば、「Calling!」でも明らかなように女性コーラスチームの歌声が宗教的にすら響く使われ方で、ここは正にロジャー・ウォーターズの近年の世界観にも近いのでオリジナリティとはやや異なるが、使い方の上手さは70年代のピンク・フロイドにも教えてあげたかったくらいに見事な馴染み方。「My Father Always Said」のようなバラードチックなスタイルの作風で聴けるメロディは英国には出て来ないセンスで、ポーランドのバンドを聴くと毎回悩ましく不思議にその哀愁あるメランコリックさに心奪われるが、人間心理的な掴まれ方なのでどうしようもなく愛おしくなる旋律が美しい。

 既に長寿バンドになりつつあり、ポーランドのロック界でも重鎮扱いと聴くが近年も当たり前だが活動してて、相変わらず魅力的な作品をリリースしているのでまだ聴くべき作品は多いが、本作の異質感と革新性に耳を奪われて聴き込んでいた。始めのきっかけはサックスとプログレの融合の素晴らしさだが、聴いていけばそれはひとつの物語り、そして美しき世界へと誘われていつしかこの世界の住人になり、44 Minutesではなく52分間のアルバムをゆったりと優雅に味わせてもらえる素晴らしきアルバム。







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フレ
Posted byフレ

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