Richard Thompson - Henry The Human Fly (Remastered)
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Richard Thompson - Henry The Human Fly (Remastered) (1972)

国民的ギタリストの地位を獲得していいるリチャード・トンプソンは英国ではエリック・クラプトン以上の、と言うよりもやや異なる世界に於いてのギタリストで地位を築き上げていると聞く。自分も随分と古くからリチャード・トンプソンのギターを耳にしており、最初はギターの音なのにどうにも異なる音色の音使いが聴こえてきて、効果音に近いようなトラッド独特のフレーズと音色を奏でているだけな気がしていたが、聴いていると徐々に気になる音色ばかりが出て来て、ロック一辺倒だった自分でも別物のギタープレイとして意識するようになった。その前後にはトラッドフォークへの傾倒もあり、当然の如くフェアポート・コンヴェンションの素晴らしきアルバムを幾つも聴いてその音色に気づいた時期。リチャード・トンプソンはセッション活動にも余念がなく、バンドで絡んだ仲間のソロアルバム類には大抵参加しているし、クレジットにはなくても特徴的な音色のギターを聴けば関連性からリチャード・トンプソンのギターと分かる。フェアポート・コンヴェンションを離脱して自分を見つめ直した後にリリースした初のソロアルバム「Henry The Human Fly (Remastered)」ではこの頃にやってみたかった音世界を突き詰めてみたようで、随分と気合の入りながらもリラックスしたトラッドフォークとエレクトリックの合いの子的サウンドを生み出して作り上げている。
1972年にリリースされたセンスが少々悪そうなハエ男のタイトル「Henry The Human Fly」とジャケットが購買意欲を削ぐが、中身は地味に渋くてカッコ良い音が詰め込まれているので最低でも5回は聴かないと馴染まないだろう。普通にトラッドが染み付いている人ならともかく、ロック畑から進む輩にはそれくらいの慣れは必要。基本的にエレクトリック楽器はリチャード・トンプソンのギターと精々ベース程度しか鳴っておらず、残りはフィドル、トロンボーンやトランペットにダルシマーとピアノだからナチュラルな音色にも納得だろう。コーラスには後の奥様になるリンダ・ピーターズが有名だが、負けじとサンディ・デニーもアシュレー・ハッチングスも参加している。フェアポート・コンヴェンションからはジョン・カークパトリックがアコーディオンで参加しているのでこの辺りの人間関係の豊富さも見えてくる一枚。
冒頭の「Roll Over Vaughn Williams」からガツンとリチャード・トンプソンお得意の音色とフレーズでロックらしく始まるかと思いきや、そのままリチャード・トンプソン自らが弾くトラッド風味のアコーディオンが曲の雰囲気を引っ張っていく。但し途中のギターソロのヘヴィなフレージングは拍手喝采とばかりにお得意の音色とパターンでロックの世界でも筆頭格に祭り上げられる見事なプレイが聴ける。続いての「Nobody’s Wedding」はタイトル通りの寂しさが募る作風ながらもフィドルが曲調を次々に変えていくユニークな展開で、ソロプレイで明るくなり、その後元に戻りつつもまたフィドルの登場でテンポを変えてダンスサウンドに展開していく、この頃に気になった風味を混ぜ合わせた感触。更にリチャード・トンプソンの歯切れのよいアコギがソリッドでカッコ良いので聴き応えあるが、そのアコギをメインに据えての「Poor Ditching Boy」ではThe Albion Contry Bandからの紹介だろうスー・ドラハイムのフィドルをクローズアップしているが、こちらは曲調の静かな風味に合わせたメロディアスな音色でしっとりと聴かせ、終盤には大いに盛り上がっていくパターン。「Shakey Nancy」はフォークロック的にシンプルなスタイルで歌い上げているスタンダードな作品。そしてアコースティックロック的に開始される「The Angels Took My Racehorse Away」は冒頭のフィドルとの絡みも刺激的で歪んだギターも鳴らされ、コーラスチームが活躍するキャッチーなポップ的楽曲。ところがこういう曲でもギターソロをリチャード・トンプソンが弾くと全くこれまでに聴けなかったような音色とフレーズばかりで組み立てられるのでいきなり曲が引き締まる。ピアノで歌を聴かせる「Wheely Down」はA面最後を締めるかのような聖歌的作品。
B面はややウェットな雰囲気のアコギとエレキのイントロで始まる「The New St George」からで、ここでもお得意のエレキのトレモロを効かせたスタイルを筆頭に要所要所で際立ったプレイを聴かせて、更にトロンボーンやトランペットとフィドルを同時に重ね合わせて豪快に鳴り放ったイングランド風味たっぷりの爽快な作品。そして期待感溢れるサンディ・デニーがピアノを弾く「Painted Ladies」は一聴してサンディ・デニーのソロアルバムに入っているような曲と重なってくるが、曲は当然ながらリチャード・トンプソン作なので不思議な印象。途中からはリチャード・トンプソンのギター効果音が入ってくるのでそれらしくなるが、それでもピアノの鳴らし方がサンディ・デニー的なのか、ここまでピアノで個性が出せてくる彼女の存在感が素晴らしい。続いての「Cold Feet」ではその雰囲気を一掃するかのようにキャッチーなアコギロックスタイルで勢い良く歌い飛ばしてくれる。管楽器隊の不安定な音色から奏でられるフリーな歌もユニークな「Mary And Joseph」はソロアルバムでなければ出来ないだろう挑戦的なスタイルながらアクセント的にも面白い試みの歌もの。終盤になりアコギとピアノのスタンダードな哀しげな始まりの三拍子作品「The old changing way」はダルシマーの音色が美しく響き聴かせる一曲に仕上げている心地良い楽曲。英国トラッド作品系列のバンドのどこかに入っていたら究極の作品とでも呼ばれそうだ。アルバム最後を飾る「Twisted」もシンプルに優しく語りかけるようなスタイルで歌い始め、コーラス部隊も参加しての聞かせる作品。
ソロアルバムながら案外ギターをクローズアップもしないままに聴かせるアルバム作りに始終した感が強く、セッションで参加する時と同じようなスタンスで取り組んでいるようにも聴こえるが、楽曲の完成度の高さがさすがに絶頂期のリチャード・トンプソンを物語って強力な作品ばかり。以前より名盤扱いされていたが、そこまで聴き込めないままにしているのも勿体無いほんとに傑作アルバムです。2004年にリマスター盤がリリースされているが、ボーナス・トラックは付けられずシンプルなまま。ゲスト陣営の演奏力とサンディ・デニーの圧倒的な存在感が顕著なアルバム。

国民的ギタリストの地位を獲得していいるリチャード・トンプソンは英国ではエリック・クラプトン以上の、と言うよりもやや異なる世界に於いてのギタリストで地位を築き上げていると聞く。自分も随分と古くからリチャード・トンプソンのギターを耳にしており、最初はギターの音なのにどうにも異なる音色の音使いが聴こえてきて、効果音に近いようなトラッド独特のフレーズと音色を奏でているだけな気がしていたが、聴いていると徐々に気になる音色ばかりが出て来て、ロック一辺倒だった自分でも別物のギタープレイとして意識するようになった。その前後にはトラッドフォークへの傾倒もあり、当然の如くフェアポート・コンヴェンションの素晴らしきアルバムを幾つも聴いてその音色に気づいた時期。リチャード・トンプソンはセッション活動にも余念がなく、バンドで絡んだ仲間のソロアルバム類には大抵参加しているし、クレジットにはなくても特徴的な音色のギターを聴けば関連性からリチャード・トンプソンのギターと分かる。フェアポート・コンヴェンションを離脱して自分を見つめ直した後にリリースした初のソロアルバム「Henry The Human Fly (Remastered)」ではこの頃にやってみたかった音世界を突き詰めてみたようで、随分と気合の入りながらもリラックスしたトラッドフォークとエレクトリックの合いの子的サウンドを生み出して作り上げている。
1972年にリリースされたセンスが少々悪そうなハエ男のタイトル「Henry The Human Fly」とジャケットが購買意欲を削ぐが、中身は地味に渋くてカッコ良い音が詰め込まれているので最低でも5回は聴かないと馴染まないだろう。普通にトラッドが染み付いている人ならともかく、ロック畑から進む輩にはそれくらいの慣れは必要。基本的にエレクトリック楽器はリチャード・トンプソンのギターと精々ベース程度しか鳴っておらず、残りはフィドル、トロンボーンやトランペットにダルシマーとピアノだからナチュラルな音色にも納得だろう。コーラスには後の奥様になるリンダ・ピーターズが有名だが、負けじとサンディ・デニーもアシュレー・ハッチングスも参加している。フェアポート・コンヴェンションからはジョン・カークパトリックがアコーディオンで参加しているのでこの辺りの人間関係の豊富さも見えてくる一枚。
冒頭の「Roll Over Vaughn Williams」からガツンとリチャード・トンプソンお得意の音色とフレーズでロックらしく始まるかと思いきや、そのままリチャード・トンプソン自らが弾くトラッド風味のアコーディオンが曲の雰囲気を引っ張っていく。但し途中のギターソロのヘヴィなフレージングは拍手喝采とばかりにお得意の音色とパターンでロックの世界でも筆頭格に祭り上げられる見事なプレイが聴ける。続いての「Nobody’s Wedding」はタイトル通りの寂しさが募る作風ながらもフィドルが曲調を次々に変えていくユニークな展開で、ソロプレイで明るくなり、その後元に戻りつつもまたフィドルの登場でテンポを変えてダンスサウンドに展開していく、この頃に気になった風味を混ぜ合わせた感触。更にリチャード・トンプソンの歯切れのよいアコギがソリッドでカッコ良いので聴き応えあるが、そのアコギをメインに据えての「Poor Ditching Boy」ではThe Albion Contry Bandからの紹介だろうスー・ドラハイムのフィドルをクローズアップしているが、こちらは曲調の静かな風味に合わせたメロディアスな音色でしっとりと聴かせ、終盤には大いに盛り上がっていくパターン。「Shakey Nancy」はフォークロック的にシンプルなスタイルで歌い上げているスタンダードな作品。そしてアコースティックロック的に開始される「The Angels Took My Racehorse Away」は冒頭のフィドルとの絡みも刺激的で歪んだギターも鳴らされ、コーラスチームが活躍するキャッチーなポップ的楽曲。ところがこういう曲でもギターソロをリチャード・トンプソンが弾くと全くこれまでに聴けなかったような音色とフレーズばかりで組み立てられるのでいきなり曲が引き締まる。ピアノで歌を聴かせる「Wheely Down」はA面最後を締めるかのような聖歌的作品。
B面はややウェットな雰囲気のアコギとエレキのイントロで始まる「The New St George」からで、ここでもお得意のエレキのトレモロを効かせたスタイルを筆頭に要所要所で際立ったプレイを聴かせて、更にトロンボーンやトランペットとフィドルを同時に重ね合わせて豪快に鳴り放ったイングランド風味たっぷりの爽快な作品。そして期待感溢れるサンディ・デニーがピアノを弾く「Painted Ladies」は一聴してサンディ・デニーのソロアルバムに入っているような曲と重なってくるが、曲は当然ながらリチャード・トンプソン作なので不思議な印象。途中からはリチャード・トンプソンのギター効果音が入ってくるのでそれらしくなるが、それでもピアノの鳴らし方がサンディ・デニー的なのか、ここまでピアノで個性が出せてくる彼女の存在感が素晴らしい。続いての「Cold Feet」ではその雰囲気を一掃するかのようにキャッチーなアコギロックスタイルで勢い良く歌い飛ばしてくれる。管楽器隊の不安定な音色から奏でられるフリーな歌もユニークな「Mary And Joseph」はソロアルバムでなければ出来ないだろう挑戦的なスタイルながらアクセント的にも面白い試みの歌もの。終盤になりアコギとピアノのスタンダードな哀しげな始まりの三拍子作品「The old changing way」はダルシマーの音色が美しく響き聴かせる一曲に仕上げている心地良い楽曲。英国トラッド作品系列のバンドのどこかに入っていたら究極の作品とでも呼ばれそうだ。アルバム最後を飾る「Twisted」もシンプルに優しく語りかけるようなスタイルで歌い始め、コーラス部隊も参加しての聞かせる作品。
ソロアルバムながら案外ギターをクローズアップもしないままに聴かせるアルバム作りに始終した感が強く、セッションで参加する時と同じようなスタンスで取り組んでいるようにも聴こえるが、楽曲の完成度の高さがさすがに絶頂期のリチャード・トンプソンを物語って強力な作品ばかり。以前より名盤扱いされていたが、そこまで聴き込めないままにしているのも勿体無いほんとに傑作アルバムです。2004年にリマスター盤がリリースされているが、ボーナス・トラックは付けられずシンプルなまま。ゲスト陣営の演奏力とサンディ・デニーの圧倒的な存在感が顕著なアルバム。
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