Pink Fairies - Kings of Oblivion +4
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Pink Fairies - Kings of Oblivion +4 (1973)

1973年英国のノッティングヒルゲイトのヒッピー集団Pink Fariesがシーンに放り込んだ問題作「Kings of Oblivion」。アルバムジャケットのグラサンした3匹の豚が青空を舞うイメージが中身の音を全く想像させなくしているが、その分聴いた時のインパクトは絶大で、何の偏見もなく耳にするべき作品。これまでPink Fairiesはアルバムを2枚リリースしているが、最初はTwinkが目立ったものの離脱し、セカンドアルバムはトリオ編成になったもののまだサイケデリック風味に囚われたバンドの方向性もあり、やや中途半端な印象の作品でしかなかった。ところが3枚目の本作ではギタリストが代わり、この後モーターヘッドに入るラリー・ウォーリスがバンドに参加し、更に曲作りも積極的に行っての活動だからガラリとバンドの音が変わってしまった。この変貌が吉と出たか、強烈な印象を放つ問題作として語られ、またモーターヘッドもあったからその前身のアプローチバンドとも意識された。
アルバムは「City Kids」の粗暴で疾走感溢れるスリリングなヘヴィサウンドから始まり、この一曲だけでPink Fairiesのイメージがガラリと変わった。この曲をレミーが歌ったと想像してみると正しくピタリと当てはまるので、ラリー・ウォーリスのスタイルがありありと見えてくる。実はモーターヘッドのあのスタイルの源流はこの曲にあると考えても良い作品。これまでのサイケデリックやブルース調のスタイルはすでに過去の遺物とばかりに疾走するスタイルとギターソロも現代風味のまま飛び出してくる超絶カッコ良い曲。ボーカルスタイルもかなり粗雑な印象を持たせて歌っているので、確実にモーターヘッドのイメージがあったと思える。続いての「I Wish I Was A Girl」の歯切れの良いギターサウンドもソリッドでこの時代にはあまり聴けないカッコ良さがあるが、怒涛の如く飛び出してくるスネアの連打とギターソロが、もはや普通のロックバンドの域を超えた何かを漂わせる風味で益々惹き込まれる。しかもこの曲はどこまで狙ったか、ビートに溢れながらも9分半もある強烈なスタンス。ダンカン・サンダーソンのベースプレイが単純な音ではなく、その意味ではプログレッシブにベースラインを駆け巡っているから曲の立体感が半端なく広がり、さらなる可能性を楽しませる。さすがに6分半ほど曲が進んだ所で妙なサイケ風味のアレンジを導入して単調にもなりがちな曲の展開を見せている。それがこの方向性とはやや苦笑いしてしまうが、ラリー・ウォーリスもサイケはお得意とばかりに弾いているのはさすが。「 When's The Fun Begin?」は始めの2曲の疾走感とはまた別のベクトルに向いたダークで地平線を舐め回すかのような暗黒ムードが漂うプレイで、ギターが空間を舞うサウンドが斬新。そこにサイケ風味とアンダーグラウンド色を眩したようなトリップ間違いなしの展開が素晴らしい。この頃のノッティングヒルゲイトのバンド特有の浮遊感覚にも思えるフワフワ感。
B面冒頭も「Chromium Plating」のガツンとしたパンチあるサウンドが叩きつけられ、この時代においてハードロックともガレージロックとも言えないヘヴィサウンドはヘヴィメタルとも異なる独特の重みを誇る。後のパンクバンドがPink Fairiesを参考にしたとは思えないが、スピリッツ面は明らかにパンクと同じベクトルにあり、サウンドもそこに向けば先んじて進んでいただろうパワフルさ。一方ではプロの音楽集団だったから単調にならず、確実にリスナーを飽きさせない仕掛けを多数詰め込んでいるから楽曲の幅が広くて深い。プログレとも言われる展開の多さはガレージサイケだけでは済まされない確かなミュージシャンバンドの証。その一方で「Raceway」のようなハードでワイルドなロック以上にパンクなロックスタイルが登場するのも迫力あって素晴らしい。明らかに構築美よりもパンクエッセンスのR&Rバンド、やはりモーターヘッドの前身的サウンドとして聴ける貴重な楽曲で何とボーカルなしのインストで4分間引っ張り回してくれる傑作。今度はドラムもドタバタとタム回しが印象的で疾走している「Chambermaid」は歌メロがややキャッチーに組み立てられた曲で、シングルリリースするならこの曲だと言わんばかりのPink Fairiesを表すに相応しい一曲。オリジナルアルバム最後の「Street Urchin」は随分とシンプルにストーンズライクとでも言わんばかりのツインギターが絡み合うパターンから始まるやや落ち着きを見せた作品で、意外な一面を聴かせてくれるが、この時代を考えると随分と最先端のロックを幾つもプレイしていたバンドとも言える。普通に進まないリズムと引っ掛かる感触は明らかにベースラインの異質プレイが妙なバランス。見事に7分強をこのままの勢いと熱気溢れるバンドのプレイで疾走して終わりを迎える。
2002年にリマスタリング+4曲入りとして再発され、過去作品とは明らかにクリアになった音像が素晴らしい。唯でさえワイルドな音色で疾走感が心地良かったのが、リマスターによって更に強力に仕上がっている。ボーナス・トラックはシングル曲からロカビリーとパンクをかけ合わせてPink Fairies風味を眩した「Well Well Well」で、ギター弾きまくりのプレイがやり過ぎてて気持ち良い。ここまでギターソロをずっと弾いていながらのシングル曲もそうは見当たらない。同じくシングルB面の「Hold On」はアプローチはパンキッシュながらやや新しい展開や作風に挑戦したようなぎごちなさも感じるロック。この辺りの曲は同じように英国アンダーグラウンドシーンの雄だったJunior's Eyeのミック・ウェインが曲を作っているのもノッティングヒルゲイトのファミリー感覚。続いての「City Kids」はアルバム冒頭とは異なるミックスでもっと平坦にバランスを均したような音色となっているが、オリジナルバージョンの方がワイルド感溢れて好みだ。最後は「Well Well Well」の別バージョンでもっとスタンダードなシャッフルリズムで演奏されているのであと一歩足りない雰囲気があり、こちらもシングルバージョンの方が明らかに出来が良い。
プログレやサイケバンドの印象を持たず、どちらかと言えばモーターヘッドをイメージして取り組む方がすんなりとアルバムに馴染めるし、Pink Fairiesの過去作も聴きやすいだろう。近年のバンドが今の機材でこの手の曲をプレイしたらかなり迫力ある個性的なアレンジに仕上がると思うが、そんなバンドもあると思いたい。しかし1973年でこの音はかなり革新的だが、早すぎたサウンドだったか、このアルバムでバンドは解体する。惜しい。

1973年英国のノッティングヒルゲイトのヒッピー集団Pink Fariesがシーンに放り込んだ問題作「Kings of Oblivion」。アルバムジャケットのグラサンした3匹の豚が青空を舞うイメージが中身の音を全く想像させなくしているが、その分聴いた時のインパクトは絶大で、何の偏見もなく耳にするべき作品。これまでPink Fairiesはアルバムを2枚リリースしているが、最初はTwinkが目立ったものの離脱し、セカンドアルバムはトリオ編成になったもののまだサイケデリック風味に囚われたバンドの方向性もあり、やや中途半端な印象の作品でしかなかった。ところが3枚目の本作ではギタリストが代わり、この後モーターヘッドに入るラリー・ウォーリスがバンドに参加し、更に曲作りも積極的に行っての活動だからガラリとバンドの音が変わってしまった。この変貌が吉と出たか、強烈な印象を放つ問題作として語られ、またモーターヘッドもあったからその前身のアプローチバンドとも意識された。
アルバムは「City Kids」の粗暴で疾走感溢れるスリリングなヘヴィサウンドから始まり、この一曲だけでPink Fairiesのイメージがガラリと変わった。この曲をレミーが歌ったと想像してみると正しくピタリと当てはまるので、ラリー・ウォーリスのスタイルがありありと見えてくる。実はモーターヘッドのあのスタイルの源流はこの曲にあると考えても良い作品。これまでのサイケデリックやブルース調のスタイルはすでに過去の遺物とばかりに疾走するスタイルとギターソロも現代風味のまま飛び出してくる超絶カッコ良い曲。ボーカルスタイルもかなり粗雑な印象を持たせて歌っているので、確実にモーターヘッドのイメージがあったと思える。続いての「I Wish I Was A Girl」の歯切れの良いギターサウンドもソリッドでこの時代にはあまり聴けないカッコ良さがあるが、怒涛の如く飛び出してくるスネアの連打とギターソロが、もはや普通のロックバンドの域を超えた何かを漂わせる風味で益々惹き込まれる。しかもこの曲はどこまで狙ったか、ビートに溢れながらも9分半もある強烈なスタンス。ダンカン・サンダーソンのベースプレイが単純な音ではなく、その意味ではプログレッシブにベースラインを駆け巡っているから曲の立体感が半端なく広がり、さらなる可能性を楽しませる。さすがに6分半ほど曲が進んだ所で妙なサイケ風味のアレンジを導入して単調にもなりがちな曲の展開を見せている。それがこの方向性とはやや苦笑いしてしまうが、ラリー・ウォーリスもサイケはお得意とばかりに弾いているのはさすが。「 When's The Fun Begin?」は始めの2曲の疾走感とはまた別のベクトルに向いたダークで地平線を舐め回すかのような暗黒ムードが漂うプレイで、ギターが空間を舞うサウンドが斬新。そこにサイケ風味とアンダーグラウンド色を眩したようなトリップ間違いなしの展開が素晴らしい。この頃のノッティングヒルゲイトのバンド特有の浮遊感覚にも思えるフワフワ感。
B面冒頭も「Chromium Plating」のガツンとしたパンチあるサウンドが叩きつけられ、この時代においてハードロックともガレージロックとも言えないヘヴィサウンドはヘヴィメタルとも異なる独特の重みを誇る。後のパンクバンドがPink Fairiesを参考にしたとは思えないが、スピリッツ面は明らかにパンクと同じベクトルにあり、サウンドもそこに向けば先んじて進んでいただろうパワフルさ。一方ではプロの音楽集団だったから単調にならず、確実にリスナーを飽きさせない仕掛けを多数詰め込んでいるから楽曲の幅が広くて深い。プログレとも言われる展開の多さはガレージサイケだけでは済まされない確かなミュージシャンバンドの証。その一方で「Raceway」のようなハードでワイルドなロック以上にパンクなロックスタイルが登場するのも迫力あって素晴らしい。明らかに構築美よりもパンクエッセンスのR&Rバンド、やはりモーターヘッドの前身的サウンドとして聴ける貴重な楽曲で何とボーカルなしのインストで4分間引っ張り回してくれる傑作。今度はドラムもドタバタとタム回しが印象的で疾走している「Chambermaid」は歌メロがややキャッチーに組み立てられた曲で、シングルリリースするならこの曲だと言わんばかりのPink Fairiesを表すに相応しい一曲。オリジナルアルバム最後の「Street Urchin」は随分とシンプルにストーンズライクとでも言わんばかりのツインギターが絡み合うパターンから始まるやや落ち着きを見せた作品で、意外な一面を聴かせてくれるが、この時代を考えると随分と最先端のロックを幾つもプレイしていたバンドとも言える。普通に進まないリズムと引っ掛かる感触は明らかにベースラインの異質プレイが妙なバランス。見事に7分強をこのままの勢いと熱気溢れるバンドのプレイで疾走して終わりを迎える。
2002年にリマスタリング+4曲入りとして再発され、過去作品とは明らかにクリアになった音像が素晴らしい。唯でさえワイルドな音色で疾走感が心地良かったのが、リマスターによって更に強力に仕上がっている。ボーナス・トラックはシングル曲からロカビリーとパンクをかけ合わせてPink Fairies風味を眩した「Well Well Well」で、ギター弾きまくりのプレイがやり過ぎてて気持ち良い。ここまでギターソロをずっと弾いていながらのシングル曲もそうは見当たらない。同じくシングルB面の「Hold On」はアプローチはパンキッシュながらやや新しい展開や作風に挑戦したようなぎごちなさも感じるロック。この辺りの曲は同じように英国アンダーグラウンドシーンの雄だったJunior's Eyeのミック・ウェインが曲を作っているのもノッティングヒルゲイトのファミリー感覚。続いての「City Kids」はアルバム冒頭とは異なるミックスでもっと平坦にバランスを均したような音色となっているが、オリジナルバージョンの方がワイルド感溢れて好みだ。最後は「Well Well Well」の別バージョンでもっとスタンダードなシャッフルリズムで演奏されているのであと一歩足りない雰囲気があり、こちらもシングルバージョンの方が明らかに出来が良い。
プログレやサイケバンドの印象を持たず、どちらかと言えばモーターヘッドをイメージして取り組む方がすんなりとアルバムに馴染めるし、Pink Fairiesの過去作も聴きやすいだろう。近年のバンドが今の機材でこの手の曲をプレイしたらかなり迫力ある個性的なアレンジに仕上がると思うが、そんなバンドもあると思いたい。しかし1973年でこの音はかなり革新的だが、早すぎたサウンドだったか、このアルバムでバンドは解体する。惜しい。
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