Uriah Heep - The Magician's Birthday (2017 Expanded Version)

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Uriah Heep - The Magician's Birthday (2017 Expanded Version) (1972)
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 Uriah Heepは凄い。Led ZeppelinとBlack Sabbathと同列に語られるべきバンドだし、それ以上にひとつの世界を作り上げて今でもそのフォロワーを生み出さないままに孤高の音世界に君臨し続けている。誰が聴いてもUriah Heepらしい音世界が確立されすぎたためにパーツでしか盗まれず、音楽性が広められるまでには至らなかった。唯一自分が知っているUriah Heep的バンドは日本のカルメン・マキ&OZかもしれないが、ボーカルスタイルはまるで異なるのでUriah Hepp的バンドとしては見られないだろうし、King Crimsonも入っているので分かりにくいかもしれない。フォロワーありきオリジネイターの人気のバロメーターでもないので、孤高の存在である方が尖ってて唯一無二の世界を確立している証明。

 Uriah Heepの1972年リリース5枚目のアルバム「The Magician's Birthday」は前作「Demons & Wizards」からの続編とでも言うべきアルバムの作りになっており、カラーは異なれど、全盛期のUriah Heepの傑作に名を連ねる一枚。ケン・ヘンズレー曰くは制作時間が足りずに中途半端なままリリースせざるを得なかった曲もあるのが残念らしいが、何度か聴いていればこのヘンの曲かと推測されるものの、アルバム全体で聴けばまるで未完成品などと分かる作品も見当たらず、これくらいが丁度良い練り具合だったとは歴史が証明している。アルバムは1972年にリリースされ、CD時代になり1996年には早速リマスタリングされてボーナストラックにDavid Byronが1975年に自身のソロアルバム「TAKE NO PRISONERS: EXPANDED EDITION」で発表するまでお蔵入りしていたUriah Heepでの演奏バージョンによる「Silver White Man」のインストバージョンとゲイリー・セインが単独で作り上げた「Crystall Ball」が加えられていた。

 その後2003年に再度リマスタリングが施され、Expanded Deluxe Editionとして今度は9曲のボーナストラックが収められたが、それでもCD1枚に収まるサイズに留まっていた。先の「Crystall Ball」はまた別のアウトテイクバージョンらしくやや異なる収録で、また不思議な存在。そして今度の「Silver White Man」はデヴィッド・バイロンのボーカルも入っているUriah Heepバージョンの曲で、本来の楽曲のあるべき姿はこちらだと思われるスタイル。また、ケン・ヘンズレーが1973年に発表した自身のソロアルバムのタイトルともなった「Proud Words」もUriah Heepバージョンが幾つか録音されて実験されていたようで、また新たなバージョンがここでも収録されている。結局Uriah Heepのアルバムでは発表されなかったので、ケン・ヘンズレーはソロ作で発表の段取りになった模様。そこまでUriah Heepの音楽性やバンドのスタイル、イメージは厳格に策定されていたと想像される。以降はシングルバージョンのために編集されたバージョンが続くようで、名曲「Echoes In The Dark」までもがあちこちカットされているのは随分大胆で勿体無いとも思うが、時代の流れを考えれば納得感はある。普通に静かな曲でしかない「Rain」も同様の短縮バージョンになるともっとこじんまりしてしまう雰囲気もある。逆に大胆過ぎてクローズアップされた短縮バージョンの「Happy Birthday」は分かりやすくなり、元曲の「The Magician's Birthday」の仰々しい迫力を感じる前に切られている。ある意味爽快で割り切りすぎているので受ける面も大きいが、あまりにも大胆過ぎる楽しさ。リー・カースレイクとミック・ボックスのあの凄まじいインタープレイが全く聴けない編集バージョンをバンドが良しとしたかは不明。更に大胆な編集バージョンとなった「Sunrise」は逆にUriah Heepらしさをここまで詰め込んだと思われる程の楽曲で中身が濃すぎる。そしてアウトテイクす作品へと続き、今度は「Gary's Song」と題されているものの楽曲は「Crystall Ball」の別バージョンなので何と3バージョン目が登場。それぞれデヴィッド・バイロンの歌い方が異なるのも歌いやすい曲だからか。最後の「Silver White Man」は前回のボーナストラックバージョンに収録されていたインストバージョンと同一作。

 更に2017年にリマスタリングされ、またしても強烈なボーナストラックを加えての2CDバージョンが登場している。この時のUriah Heepリマスターシリーズではオリジナル作品とは異なるアルバム曲構成を目論んだ作りがユニークな試みで、本作も別バージョンによる新たな曲構成のアルバムが組み立てられている。冒頭は「Echoes In The Dark」の3分強までに短縮したバージョンで開始し、2曲目はやや長尺に伸ばされた「Sweet Lorraine」と更に大胆に長く引き伸ばされたアコギの美しい「Blind Eye」と「Tales」が続き、まるで異なるアルバムの印象はかなり惹き込まれる風味を持つ。また「Silver White Man」は前回お目見えしたUriah Heep演奏のボーカル入りバージョンの更にエンディングまで引き伸ばされたデヴィッド・バイロンが歌い遊んでいる姿まで収録した長尺バージョン。そしてここで「Sunrise」がやや長めに引き伸ばされて登場し、アルバム中間を引き締めている。続いては最初のボーナスディスクに収録されたバージョンの「Crystal Ball」に続き「Spider Woman 」と、ここまでで一通りのアルバムのムードが変わって聴かれるが、輪を掛けてやや長尺に展開される「The Magician's Birthday」で攻め立てられてからの「Rain」の美しさは引き伸ばされている面もあるが、ひとつの物語を終えた感が募る曲順。そして2020年にはサブスクオンリーのExpanded Versionとして、ここまで挙げたボーナストラック曲全てを追加した全28曲入りのアルバムがリリースされているのも驚く。

 オリジナルアルバムの楽曲を散々聴いてひたすらにハマり、その美しさと荘厳なムードと大胆な悪魔主義的雰囲気を味わった挙げ句、別バージョンによる曲順変更アルバムを楽しみ、そのバージョン違いと雰囲気の違いを感じる。更に幾つかの楽曲のストーリーをマニア的に噛み締めながら、最後にまたオリジナルアルバムを聴く素晴らしさ。人それぞれ想い入れはあろうが、何と言っても「Echoes In The Dark」の美しさと「The Magician's Birthday」の絶頂期の姿が素晴らしすぎる名盤。







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フレ
Posted byフレ

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