Slade - Nobody's Fool (2007 Remastered)

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Slade - Nobody's Fool (2007 Remastered) (1976)
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 英国だけでシングルでチャートを賑わせていたバンドの姿は、当時も今も日本に伝わっているようにも思えないが、少なくとも当時はアイドル的に追い掛けられていれば浮き沈みは見えただろうか。後追いのツライのがそう言った場合のシーンの絡みが掴めない点。チャートを全て漁れば見えるかもしれないが、とてもそこまでは出来ないのでどうしても他の評論やレビューを元に自分で組み立てて想像するしかない。その意味でヒットチャートに曲を送り込んだバンドは追いかけるのが苦手だ。SweetやSlade、Suze Quatroはアメリカ人ながらも英国のチャートを賑わせた女性ロッカーで、同時代ではグラムロックの括りに入っていたし、他ではGary GlitterやBe Bop Deluxeも然りとこれまでとは異なった追い掛け方をしないと正しい姿が見えてこない。

 Sladeの1976年リリース作「Nobody's Fool」を聴いていると、アルバム冒頭からパワフルで快活、且つポップなサウンドのアルバムタイトル曲「Nobody's Fools」がガツンと叩きつけられ、とても低迷期とは思えない勢いに溢れた演奏と雰囲気なので、自分が知っている情報や知識が間違っているように思い、再度調べ直していたところ。すると自分の知識とはやや時代がズレており、1975年にアメリカ進出を狙って活動したが、それは成功とは程遠くなり、その時にレコーディングを行っていたアルバムが本作「Nobody's Fool」で、英国ではこの時点でもまだかろうじてヒットチャートにシングルを送り込めるバンドの勢いのままだった。それでも本作を最後にシーンから消えていったが、その直前のアルバムで冒頭曲は先程の通り、紛れもなくスレイドらしいパワーポップ全開の快作で、他の曲を聴いていくと、実はかなりバリエーション豊かな作風が並んだ意欲作だ。「Do The Dirty」はBoogieの掛け声から始まるダサさ全開のブギサウンドで英国ではウケただろう快活な曲。一転してスレイドのお得意のポップメロディをクローズアップした「Let's Call It Quits」はロック面をやや薄めた風味ながら相変わらずノエル・ボルダーの個性的な歌とギタープレイが炸裂したミドルテンポなこちらもシャッフルなサウンド。更に推し進めたアレンジ作の「Pack Up Your Troubles」ではカントリー風味に仕立てた新境地。こういったスレイドらしからぬサウンドでも何の違和感もなくスライド・ギターとアコギを混ぜてのプレイが出来てしまうのは曲のユニークさに加えてさすがの素晴らしさ。そしてヒットシングル曲となったメロディアスなバラード風作「In For A Penny」はビートルズ的サウンドとコーラスが受けたようで、これだけダサいバンドが堂々とここまでクサいメロディを奏でてのプレイがインパクト絶大。続いての「Get On Up」は往年のスレイドらしいグラムロック的R&Rサウンドで迫り来るハチャメチャサウンドの面白さで、全く低迷期には思えない優れた楽曲。売れなかったのは単にグラムロックの時代が終わっていたからだろう。ここまでの個性がありながらシーンに残れなかったのは逆にシングルで売れすぎた過去があったらか。

 「L.A. Jinx」もカッコ良いロックサウンドでギタリスト、ベーシスト的プレイを炸裂させながら伸びやかに歌い上げている軽快で疾走感溢れるスタイル。これまでのスレイドにはあまり聴かれないコード進行とリズムと曲の質感もあり、中間部のコーラスラインも含めてレベルの高い一曲。新たなる世界への扉はまだまだ続けられ、「Did Your Mama Ever Tell Ya」では更に裏打ちサウンドとHumble Pieのブラックベリーズ並みのコーラスワークを持ち込んだスタイルで、能天気さはスレイドの売りながらアルバムのアクセントには最適な展開。そしてスレイド節全開の大らかなシャッフルサウンドによる「Scratch My Back」は単純なコード進行ながら、ここでもコーラスグループを交えてお祭り的スタイルで聴かせてくれるR&Rが見事で、予想通りの展開とギターソロも当たり前ながら安心するクォリティを楽しめる。こういった曲でのスレイドらしさ=ノエル・ボルダーの歌声の個性は紛れもなく逸品の性質。ヘヴィに聴かせた後はまた意外な作風「I'm A Talker」でラテンノリの軽やかなサウンドを打ち出しており、新たなスタイルの模索かアクセントの広げ方かと考えようはあるが、単に世の中にありがちなスタイルをスレイドがプレイするとこうなる的な魅せ方にも聴こえる。その意味では間違いなくスレイドらしさ全開のラテンの不思議。最後の「All The World Is A Stage」はそれまでのスレイド節を全て引っ括めて明るさを奥に引っ込めてプレイした、スリリングさを孕んだロックスタイルで次なる方向性への可能性を示唆した曲にも思えるが、最後の混沌としたアレンジと笑い声が今となっては侘しく聴こえるのも悲しい。

 2007年にリマスタリングされ、ボーナストラックには1975年のシングル曲「Thanks for the Memory」とそのB面「Raining In My Champagne」に加えて本作のシングル曲「In For a Penny」と「Let's Call It Quits」のB面「Can You Just Imagine」「When the Chips are Down」が追加されている。どちらかと言えばボーナストラックではなくリマスタリングによる音圧アップと時代に囚われないアルバムを改めて聴いて質の高さを再認識する一枚とも思える。本作からの失速が残念な程の見事なアルバムの出来映えながら、言えるとしたら新たな音楽性の欠落だったか。





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フレ
Posted byフレ

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